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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
ダーツの軌跡/2
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ハーフムーンの月明かりがシャワーのように落ちる夜景に、真紅のカーテンは称賛を与えるようにまだ役目がこず、タッセルの抱擁を受け続けていた。
鏡ような窓ガラスに映るのは、壁にあるガス灯を勢ぞろいさせた、他の部屋よりも濃い光が広る空間。
奥の一部分には丸みを帯びた四角いカウンターテーブル。様々な色の酒瓶が置かれたバースペースの手前には、少し背の高い丸椅子ふたつが大人の遊びを演出していた。
その向かいにある木目の美しさが生かされた壁を伝ってゆくと、ダーツの的がひとつ娯楽の笑顔を見せていた。
館の主人の命令で人払いされた部屋。召使も使用人も誰もいない、男ふたりだけの時間。
黒皮の深い座り心地の三人がけのソファーに、主人と執事はそれぞれの好きな酒を手にし、きちんと距離を取って座っていた。
服装もお互いの個性が引き出されていて、崇剛は貴族服。涼介はカジュアル。タイプの違う男ふたり。
ロングカクテルグラスにそれぞれの角度で佇むのは、涼介が手早く作ったチーズスティックパイ。香ばしい匂いを漂わせている。
その隣にはおつまみという花畑があった。チーズに生ハム。それぞれを引き立たせるグリーンのバジルが、ガス灯という陽光を浴びていた。
涼介はビールからスコッチへ飲む酒を変えた。ランプのような形をしたグラスの底が琥珀色の湖に染まる。
軽く華やかなバルブレアをストレートのまま口に含むと、四十六度のアルコールがのどへヒリヒリ刺激を与える。
器官を通り抜け胃に灼熱をうならせ、時間差で酔いという麻痺を体中に心地よい波間を漂うような感覚で連れてくる。
策略家と言っても過言ではない崇剛は、冷静な水色の瞳を窓の外へ向けた。夜色と混じり合わせながら、サングリアを優雅に飲み、デジタルな頭脳で具体的な罠に取りかかり始めた。
先ほどの瑠璃さんとラジュ天使の話――壁ドン。
涼介は私よりも背丈が、八センチ高いです。
通常のまま立っている状態でやっても、効果がないという可能性が67.78%――
こちらの可能性を低くしましょう。
そうですね……こうしましょうか?
自身の思う通りに行くとは限らない。策士にとっては、いつどこで可能性の数値がひっくり返るかわからない。つまり、どの可能性が事実になってもいいように、全ての対処方法を考えておくのだ。
涼介の今までのデータを脳裏の浅い部分へ引き上げ、崇剛は柑橘系の香りを放つサングリアを飲みながら、冷静な水色をした瞳の端で標的である執事をしっかり捉えた。
(涼介には質問をさせましょう。今の状況で、彼に質問をさせるために必要なもの……)
執事から情報を引き出したいのなら、主人が質問をすればいい。それがセオリーだ。しかし、崇剛は真逆の方法を選んだ。矛盾しているように見えるが、冷静な頭脳の持ち主は全て計算し尽くしたからこそだった。
ソファーの肘掛には今は一休みというように、崇剛の瑠璃色の上着がかけられていた。彼の腰元には聖なるダガーのシルバーの柄がはっきりと顔をのぞかせている。
(しかしながら、ただ情報を手に入れるだけではつまりませんからね。ですから、涼介を困らせながら情報を引き出しましょうか)
遊びが過ぎる策略的な主人は優雅に足を組み替え、部屋に入ってきた一瞬で把握してしまったものを思い返す。
ダーツの矢。
サングリア。
グラス。
ナプキン。
バルブレア。
チーズスティックパイ。
チーズと生ハム。
ナイフとフォーク。
ソファー。
テーブル。
丸椅子。
ローチェスト。
ワイングラスに触れる感触を唇に残しながら、
(これらを使ってできること……?)
