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洞窟
⑥
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二年ぶりに受け入れた熱杭は、まだエアルの弱点を覚えていた。
杭の先が敏感になった箇所を擦り潰せば、「あぁっ」とあられもない嬌声と一緒に、唾液が土の上へとこぼれ落ちる。足元には、丸い染みが何滴かできている。自分の唾液と汗、そして芯の鈴口からあふれた蜜で形作られたそれらは、後ろから突き上げられるたびに二人分の影の上に散った。
これ以上強い刺激を与えられたら、おかしくなりそうだ。大木の幹に両手をついた体勢のまま、エアルは顔を後ろに捻った。
「ぁ……っローシュ、さま……っ」
逃げられるなんて思っていない。だが呼びかけた次の瞬間、獲物を逃がすまいとする雄の目がギロッとエアルを捕らえた。
腰を折った男に顎を掴まれ、唇を奪われる。舐めるように絡めとられた舌を、付け根が痛むほどに吸われる。
「ふぁっ……んあっ」
キスの合間を縫ってなんとか呼吸しようとするが、その間にもぐちゅぐちゅと後孔を掻き乱す男杭の律動は止まない。
さっきまであんなに理性の壁を張っていた男とは思えないほどの変わりようだ。背後に立つローシュへ腰を突き出し、エアルは男の口づけと抽挿を一身に浴びながら恍惚に浸った。
抱いてほしい――。そうローシュに願った直後、相手の理性の糸がプツンと切れた音がした。大木の幹に両手を押さえつけられ、キスの嵐を受けた。口内や耳の中に舌をねじ込まれ、食むような口づけを顔や首、鎖骨じゅうに浴びた。凝り固まっていた欲をたっぷりほぐしてもらった。
ローシュのキスは強引だったが、少しも嫌ではなかった。王城から離れた場所、しかも虫の音が聞こえる夜空の下という特殊な環境にいるからだろうか。
見栄や建前、理性やプライドなど。人間の生活に合わせて体の表面に纏ってきた無駄なものを、少しずつ剥がされていくような感じがした。
ローシュの寝室にある大きなベッドはここにはない。あるのは互いの体を支える大木の幹と雲の合間から見え隠れする月、そしてパチパチと弾ける焚き火の音だけ……。非日常を彩る開放的な場が新鮮で、エアルの体はいつもより感じやすかった。
ほぼ全裸状態のエアルとは反対に、ズボンを太ももまで下げたローシュは邪魔そうにシャツの裾を捲り上げ、前歯で噛んでいる。くっ、と堪える吐息が律動とともにシャツの生地を通して聞こえてくる。男のその声だけで、どうしようもなく興奮した。
「ああっ、はっ……ン、そこ、ばっか、やめ……ああッ!」
ローシュの動きにあわせて、男の腰骨がエアルの双丘を弾く。何かにしがみついていないと、今にも膝が崩れ折れてしまう。指先が大木の幹割れによって傷ついても構わなかった。
「……止めるか?」
意地悪な声ではない。あくまでもこちらを気遣う声音で、ローシュが問うてくる。エアルはいやいやと首を横に振る。
「きも、ち……っ、ローシュさ、ま……っはあ、んっ! やめな、ぃで……っ」
次の瞬間、内側から膝裏に侵入してきた手によって片脚をグイッと上側に開かれた。もう片方の脚のみで全身を支えることになったエアルの体に、ローシュは遠慮なく杭を打ちつけてくる。
まるで動物の交尾のようだ。大股に開かれたせいで、結合部分があらわになる。互いの混じり合った体液が太股をツーッと流れていく。埋め込まれた杭をより深い箇所で感じ、挿されている感覚を鋭く拾った。
腰を折ったローシュに耳朶を舐められながら、「エアル……っ」と濡れた囁き声で呼ばれる。そのあとに続く言葉を、容易に想像できてしまう自分が怖かった。
「……愛している。誰よりも何よりも……エアルさえいてくれれば、何もいらないんだ……っ」
耳の奥がキンとなる。どうしてそんなに切ない声を出すのだろう。こちらまで苦しくなる。
ふとエアルは思った。もしかすると、ローシュはエアルが考えているよりもずっと、自分の立場をわきまえているのではないだろうか……と。自分の恋がいかに不毛であるか。そして前途が茨の道となるか。王や国民の前でエアルへの想いを宣言したことの重みが、ようやく腹の底で蠢いた。男の覚悟というものが、どれだけ真摯なものだったか理解した。
ローシュの痛いほどの想いに喉の奥が締め付けられる。切なさが腹の奥からこみ上げる。思わず「私も」と口から出てしまいそうなり、エアルは揺さぶられる体を支えながらハッと自身の口を手で封じた。
今自分はなんて返そうとした? ローシュから与えられた愛の囁きに対して、自分も同じ気持ちだと伝えようとしなかったか?
心臓がバクバクした。自然と口を衝きそうになった言葉に愕然とした。
エアルが突然手で口を押さえたのを不思議に思ったのか、背後からローシュが「我慢しなくていい」と頭に口づけを落とした。大きくなっていく嬌声を、エアルが恥ずかしがっていると考えたのだろう。
ローシュの勘違いだが、今は訂正する理由が見当たらなかった。エアルは相手の考え違いを指摘することなく、誤魔化すように首を後ろにやって男の唇に自身のそこを押し当てた。柔らかい唇が、パズルのようにフィットする。
「……もっと、ください」
エアルは相手の唇をぺろりと舐め、誘うような目を送った。ゴクッと唾を呑んだローシュの喉仏がゴクッと嚥下する。
ローシュが純情ならば、自分は淫乱になろう。そうすれば、お互いの気持ちに距離ができる気がした。自身の心を熱くする感情を、この気持ちを、ローシュに近づけてはいけない。距離が近くなればなるほど、自覚してしまうから。言葉にして、伝えたくなってしまうから。
自分もローシュのことを、愛しているのだと。
言葉を飲み込んだエアルとは反対に、ローシュは苦しそうに笑って言った。
「……愛してる」
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