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一章
02
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敵将との謁見が終わり、再び騎士に囲まれて自室へと戻されたマリアーナは、いつも自分の世話をしてくれる唯一の侍女ソリヤに、安堵の顔で出迎えられて思わず体から力が抜ける。
五年ほど前からこの城で働きだした彼女は、いつの間にかマリアーナの傍にいて、よく世話を見てくれるようになった。
このティフマ城は辺境の城として実用性を重視した立派な城ではあるが、その分日常生活においては不便なことは多々ある。とくに冬の寒さが長く続くこの地方では、石造りの城内での生活は厳しいものがあった。
そのせいもあってか、侍女を雇っても長続きすることがない。もとよりマリアーナ自身、幼いころから自分のことは自分でできたため、いつしか侍女を与えられることもなくなった。
とくに侍女を必要としてはいなかったが、いつの間にかソリヤが現れ、彼女が傍にいることが当たり前になっていた。世話を見てくれるという以上に、ただ傍にいてくれるという彼女の存在がマリアーナにとって貴重だった。
だからか、部屋に戻ったとき、見送られたときと同じ場所で、同じ姿勢で出迎えてくれたソリヤを見て、マリアーナは思わず目頭が熱くなる。
だがマリアーナはいつもの癖で、笑みを浮かべることでそれを押し隠した。
「わたしが命を差し出したところで、意味は無いと言われてしまったわ……」
ソリヤに促されて暖炉の前にあるソファに腰かければ、あらかじめ用意していたのか温かい紅茶が差し出される。
「それでよかったのです。マリアーナ様が居なくなってしまわれては、わたしがここに居る意味も失ってしまいます」
忠義に篤いソリヤの言葉を、嬉しく感じるとともに疑念も覚える。紅茶に口をつけ、その温かさが染みわたるのを感じてから、マリアーナはそっとソリヤを見上げた。
大きな二重の目は薄いブラウンで、後ろで束ねている髪も同じように色素の薄い茶色をしている。
マリアーナより身長はやや低いものの、細身ではないのでほんの少しふくよかな印象がある。
侍女としても申し分なく、器量もいい彼女は、仕事先という意味でも嫁ぎ先という意味でも、望めばもっと厚待遇の環境へ移ることができるはずだった。
過去に一度、父親に推薦状を書いてもらうからと転職を勧めたが断られている。どうしてそこまで自分などに忠義を尽くすのかと不思議なのだが、本人にそれを尋ねることなく今日まで来てしまった。
今、こんな状況ではあるが聞いてみようかと、口を開きかけたマリアーナだったが、俄かに廊下から人の気配が近づいてくるのに気づき口を閉ざす。
安堵したのも束の間、事態はまたも急展開へと向かうらしい。
一応、儀礼的にノックされ、返事を待たずに外からドアが開けられる。
先ほど謁見の間にて、敵将に侍《はべ》っていた側近の男が、先触れもなく戸口に現れた。
アルベルト・ルーベンソンと名乗った将軍ほどではないが、長身の青年は状況にそぐわない仕草で恭しく頭を下げると名乗りを上げた。
「改めまして、フラン・アウリーンと言います、マリアーナ嬢。以後、お見知りおきを」
明るい栗色の癖毛に、明るい茶色の瞳。形の良い二重の目と唇。高い鼻も形よく、美形といって差し支えないが下顎で整えられた髭が好印象を若干削いでいた。
もしかしたら幼顔を気にしているのかも知れないが、人好きのする笑みには不要のものに思えた。
思わぬ丁寧なあいさつをされ呆然としているマリアーナと、返礼を待つ青年――フラン・アウリーンの間に影が割って入る。
「っ、ソリヤ」
思わずマリアーナが声を上げるも、無視する形でソリヤはフランを睨み上げた。だが、ソリヤは相手を睨むばかりで何も言わない。
恐らく発言を待っていただろうフランは、ひとつ肩をすくめるとソリヤ越しにマリアーナを見やり先を続けた。
「先ほど、第四王子が見つかりました。卑しくも城主の私室の隠し部屋にひとり隠れていたそうですよ。愛妾の子とはいえ、何とも情けないことで」
「エーリス殿下は……」
「ご安心ください、生きていますよ、まだね。ティペリッシュ国との交渉に役立つなら利用するし、そうでなくても必要なんです、彼の“手”がね」
「……?」
後半の言葉の意味が分からず、内心で首を傾げるマリアーナだったが、そんな心情を察してか、それとも思い出し笑いの類なのかフランがクスリと小さく笑う。
