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ミュージシャンな夫たち
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今日は、雷龍、溜息、紫苑、精華、逆波の誕生日パーティーである。
小説の案を練っている時で、気づくと、妻はパーティー会場から分身して抜け出し、この世界に戻ってきているのである。時間を忘れてしまうが、とにかく、お出迎えをしなくては――ということで、再び戻った。
産みの親は私と、蓮、光命だ。
蓮といえば、R&B界の人気急上昇中のアーティスト。
光命といえば、私が書いた『心霊探偵はエレガントに』の主人公、崇剛 ラハイアットのモデルとなった人である。そうして今、作曲者でありピアニストとして、ツアー真っ最中である。私もそのコンサートにはついてゆくが、客席から、
「崇剛~!」
と掛け声がかかることもしばしばだ。つまりは、お陰様で、小説のアニメ化は大成功を収めつつある。(まだ、最終回は迎えていない)
そうして、蓮と光命は、最初に男性同士の結婚をした人たちだ。世間の注目は計り知れない。さらには、そのふたりが結ばれた結果の子供たちの誕生日パーティーである。
五つ子ということもあるが、やけに招待客が多く、子供たちには子供たちがプレゼントを持ってくるが、光命と蓮にプレゼントを渡している親御さんたちがたくさんいた。写真も撮られまくりで、妻は心の中で、
主役は、子供たちなのですが……。
と思いながら、招待客のお出迎えが全員終わると、舞台に用意された席に座ることとなった。どうやって座るかで、オロオロする。
子供五人はいいのだが、両親が三人いるので、うまい具合に分けられず、子供たちが右で、親たちが左になった。
誕生日が始まったが、写真を撮っている人の大半は、蓮と光命に集中している。その間を縫って、少女たちの呼び声が聞こえた。
「精華くん」
「精華くん」
精華はモテモテくんなのか。
そうこうしているうちに、招待された子供たちの催し物が始まった。ロックな格好をした男の子が、大人顔負けのテクニックでエレキギターを弾いていた。
「上手だね、あの子」
「そう。上手なの」
この五人は、私のそばに滅多に来ない子供たちばかり。
「誰?」
「溜息」
「あれ? 溜息って、音楽好きだったっけ?」
手元にあった子供たちのデータファイルを開くと、雷龍がPCに打ち込んで作曲すると載っていて、溜息の好きなことは、読書と縄跳びだった。
ただ、仲のいい兄弟は雷龍。
友達の演奏を聴きながら、溜息は、
「ギター習いたい」
「ギターか……」
光命はピアニスト。PCでの打ち込みもやるらしい。
蓮はもともとヴァイオリニスト。PCでの打ち込みもする。
似ている楽器を弾いているといえば、
「蓮って、ギター弾ける? 同じ弦楽器だからさ、どうかと思って」
「一緒にするな。弾けない」
「だよね~。うちでギター弾く人、誰もいないね。音楽関係の人間は三人もいるのに」
「颯茄はできないのですか?」光命が蓮を間に挟んだ向こうで聞いてきた。
「私はFのコードで止まっている人間なので、できないです。鍵盤なら教えられるけど……」
「お前に楽器は教えられ――」蓮が私の手をつかんだ。ただそれだけのことなのに、会場から悲鳴が上がった
「きゃああっ!」
妻の手を夫がつかんだだけだ。それで騒ぎになるとは、有名人ふたりが並ぶと、世界は変わってしまうものだな。
まあ、それよりも――
「溜息はギターリストになりたいの? それとも、作曲するの?」
「ん~、まだ決めてない」
どうしてもやりたいわけではないようだ。ということは――
「どこかで子供用のエレキギター貸してくれないかな?」
買って、弾いてみたが違ったでは、楽器がかわいそうである。
すると、溜息が携帯電話を慣れた感じでタッチした。
「ママ、こういうのがあるよ」
よく見ると、
お試しで気に入った楽器は、新品のものをご購入いただけます――
客の心にしっかりと届く素晴らしいサービスである。
「じゃあ、これ、買おうか? どういうモデルがいいの?」
「この、サングラスをかけたクマさんのモデル」
「かっこいいね。ロックって感じだ」
これで一件落着――おっと、
「溜息、ギター習いたいんだよね?」
「うん」
注目されているアーティストふたりに乞う。
「蓮、光さん、事務所でエレキギターを子供に教える人を探してください。お願いします」
活躍している人に教えてもらったほうがいいだろう。
「えぇ、構いませんよ」
「いい。探してやる」
夫たちから視線を、溜息へを戻した。
「見つけてくれるって」
「パパ、ありがとう」
ひと段落すると、会場からこんな話が聞こえてきた。
「そういえば、あの奥さんって、Hikariと一緒にプロモーションビデオに出て、歌ってる人じゃないかしら?」
「そうね。似てるわね」
光命の芸名――Hikariのコンサートツアーの一部分では、私も舞台に出て歌っている活動を今はしている。
あっという間にその話は会場に広がっていき、
「もしかして、奥さんとユニット組んでたってこと?」
「そうよ!」
「きゃあ、夫婦でピアノとヴォーカルだなんて、素敵!」
音楽活動もしている妻だが、知らないうちに仕事していることが多く、詳細がよくわからない。ただ、断片的な情報を足すと、アーティスト名は本名とは違っていて、メイクもかなり変えているらしい。
だから、小説を書いている私と、歌を歌っている私はイコールになっていないのが、現状だ。
