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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Escape from evil/10
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してやられたのだ、あのトラップ天使に。崇剛は優雅に微笑み、心の中で降参のポーズを取る。
「出エジプト記……かもしれない」
国立が聖書の話を昨日したことも、神のお力ならば宇宙を創造するように簡単だ。何重にも真意は隠されていたのだった。やりかけのパズルがまた完成図へと近づいて、ピースを減らしたみたいだった。
隣でプリンを夢中で食べている聖女の、漆黒の長い髪を視界の端で捉える。
ラジュ天使は戻ってきていません。
瑠璃とどなたかが約束をしているみたいです。
従って、別の天使が現れるという可能性が99.99%――
ラジュ天使との人間関係からすると、あちらの方であるという可能性が99.99%――
私は情報を得たいのです。
ですから、こちらのまま待ってみましょう。
悪霊の大鎌は左横へ持ち上げられ、そのまま涼介と瞬の霊体を完全に横一直線で引き裂く格好を取った。
このままでは、乙葉親子の魂が消滅するという未来が再生されそうだった。それでも、崇剛は冷静という名の盾で、激情という獣を押さえ込み、
そちらの方がいらっしゃるという可能性が、確信であるという可能性へ変わり、そちらが99.99%になった。
霊界は心の世界です。
ですから、こちらのようにしましょうか。
瑠璃が口元についていたプリンのクズをナプキンで拭うと、ランチが広げられているテーブルの上に、別次元でスタンドマイクが突然現れ、プロレス中継のように変わった。
涼介と瞬は気づかず、ちょうちょを追いかけたり、サンドイッチを頬張り続けている。
崇剛の水色の瞳からは冷静さは一瞬にして消え失せ、血湧き肉躍らせるものへとなり、目の前で繰り広げられるであろう戦いに、思い浮かべる口調までが別人ように急変した。
「ここで、ラジュ天使と仲のいい――いや、違う。トラップ天使の策にはまってばかりの、カミエ天使降臨だ!」
カンとゴングが鳴ったような気がした。それが合図というように、右手の空から金の光が氷上を滑るが如し、悪霊へと一気に間合いを詰めてきた。
「さっそく使ってきた、縮地! 短時間で、長距離を歩く武術の技。これは、腸腰筋と腸骨筋、そして、足裏の気の流れを最大限に使うものだ。次はどう出る!」
近づいてきた者の動きが早すぎて、姿形がまったく見えなかったが、解説者となっている崇剛の水色の瞳には二百十センチの背丈を持つラジュよりも、はるかに大きい二百四十センチの天使が映っていた。
立派な両翼は畳まれていて、白いローブではなく、聖なる光を放つ純白の袴姿。普通より長めの日本刀が左腰に刺してあった。
天使の証である金色の輪っかの下にある、深緑の短髪。無感情、無動という言葉がよく似合うカーキ色の瞳。
日本刀の柄には、すでに天使の右手がかけられていた。大地のような絶対不動で重厚感を表す体躯は、前屈みになっているが、決して姿勢が崩れているのではなかった。
自身を保っている小宇宙と大宇宙が一ミリのズレなく一体化し、体の中心――センターが崩れていない。芸術とも呼べるほど美しい出立ちで、隠しても隠しきれない和装の色気が艶やかに匂い出ていた。
悪霊の大鎌が動く前に、日本刀がすっと抜き取られた。左手を添えて、深緑色の髪近くへ持ち上げられるかと思いきや、抜きざまに右手だけで左下から右上へ刃先は、悪霊を成敗するがために、天使の手によって鉛色の一直線を鋭く描いた。
「早い! 一旦抜いて構えるよりも、断然早い倒し方! あれは無住心剣流! 彗空時代にあった剣の流派のひとつ。重力に逆らわず剣を持ち上げ、剣の重みだけを感じながら、下すということだけで、全てを学び取るという教え。だが、あまりにも再現することが難しく、三代目――真里谷 円四郎で途絶えてしまった流派だ。次は相手の大鎌が動いてくるぞ! どうする、カミエ天使!」