「うちの将軍閣下は堅物でして。何事もきちっとしていないと気が済まない性質なんですよ」
何かを説明してくれた気がするのに、ますますマリアーナは訳が分からなくなる。それはソリヤも同じなのか、マリアーナに変わって初めて言葉を発した。
「何を言いたいのかさっぱり分かりません。さっさと用件を言ってください」
言葉遣いは丁寧だが語調厳しく言い放つ。
ソリヤの背後でマリアーナはヒヤヒヤしていたが、フランはとくに気にしていないようで、再び肩をすくめるとこう答えた。
「失礼しました。目的の人物が見つかったんで、我々は早々にお暇しようと思ってます。もちろんエーリス王子も一緒ですし、マリアーナ嬢、あなたにも同行していただきます」
彼の言葉にマリアーナは大きく目を見開いた。
それはつまり、敵国にて人質として囚われる、ということに他ならない。だが、エーリス王子はともかく自分の存在が人質としての価値を持つのか、と疑問に思う。
それでも、ティフマ城を陥落させ制圧している敵国の人間が、連れて行くと言うのであれば従わざるを得ない。
国境を侵犯した罪で、父子揃ってさらし首にされる覚悟さえ持っていたマリアーナは、疑念が首をもたげる前にそれを封じて、あとは粛々と彼らに従うことにした。
大急ぎで――主にソリヤが――最低限の荷物をまとめていく。外へ出るための厚い外套をまとい、周りを敵国の騎士に囲まれながらマリアーナは、ソリヤとともに部屋を後にする。
部屋を出る際、マリアーナはついソリヤに視線を止めた。だが瞬時にその意図を察し、ソリヤはきっぱりと首を振ってみせた。
先ほどフラン・アウリーンに『同行してもらう』と言われ、マリアーナが半ば呆然としている間に、ソリヤが『自分も行く』と断言してしまったのだ。
却下されるだろうと思われたが、意外にもフランは『どうぞ』と軽く了承してしまった。
この先のことを考えると決して安全とは言い切れない。むしろ危険しかないだろうと思われる。
本当なら残っていて欲しいと思うマリアーナだったが、その後テキパキと荷物をまとめるソリヤを何度説得しようと試みても、彼女は首を縦に振ってはくれなかった。
結局ソリヤを伴って、マリアーナは城の玄関口から外へ出る。途端、目の前に広がる光景に思わず足を止めた。
前庭に敵国の騎兵が出立の準備を終え、ずらりと並んでいたからだ。
つい恐怖と緊張に身を硬くするマリアーナだったが、玄関を降りた先に止まる馬車と、その傍に立つ人物を目にとめ背筋を伸ばす。
国境を侵犯した父タルヴォを迎え討ち、ここにいる騎士たちの指揮を執ってティフマ城を陥落させた敵将――アルベルト・ルーベンソンの姿がそこにあったからだ。
父親の仇であることには間違いがなく、辺境領の安全を脅かしている人物である。たとえこちらに非があろうとも隙を見せてはいけない相手だ、と思う。
だが、ゆっくりと彼の方へと向かいながら、マリアーナはなぜか動揺を覚えていた。決して顔に出さないよう気を付けながら、あえてアルベルトと視線を合わせないよう馬車の前に止まる。
傍で待機していた騎士の一人が馬車のドアを開けた。乗り込もうとしたマリアーナの前に、何かが差し出されて動きを止める。
見れば男らしいごつい手が、手のひらを上にして差し出されていた。マリアーナの乗車を手助けしようというものらしい。
思わず視線を上げて手の主を――アルベルトを見上げ、すぐに視線を戻す。マリアーナは彼を視界に入れたことを思わず後悔していた。
この男は自分の父親を殺しティフマ城を落とした。のみならず、自国の王子を攫い、その生殺与奪を握っている。危険な敵国の将であるはずなのに――
(温かい、優しい眼差しだなんて、そんな風に感じるわけないわ……何かの間違いよ)
しかし、それを再度確認する勇気を持てずマリアーナはアルベルトから視線を逸らしたまま、彼の手に手を添える。儀礼的にただ手を添えただけであったが、マリアーナが車内へ乗り込むのと同時にアルベルトの手がそれを力強く支える。
その力強さにほんの一瞬既視感を覚えたマリアーナだが、すぐに離れて行ったためその正体を知ることはできなかった。
続いてソリヤも馬車へ乗り込み、すぐにもドアが閉められようとしているのを見てマリアーナは慌てた。
「あの、エーリス殿下は――」
貴人を運ぶような馬車はこの一台しか見当たらなかった。ここにエーリス王子が乗車しないのなら、彼は一体どうやって移動しているのか。
そう不審に思ったマリアーナは、馬車から離れようと背を向けていたアルベルトに咄嗟にそう疑問を投げかけていた。
一瞬の間を置き振り返った彼の表情を見て、マリアーナは思わず息をのむ。
