明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

文字の大きさ
733 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜

Time of judgement/29

しおりを挟む
 こちらの方法が勝つという可能性が99.99%――!
 それでは、こうしましょう。

 手に持ったままのダガーは、いつもと違って人差し指と中指で挟み持ちはしなかった。

 旧聖堂にさっきから立ってはいるものの、幽体離脱はしていて、悪霊と戦った時のように瞬間移動ができるはずだった。しかし、その選択肢を、崇剛はわざとさけ、勝ち目のないダガーを逆手持ちする。

 敵との距離、二メートル――

 茶色いロングブーツのかかとは後ろ向きで下がっていき、紺の長い髪を縛っているターコイズブルーのリボンが、旧聖堂の聖なる結界にぶつかり、

 距離、一メートル――

 これ以上、下がることが霊的にできなくなった。その時、横一直線に並んでいた天地たちの姿も、危険回避で瞬間移動でいなくなり、突進してくる五十万近くの軍勢の前には、優雅な瑠璃色の貴族服がひとり居残った。

「今です!」

 白く濁った大理石の上で、かかとを軸にして、体の向きを九十度くるっと回して、体の右側が壁と沿うように立った。

 旧聖堂の壁に聖なるダガーをズバッと大きな杭でも打つようにしっかりと差し込む。敵の手が触れるギリギリまで待ち、後ろへ半歩下がり、横へ逃げてゆくように勢いをつけて走り込み、床を後ろへ思いっきり蹴り上げた。

「っ!」

 中性的な唇からりきむ吐息が思わずもれる。ダガーを軸にして、片手で鉄棒を逆上がりをする要領で、崇剛の体は時計の振り子が円を描くように浮き上がり始めた。

 紺色の長い髪が一旦自分の背中から離れ、床へ向かって艶やかに落ちる。崇剛の体は今、ダガーを軸にして、逆立ちしていた。

 自分へと向かってきていた敵軍が空振りに終わり、真下を左から右へ駆け抜けてゆくのを、冷静な水色の瞳で見送りながら、鞘にしまってあるオリジナルのダガーの柄に空いている手をかけ、霊界のものを引き抜いた。

 頂上でほんの少し止まったと思うと、今度は向こう側へ向かって体は重力に引っ張られ始めた。ブランコが前へカーブを描いて動いていくような感覚を持ったまま、バック転をした崇剛の茶色いロングブーツは床に無事に着地。

 紺の髪は背中と並行に流れ落ち、素通りした敵勢の背中に向かって、次々とダガーを投げた。

 背後から狙うと、敵を確実に倒せるという可能性が98.97%――

 だが、敵の軍勢は留まることを知らず、そのまま次の一派がやってきてしまった。あっという間に崇剛は邪神界の兵に囲まれ、自軍の総大将のひとりは――崇剛。

 当然のことながら、待っていたと言わんばかりに、敵の手があちこちから伸びてきて、ガッチリつかまれたと同時に、相手の瞬間移動で、瑠璃色の貴族服は陣地から敵地へと連れ去られてしまった。

 地面には解けてしまったターコイズブルーのリボンと聖なるダガーのオリジナルだけが残されていた。

 上空へ避難していた天使たちは、誘拐されてしまった策略家神父の未来を読み取り、ラジュは困った顔でこめかみに人差し指を当てた。

「おや? 崇剛の死期が迫っています~。100%に急に近くなってしまいました~」

 シズキの鋭利なスミレ色の瞳は、敵の軍勢真っ只中に射殺すように向けられた。天使の目には、ガラス細工みたいな綺麗で儚げな崇剛が、なぐさみ者を見るように、敵のさげすみの視線にさらされているのが見えた。

 地底深くで密かに活火山がぐつぐつと煮えたぎっていたが、シズキはとうとう天へ抜けるようにスカーンと火山噴火させ、戦場中に轟くような大声を上げた。

「あの策士がっ! 本当にするとはな。余計な仕事を増やして、ありがたく思え」

 そうして、崇剛が罠を張った通り、聖なる白いロングコートをはおった、ゴスパンク天使は上空からシュッと素早く消えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...