大鎌を持つ悪霊は、天使の刀さばきに一瞬怯んだが、三日月型の大きな刃物を振り上げ、カミエへ下ろそうとした。
「出エジプト記……かもしれない」
国立が聖書の話を昨日したことも、神のお力ならば宇宙を創造するように簡単だ。何重にも真意は隠されていたのだった。やりかけのパズルがまた完成図へと近づいて、ピースを減らしたみたいだった。
隣でプリンを夢中で食べている聖女の、漆黒の長い髪を視界の端で捉える。
ラジュ天使は戻ってきていません。
瑠璃とどなたかが約束をしているみたいです。
従って、別の天使が現れるという可能性が99.99%――
ラジュ天使との人間関係からすると、あちらの方であるという可能性が99.99%――
私は情報を得たいのです。
ですから、こちらのまま待ってみましょう。
悪霊の大鎌は左横へ持ち上げられ、そのまま涼介と瞬の霊体を完全に横一直線で引き裂く格好を取った。
このままでは、乙葉親子の魂が消滅するという未来が再生されそうだった。それでも、崇剛は冷静という名の盾で、激情という獣を押さえ込み、
そちらの方がいらっしゃるという可能性が、確信であるという可能性へ変わり、そちらが99.99%になった。
霊界は心の世界です。
ですから、こちらのようにしましょうか。
瑠璃が口元についていたプリンのクズをナプキンで拭うと、ランチが広げられているテーブルの上に、別次元でスタンドマイクが突然現れ、プロレス中継のように変わった。
涼介と瞬は気づかず、ちょうちょを追いかけたり、サンドイッチを頬張り続けている。
崇剛の水色の瞳からは冷静さは一瞬にして消え失せ、血湧き肉躍らせるものへとなり、目の前で繰り広げられるであろう戦いに、思い浮かべる口調までが別人ように急変した。
「ここで、ラジュ天使と仲のいい――いや、違う。トラップ天使の策にはまってばかりの、カミエ天使降臨だ!」
カンとゴングが鳴ったような気がした。それが合図というように、右手の空から金の光が氷上を滑るが如し、悪霊へと一気に間合いを詰めてきた。
「さっそく使ってきた、縮地! 短時間で、長距離を歩く武術の技。これは、腸腰筋と腸骨筋、そして、足裏の気の流れを最大限に使うものだ。次はどう出る!」
近づいてきた者の動きが早すぎて、姿形がまったく見えなかったが、解説者となっている崇剛の水色の瞳には二百十センチの背丈を持つラジュよりも、はるかに大きい二百四十センチの天使が映っていた。
立派な両翼は畳まれていて、白いローブではなく、聖なる光を放つ純白の袴姿。普通より長めの日本刀が左腰に刺してあった。
天使の証である金色の輪っかの下にある、深緑の短髪。無感情、無動という言葉がよく似合うカーキ色の瞳。
日本刀の柄には、すでに天使の右手がかけられていた。大地のような絶対不動で重厚感を表す体躯は、前屈みになっているが、決して姿勢が崩れているのではなかった。
自身を保っている小宇宙と大宇宙が一ミリのズレなく一体化し、体の中心――センターが崩れていない。芸術とも呼べるほど美しい出立ちで、隠しても隠しきれない和装の色気が艶やかに匂い出ていた。
悪霊の大鎌が動く前に、日本刀がすっと抜き取られた。左手を添えて、深緑色の髪近くへ持ち上げられるかと思いきや、抜きざまに右手だけで左下から右上へ刃先は、悪霊を成敗するがために、天使の手によって鉛色の一直線を鋭く描いた。
「早い! 一旦抜いて構えるよりも、断然早い倒し方! あれは無住心剣流! 彗空時代にあった剣の流派のひとつ。重力に逆らわず剣を持ち上げ、剣の重みだけを感じながら、下すということだけで、全てを学び取るという教え。だが、あまりにも再現することが難しく、三代目――真里谷 円四郎で途絶えてしまった流派だ。次は相手の大鎌が動いてくるぞ! どうする、カミエ天使!」
大鎌を持つ悪霊は、天使の刀さばきに一瞬怯んだが、三日月型の大きな刃物を振り上げ、カミエへ下ろそうとした。
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