「ご安心を。安全を期して誰にも判らぬようお運び申し上げる」
その言葉遣いはわざとなのだろう。そして、笑みを浮かべているはずのその表情からは強い憎悪が見て取れた。
五年ほど前からこの城で働きだした彼女は、いつの間にかマリアーナの傍にいて、よく世話を見てくれるようになった。
このティフマ城は辺境の城として実用性を重視した立派な城ではあるが、その分日常生活においては不便なことは多々ある。とくに冬の寒さが長く続くこの地方では、石造りの城内での生活は厳しいものがあった。
そのせいもあってか、侍女を雇っても長続きすることがない。もとよりマリアーナ自身、幼いころから自分のことは自分でできたため、いつしか侍女を与えられることもなくなった。
とくに侍女を必要としてはいなかったが、いつの間にかソリヤが現れ、彼女が傍にいることが当たり前になっていた。世話を見てくれるという以上に、ただ傍にいてくれるという彼女の存在がマリアーナにとって貴重だった。
だからか、部屋に戻ったとき、見送られたときと同じ場所で、同じ姿勢で出迎えてくれたソリヤを見て、マリアーナは思わず目頭が熱くなる。
だがマリアーナはいつもの癖で、笑みを浮かべることでそれを押し隠した。
「わたしが命を差し出したところで、意味は無いと言われてしまったわ……」
ソリヤに促されて暖炉の前にあるソファに腰かければ、あらかじめ用意していたのか温かい紅茶が差し出される。
「それでよかったのです。マリアーナ様が居なくなってしまわれては、わたしがここに居る意味も失ってしまいます」
忠義に篤いソリヤの言葉を、嬉しく感じるとともに疑念も覚える。紅茶に口をつけ、その温かさが染みわたるのを感じてから、マリアーナはそっとソリヤを見上げた。
大きな二重の目は薄いブラウンで、後ろで束ねている髪も同じように色素の薄い茶色をしている。
マリアーナより身長はやや低いものの、細身ではないのでほんの少しふくよかな印象がある。
侍女としても申し分なく、器量もいい彼女は、仕事先という意味でも嫁ぎ先という意味でも、望めばもっと厚待遇の環境へ移ることができるはずだった。
過去に一度、父親に推薦状を書いてもらうからと転職を勧めたが断られている。どうしてそこまで自分などに忠義を尽くすのかと不思議なのだが、本人にそれを尋ねることなく今日まで来てしまった。
今、こんな状況ではあるが聞いてみようかと、口を開きかけたマリアーナだったが、俄かに廊下から人の気配が近づいてくるのに気づき口を閉ざす。
安堵したのも束の間、事態はまたも急展開へと向かうらしい。
一応、儀礼的にノックされ、返事を待たずに外からドアが開けられる。
先ほど謁見の間にて、敵将に侍《はべ》っていた側近の男が、先触れもなく戸口に現れた。
アルベルト・ルーベンソンと名乗った将軍ほどではないが、長身の青年は状況にそぐわない仕草で恭しく頭を下げると名乗りを上げた。
「改めまして、フラン・アウリーンと言います、マリアーナ嬢。以後、お見知りおきを」
明るい栗色の癖毛に、明るい茶色の瞳。形の良い二重の目と唇。高い鼻も形よく、美形といって差し支えないが下顎で整えられた髭が好印象を若干削いでいた。
もしかしたら幼顔を気にしているのかも知れないが、人好きのする笑みには不要のものに思えた。
思わぬ丁寧なあいさつをされ呆然としているマリアーナと、返礼を待つ青年――フラン・アウリーンの間に影が割って入る。
「っ、ソリヤ」
思わずマリアーナが声を上げるも、無視する形でソリヤはフランを睨み上げた。だが、ソリヤは相手を睨むばかりで何も言わない。
恐らく発言を待っていただろうフランは、ひとつ肩をすくめるとソリヤ越しにマリアーナを見やり先を続けた。
「先ほど、第四王子が見つかりました。卑しくも城主の私室の隠し部屋にひとり隠れていたそうですよ。愛妾の子とはいえ、何とも情けないことで」
「エーリス殿下は……」
「ご安心ください、生きていますよ、まだね。ティペリッシュ国との交渉に役立つなら利用するし、そうでなくても必要なんです、彼の“手”がね」
「……?」
後半の言葉の意味が分からず、内心で首を傾げるマリアーナだったが、そんな心情を察してか、それとも思い出し笑いの類なのかフランがクスリと小さく笑う。
「うちの将軍閣下は堅物でして。何事もきちっとしていないと気が済まない性質なんですよ」
何かを説明してくれた気がするのに、ますますマリアーナは訳が分からなくなる。それはソリヤも同じなのか、マリアーナに変わって初めて言葉を発した。