それにしても、蓮と光命の人気は大変なものだ。それも、ファンの皆さまのおかげである。ありがたいことだ。
2020年5月27日、水曜日
小説の案を練っている時で、気づくと、妻はパーティー会場から分身して抜け出し、この世界に戻ってきているのである。時間を忘れてしまうが、とにかく、お出迎えをしなくては――ということで、再び戻った。
産みの親は私と、蓮、光命だ。
蓮といえば、R&B界の人気急上昇中のアーティスト。
光命といえば、私が書いた『心霊探偵はエレガントに』の主人公、崇剛 ラハイアットのモデルとなった人である。そうして今、作曲者でありピアニストとして、ツアー真っ最中である。私もそのコンサートにはついてゆくが、客席から、
「崇剛~!」
と掛け声がかかることもしばしばだ。つまりは、お陰様で、小説のアニメ化は大成功を収めつつある。(まだ、最終回は迎えていない)
そうして、蓮と光命は、最初に男性同士の結婚をした人たちだ。世間の注目は計り知れない。さらには、そのふたりが結ばれた結果の子供たちの誕生日パーティーである。
五つ子ということもあるが、やけに招待客が多く、子供たちには子供たちがプレゼントを持ってくるが、光命と蓮にプレゼントを渡している親御さんたちがたくさんいた。写真も撮られまくりで、妻は心の中で、
主役は、子供たちなのですが……。
と思いながら、招待客のお出迎えが全員終わると、舞台に用意された席に座ることとなった。どうやって座るかで、オロオロする。
子供五人はいいのだが、両親が三人いるので、うまい具合に分けられず、子供たちが右で、親たちが左になった。
誕生日が始まったが、写真を撮っている人の大半は、蓮と光命に集中している。その間を縫って、少女たちの呼び声が聞こえた。
「精華くん」
「精華くん」
精華はモテモテくんなのか。
そうこうしているうちに、招待された子供たちの催し物が始まった。ロックな格好をした男の子が、大人顔負けのテクニックでエレキギターを弾いていた。
「上手だね、あの子」
「そう。上手なの」
この五人は、私のそばに滅多に来ない子供たちばかり。
「誰?」
「溜息」
「あれ? 溜息って、音楽好きだったっけ?」
手元にあった子供たちのデータファイルを開くと、雷龍がPCに打ち込んで作曲すると載っていて、溜息の好きなことは、読書と縄跳びだった。
ただ、仲のいい兄弟は雷龍。
友達の演奏を聴きながら、溜息は、
「ギター習いたい」
「ギターか……」
光命はピアニスト。PCでの打ち込みもやるらしい。
蓮はもともとヴァイオリニスト。PCでの打ち込みもする。
似ている楽器を弾いているといえば、
「蓮って、ギター弾ける? 同じ弦楽器だからさ、どうかと思って」
「一緒にするな。弾けない」
「だよね~。うちでギター弾く人、誰もいないね。音楽関係の人間は三人もいるのに」
「颯茄はできないのですか?」光命が蓮を間に挟んだ向こうで聞いてきた。
「私はFのコードで止まっている人間なので、できないです。鍵盤なら教えられるけど……」
「お前に楽器は教えられ――」蓮が私の手をつかんだ。ただそれだけのことなのに、会場から悲鳴が上がった
「きゃああっ!」
妻の手を夫がつかんだだけだ。それで騒ぎになるとは、有名人ふたりが並ぶと、世界は変わってしまうものだな。
まあ、それよりも――
「溜息はギターリストになりたいの? それとも、作曲するの?」
「ん~、まだ決めてない」
どうしてもやりたいわけではないようだ。ということは――
「どこかで子供用のエレキギター貸してくれないかな?」
買って、弾いてみたが違ったでは、楽器がかわいそうである。
すると、溜息が携帯電話を慣れた感じでタッチした。
「ママ、こういうのがあるよ」
よく見ると、
お試しで気に入った楽器は、新品のものをご購入いただけます――
客の心にしっかりと届く素晴らしいサービスである。
「じゃあ、これ、買おうか? どういうモデルがいいの?」
「この、サングラスをかけたクマさんのモデル」
「かっこいいね。ロックって感じだ」
これで一件落着――おっと、
「溜息、ギター習いたいんだよね?」
「うん」
注目されているアーティストふたりに乞う。
「蓮、光さん、事務所でエレキギターを子供に教える人を探してください。お願いします」
活躍している人に教えてもらったほうがいいだろう。
「えぇ、構いませんよ」
「いい。探してやる」
夫たちから視線を、溜息へを戻した。
「見つけてくれるって」
「パパ、ありがとう」
ひと段落すると、会場からこんな話が聞こえてきた。
「そういえば、あの奥さんって、Hikariと一緒にプロモーションビデオに出て、歌ってる人じゃないかしら?」
「そうね。似てるわね」
光命の芸名――Hikariのコンサートツアーの一部分では、私も舞台に出て歌っている活動を今はしている。
あっという間にその話は会場に広がっていき、
「もしかして、奥さんとユニット組んでたってこと?」
「そうよ!」
「きゃあ、夫婦でピアノとヴォーカルだなんて、素敵!」
音楽活動もしている妻だが、知らないうちに仕事していることが多く、詳細がよくわからない。ただ、断片的な情報を足すと、アーティスト名は本名とは違っていて、メイクもかなり変えているらしい。
だから、小説を書いている私と、歌を歌っている私はイコールになっていないのが、現状だ。
それにしても、蓮と光命の人気は大変なものだ。それも、ファンの皆さまのおかげである。ありがたいことだ。
2020年5月27日、水曜日
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