今までの膨大なデータから成功する可能性の高いものを導き出して、今ある条件から必要なものを決め、崇剛の冷静な水色の瞳はついっと細められた。
そちらを使いましょうか。
涼介は私よりもダーツの腕は上です。
ですから、あちらを使って、私が涼介に勝ちます。
そのようにすれば、彼はダーツの勝敗を不審に思い、私にそちらについての質問をしてくるという可能性が上がります。
すなわち、策通り、涼介が私に質問をしてくるというわけです。
質問をしてくる内容は、何でも構わないのです。
なぜなら、そちらを交換条件にして、私が質問をする側へと立つのですから。
従って、私が涼介から情報を引き出します。
鏡ような窓ガラスに映るのは、壁にあるガス灯を勢ぞろいさせた、他の部屋よりも濃い光が広る空間。
奥の一部分には丸みを帯びた四角いカウンターテーブル。様々な色の酒瓶が置かれたバースペースの手前には、少し背の高い丸椅子ふたつが大人の遊びを演出していた。
その向かいにある木目の美しさが生かされた壁を伝ってゆくと、ダーツの的がひとつ娯楽の笑顔を見せていた。
館の主人の命令で人払いされた部屋。召使も使用人も誰もいない、男ふたりだけの時間。
黒皮の深い座り心地の三人がけのソファーに、主人と執事はそれぞれの好きな酒を手にし、きちんと距離を取って座っていた。
服装もお互いの個性が引き出されていて、崇剛は貴族服。涼介はカジュアル。タイプの違う男ふたり。
ロングカクテルグラスにそれぞれの角度で佇むのは、涼介が手早く作ったチーズスティックパイ。香ばしい匂いを漂わせている。
その隣にはおつまみという花畑があった。チーズに生ハム。それぞれを引き立たせるグリーンのバジルが、ガス灯という陽光を浴びていた。
涼介はビールからスコッチへ飲む酒を変えた。ランプのような形をしたグラスの底が琥珀色の湖に染まる。
軽く華やかなバルブレアをストレートのまま口に含むと、四十六度のアルコールがのどへヒリヒリ刺激を与える。
器官を通り抜け胃に灼熱をうならせ、時間差で酔いという麻痺を体中に心地よい波間を漂うような感覚で連れてくる。
策略家と言っても過言ではない崇剛は、冷静な水色の瞳を窓の外へ向けた。夜色と混じり合わせながら、サングリアを優雅に飲み、デジタルな頭脳で具体的な罠に取りかかり始めた。
先ほどの瑠璃さんとラジュ天使の話――壁ドン。
涼介は私よりも背丈が、八センチ高いです。
通常のまま立っている状態でやっても、効果がないという可能性が67.78%――
こちらの可能性を低くしましょう。
そうですね……こうしましょうか?
自身の思う通りに行くとは限らない。策士にとっては、いつどこで可能性の数値がひっくり返るかわからない。つまり、どの可能性が事実になってもいいように、全ての対処方法を考えておくのだ。
涼介の今までのデータを脳裏の浅い部分へ引き上げ、崇剛は柑橘系の香りを放つサングリアを飲みながら、冷静な水色をした瞳の端で標的である執事をしっかり捉えた。
(涼介には質問をさせましょう。今の状況で、彼に質問をさせるために必要なもの……)
執事から情報を引き出したいのなら、主人が質問をすればいい。それがセオリーだ。しかし、崇剛は真逆の方法を選んだ。矛盾しているように見えるが、冷静な頭脳の持ち主は全て計算し尽くしたからこそだった。
ソファーの肘掛には今は一休みというように、崇剛の瑠璃色の上着がかけられていた。彼の腰元には聖なるダガーのシルバーの柄がはっきりと顔をのぞかせている。
(しかしながら、ただ情報を手に入れるだけではつまりませんからね。ですから、涼介を困らせながら情報を引き出しましょうか)
遊びが過ぎる策略的な主人は優雅に足を組み替え、部屋に入ってきた一瞬で把握してしまったものを思い返す。
ダーツの矢。
サングリア。
グラス。
ナプキン。
バルブレア。
チーズスティックパイ。
チーズと生ハム。
ナイフとフォーク。
ソファー。
テーブル。
丸椅子。
ローチェスト。
ワイングラスに触れる感触を唇に残しながら、
(これらを使ってできること……?)
今までの膨大なデータから成功する可能性の高いものを導き出して、今ある条件から必要なものを決め、崇剛の冷静な水色の瞳はついっと細められた。
そちらを使いましょうか。
涼介は私よりもダーツの腕は上です。
ですから、あちらを使って、私が涼介に勝ちます。
そのようにすれば、彼はダーツの勝敗を不審に思い、私にそちらについての質問をしてくるという可能性が上がります。
すなわち、策通り、涼介が私に質問をしてくるというわけです。
質問をしてくる内容は、何でも構わないのです。
なぜなら、そちらを交換条件にして、私が質問をする側へと立つのですから。
従って、私が涼介から情報を引き出します。
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