「何を言いたいのかさっぱり分かりません。さっさと用件を言ってください」
言葉遣いは丁寧だが語調厳しく言い放つ。
ソリヤの背後でマリアーナはヒヤヒヤしていたが、フランはとくに気にしていないようで、再び肩をすくめるとこう答えた。
「失礼しました。目的の人物が見つかったんで、我々は早々にお暇しようと思ってます。もちろんエーリス王子も一緒ですし、マリアーナ嬢、あなたにも同行していただきます」
彼の言葉にマリアーナは大きく目を見開いた。
それはつまり、敵国にて人質として囚われる、ということに他ならない。だが、エーリス王子はともかく自分の存在が人質としての価値を持つのか、と疑問に思う。
それでも、ティフマ城を陥落させ制圧している敵国の人間が、連れて行くと言うのであれば従わざるを得ない。
国境を侵犯した罪で、父子揃ってさらし首にされる覚悟さえ持っていたマリアーナは、疑念が首をもたげる前にそれを封じて、あとは粛々と彼らに従うことにした。
大急ぎで――主にソリヤが――最低限の荷物をまとめていく。外へ出るための厚い外套をまとい、周りを敵国の騎士に囲まれながらマリアーナは、ソリヤとともに部屋を後にする。
部屋を出る際、マリアーナはついソリヤに視線を止めた。だが瞬時にその意図を察し、ソリヤはきっぱりと首を振ってみせた。
先ほどフラン・アウリーンに『同行してもらう』と言われ、マリアーナが半ば呆然としている間に、ソリヤが『自分も行く』と断言してしまったのだ。
却下されるだろうと思われたが、意外にもフランは『どうぞ』と軽く了承してしまった。
この先のことを考えると決して安全とは言い切れない。むしろ危険しかないだろうと思われる。
本当なら残っていて欲しいと思うマリアーナだったが、その後テキパキと荷物をまとめるソリヤを何度説得しようと試みても、彼女は首を縦に振ってはくれなかった。
結局ソリヤを伴って、マリアーナは城の玄関口から外へ出る。途端、目の前に広がる光景に思わず足を止めた。
前庭に敵国の騎兵が出立の準備を終え、ずらりと並んでいたからだ。
つい恐怖と緊張に身を硬くするマリアーナだったが、玄関を降りた先に止まる馬車と、その傍に立つ人物を目にとめ背筋を伸ばす。
国境を侵犯した父タルヴォを迎え討ち、ここにいる騎士たちの指揮を執ってティフマ城を陥落させた敵将――アルベルト・ルーベンソンの姿がそこにあったからだ。
父親の仇であることには間違いがなく、辺境領の安全を脅かしている人物である。たとえこちらに非があろうとも隙を見せてはいけない相手だ、と思う。
だが、ゆっくりと彼の方へと向かいながら、マリアーナはなぜか動揺を覚えていた。決して顔に出さないよう気を付けながら、あえてアルベルトと視線を合わせないよう馬車の前に止まる。
傍で待機していた騎士の一人が馬車のドアを開けた。乗り込もうとしたマリアーナの前に、何かが差し出されて動きを止める。
見れば男らしいごつい手が、手のひらを上にして差し出されていた。マリアーナの乗車を手助けしようというものらしい。
思わず視線を上げて手の主を――アルベルトを見上げ、すぐに視線を戻す。マリアーナは彼を視界に入れたことを思わず後悔していた。
この男は自分の父親を殺しティフマ城を落とした。のみならず、自国の王子を攫い、その生殺与奪を握っている。危険な敵国の将であるはずなのに――
(温かい、優しい眼差しだなんて、そんな風に感じるわけないわ……何かの間違いよ)
しかし、それを再度確認する勇気を持てずマリアーナはアルベルトから視線を逸らしたまま、彼の手に手を添える。儀礼的にただ手を添えただけであったが、マリアーナが車内へ乗り込むのと同時にアルベルトの手がそれを力強く支える。
その力強さにほんの一瞬既視感を覚えたマリアーナだが、すぐに離れて行ったためその正体を知ることはできなかった。
続いてソリヤも馬車へ乗り込み、すぐにもドアが閉められようとしているのを見てマリアーナは慌てた。
「あの、エーリス殿下は――」
貴人を運ぶような馬車はこの一台しか見当たらなかった。ここにエーリス王子が乗車しないのなら、彼は一体どうやって移動しているのか。
そう不審に思ったマリアーナは、馬車から離れようと背を向けていたアルベルトに咄嗟にそう疑問を投げかけていた。
一瞬の間を置き振り返った彼の表情を見て、マリアーナは思わず息をのむ。
「ご安心を。安全を期して誰にも判らぬようお運び申し上げる」
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