明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄

文字の大きさ
734 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜

Time of judgement/30

しおりを挟む
 崇剛の意識が戻ってくると、すでに邪神界の者に囲まれているところだった。持っていたダガーは旧聖堂の床に転がったまま。丸腰で、助けてくれる味方は誰もいない。

(武器がない……。困りましたね)

 策略家は心の中で、優雅に降参のポーズを取った。

 重力十五分の一で生み出した、ダガーひと差しで上に回りのぼり、敵との衝突をさけるという策。一度見送ったとしても、敵が続いてやってくるのは、冷静な頭脳を持っていなくても、誰にでも予測がつくことだった。

 崇剛の策はまだ生きている――

 体のあちこちに腕が伸びてきて、消滅――二度と生まれ変われもしない死の拘束が、優雅な聖霊師にやってきてしまった。

「っ!」

 ひどい力でつかまれ、崇剛は思わず唇から苦痛の吐息をもらす。もしも、自身が導き出した可能性が間違っていたら、ここで滅びるのもまた現実で、死に向かってカントダウンを始めるのだ。

 魂底へ向かって、敵の手が霊体の境界線を破壊するように伸びてくる。

「それが欲しい……」
「死ねばいい……」

 次々と浴びせられる言葉の暴力を、冷静という名の盾で激情という獣を押さえ込み、崇剛のクールな水色の瞳は何の感情も持たず、平静さを持っていたが、

(…………)

 心の中はとうとう真っ白になった。その時、頭上から、

 ズババババッ!!

 聖なる光を放つ鉛色の豪雨が降り注ぎ始めた。

「うぎゃ~!」
「うわー!」
「ぎゃあ~!」

 悲鳴の嵐を巻き起こしながら、崇剛の細い腕をつかんでいた、敵の手がどんどん減ってゆく。

 導き出した――思惑通り動いた人物が助けにきたと思い、崇剛は優雅に微笑んだ。

「きてくださったみたいです」

 瑠璃色の貴族服を、まるでおかすように群がっていた敵は、ドーナツ化現象を起こした。

 冷静な水色の瞳で上空を見上げると、真っ逆さまに銀の長い前髪が重力に逆えず落ちて、鋭利なスミレ色の両目があらわになっていた。

 白いロングコートは落下速度で下に落ちる暇がないほど、猛スピードで地面へ真っ逆さまに落ちてきているというよりは、追突するような速さだった。

 このままではぶつかるというところで、不意に白いロングコートは消え、気づいた時には、崇剛と背中合わせで荒野に立っていた。

 リボンが解け、紺の長い髪が女性的な雰囲気に変えてしまった線の細い崇剛の背中。

 と、

 同じような体格だが、背丈が三十八センチの差のゴスパンク天使。

 崇剛の頭上から、超不機嫌で俺様の奥深く澄んだ男の声が響き渡った。

「貴様、そんなに死にたいのか? 殺してやってもいい、ありがたく思え」

 ぴったりとくっついている背中からシズキの響きからくる振動が、伝わるのを感じながら、神父はくすりと笑った。

「可能性の導き出し方を間違っただけですよ」

 どいつもこいつもあきれてものが言えない――。シズキはそう思って、バカにしたように鼻で笑い、減らず口を叩いた。

「貴様の口もラジュと一緒で嘘をつくためについているんだな」

 人間の策士が考えそうなことなど、わかっている――。崇剛の神経質な横顔に、シズキが頬を寄せるように近づいた。

 お互い首だけで相手に振り返り、水色とスミレ色の瞳が混じり合って、青みがかった紫になりそうなほど見つめ合った。

「そうかもしれませんね」

 曖昧に返しながら、崇剛の心の内は、

(シズキ天使に殺していただきたかったのです)

 神に使える天使に、人間を殺せと願う。策士のたわむれ――。

 きちんと聞こえているシズキは、どうしようもないほどの数の敵に囲まれたのを超不機嫌顔で見渡す。

「俺ももう囲まれている。貴様と一緒に死んでやってもいい」
(これが、貴様の望みだろう)

 この愚かな人間と天使が心中しんじゅうしてやろうというのだ。慈悲深いというものだろう。

 運命をともにしてくれるという背後にいるガーディアンへ、崇剛は優雅に言葉を送る。

「えぇ、構いませんよ。あなたとなら、どこへ行こうとも。私は幸せです」

 ベルダージュ荘の診療室でさっき、結婚すると言っていた話も、あながち間違いではなかったのかと思うほど、何だかいい雰囲気なっていた。

 敵地の真ん中で、ラブシーンがいきなり展開され始め、邪神界は毒気を抜かれた顔で、みなただただ立ち尽くした。

(何してるんだ? このふたりは)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...