明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

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心霊探偵はエレガントに〜karma〜

ダーツの軌跡/3

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 サングリアの入ったグラスをまた傾けた崇剛を、涼介は酔い色のベビーブルーの瞳でちらっとうかがった。

(変だな……?)

 主人がどんな罠を張りめぐらしてきているのかわからず、素直な執事は違和感を持った。カラになったグラスに、サングリアを注ぎ終えた崇剛が優雅な声で沈黙を破る。

「私からで、よろしいですか?」
「あぁ……」

 心優しい涼介は、よく倒れる主人のグラスを心配げに見つめながら、少し戸惑い気味にうなずいた。

 崇剛はエレガントにソファーから立ち上がり、ロングブーツのかかとを鳴らしながら、ダーツの矢を投げる位置――スローラインまで優雅に歩いてゆく。

 紺の長い髪の中にある頭脳には、ゲームのルールがしっかりと浮かび上がっていた。

 フォーティーワンのルールは、以下の順番と場所へ矢を当てる。
 一ランドは二十。
 二ラウンドは十九。
 三ラウンドはダブル……十ラウンドまであります。
 勝つためには、指定された場所から矢をはずさないです。
 それでは、こうしましょうか。

 ダーツの矢を三本――ワンスロー分取り、崇剛はダーツの矢――ダート一本をダガーを持つように人差し指と中指で挟んだ。手の甲を的へ向けて放とうとすると、バルブレアを飲もうとしていた、涼介は待ったの声をかけた。

「お前、持ち方が違うだろう。普通、鉛筆みたいに持つんだろう。ダガーの持ち方じゃないか、それって。前に教えただろう?」

 罠が阻止されそうになったが、崇剛はあらかじめ用意していた言葉で、執事の物申すをはじき返す。

「こちらの持ち方が私には合っているのです。それとも違うと言うのですか? それならば、涼介、どのような持ち方が私に合っているのかを手取り足取りで、私に教えていただけませんか?」

 策士の心の中は氷河期かと思えるほど冷たかった。

(情報を得るためならば、どのようなことでも私はします。私は決して優しい人間ではありませんからね)

 主人にまた逃げ道を作られ、執事の自分にはBL罠にさりげなく誘うという、したたかさをまざまざと見せつけられ、涼介は訴えを却下した。

「お前また……」

 反論できないようにわざと言ってきたと、執事は思っていたが、気品高く主人に微笑まれると、主従関係の元に涼介は玉砕し、乱暴にバルブレアを煽った。

「いい」
(何か言うと、お前また罠を仕掛けてくる気がする)

 崇剛の優雅な声がガス灯の明かりの中で舞う。

「それでは、一ランド目ですね」

 二本の指で挟んだダーツの矢を、手を下ろした状態から、上へ勢いよく持ち上げつつ絶妙な位置で力を抜き、矢を放った――スローした。

 緩やかな山を描いて綺麗に飛んてゆき、ダーツボードに軽やかにスパンと刺さった。同じように繰り返し、バラバラな位置ながらも的に全て当たり、崇剛のターンは終了した。

「あなたの番です」

 三本とも二十に命中――

 はずさなかった崇剛を前にして、涼介はグラスをテーブルの上へ静かに置いた。純潔を表すホワイトジーンズはすっとソファーから立ち上がる。

「俺か」

 一本でもはずせば負けになる。そのプレッシャーに負けないように、真摯なベビーブルーの瞳をダーツボードへ向け、涼介は神経を研ぎ澄ます。

(こっちで……)

 矢を親指と人差し指で持ち、中指を添えるスリーフィンガーで位置を慎重に調節した。

(この力だ!)

 目の高さあたりから軽く投げた。すると、綺麗にボードにダートはあたり、こっちも同じく全て二十に命中した。

「よし!」

 涼介が的の真正面からよけて、崇剛が再びスローラインへ戻ってきた。二ラウンド目――。さっきと同じ要領で、人差し指と中指でダートを挟む。

(こちらですね)

 今度は右手を体の左側へ持っていき、やはり手の甲を的へ向けた。右斜め上へ手を押し出す仕草でダートをスロー。指定された場所――十九に見事なまでに三本とも刺さった。

 崇剛は優雅に微笑み、涼介と交代する。執事は真剣な顔で、スパイダー型の的を凝視して、

(十九……んー……!! よし、今だ!)

 涼介は天性の勘を使って投げたが、肩に力が少しだけ入り、

(はずれた……)

 その隣の三へ矢が、手違いという飛線を描いて射られた。

「くそっ!」
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