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ペンギンの回り道

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神と少女と魔術師と

不思議は7つで収まらずep3

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「次の七不思議は楽器が独りでに演奏されるってやつだねー」

「この学校で楽器があるのって音楽室くらいだし、移動しなくて済みそう」

 2つ目は夜の学校でピアノの音が鳴り、それを突き止めようと見に行った生徒が見た光景は誰も居ない場所で独りでに動くピアノだった。音楽室で自殺した生徒の未練が残り、夜な夜なピアノを弾いているらしい。

 音楽室に私たちが来てからピアノが動くこともなければ音がなることもなかった。

「先生ー。もしかしてこの不思議の答えも知ってたりしますー?」

 音楽室の動く肖像画の事を知っていた先生に謎の答えを聞く。調査なので答えを聞くのは間違っているのだが、この依頼を出したのが先生なら聞いても問題ないだろう。

「これはわからないですねぇ。ただ、音楽室にはピアノのほかにも電子キーボードとかありましてぇ。それの自動演奏機能が悪さしたんじゃないかとぉ」

 音楽室をぐるりと見回すと、確かにキーボードが置かれている。今はコンセントが刺さっていない。キーボードの種類によっては勝手に鍵盤が動き演奏するものがあるが、このキーボードもその類のものなのだろう。

「そもそもお二方に聞きたいのですがぁ」

「なんですか?」

「この部屋に悪いものの気配しますかぁ?」

 先生に言われて気がついたが、この部屋では変な気配はしない。此方に危害を与えてくるようなものは全く感じないのだ。それに妖怪や霊などがいた場合、私にも愛美にも見える。見えないならばこの場所には居ないと考えられるだろう。

「特にしないですねー」

「私もしないです」

「噂はあくまで噂ですよぉ。尾鰭が付いて怖がらせるために進化していく、思い込みによって無かったはずのものがあるように感じられる。不思議なんていうものはそんなものなんですよぉ」

「それなら尚更、何でこんな依頼をうちに持ってきたんですか?」

 先程は流されてしまった質問をする。依頼書には依頼内容しか書いていなかったため、何故この依頼をするのかを聞かなければならない。 
 社長もゲティさんも、依頼書は簡易なもので受け付けてその後依頼主にちゃんと依頼内容を聞くことにしていた。今回は依頼主が記載されて居なかったため、最初から調査していたが依頼主が目の前にいる今、ちゃんと聞かなければならない。

「それは一緒に調べる人を探してた理由ですかぁ?」 

「そうです」

「まぁ、隠すようなことでもないですしぃ、次の七不思議に向かいながら話しましょうかぁ」




 次の不思議は歩く二宮金次郎像だ。夜になると校庭を二宮金次郎の銅像が歩いているという話。この噂の解明は非常に簡単だった。

「歩く二宮金次郎像って言うけど、うちの学校に無いよね?」

「歩きスマホを連想させるから撤去ってニュースで見た気がするー」

 昨今の歩きスマホ問題。歩きながらスマホを操作している人が事故に遭ったり、人にぶつかったりすることが問題となっている。二宮金次郎像は本を読みながら歩いているためながら歩きをしているとして撤去されてしまった。
 撤去されずに座って勉強している二宮金次郎像やジェットを背負い飛んでいる二宮金次郎など変わったものもあるが、この学校には存在していない。

「大事なのはその内容なのにぃ、魔術師として表層だけをさらって判断するっていうのは如何なことかと思いますねぇ」

「人に限らず見た目等の第一印象っていうのは大切なんですよ。その物の歴史や背景を知らない場合見たものがすべてなんですから」

 暗に明日空先生のことを言っているのだと分かる。レンズが小さい丸メガネを掛けて白衣を羽織っている男など、怪しくて仕方がない。捜索に出てくる怪しい科学者のような形をしている。

 自分のことを言われていると気付いている先生は「いやはや、困りましたねぇ」と全く困っていない口ぶりで呟いていた。こういう細かな仕草も怪しく見えるのだ。

「それじゃどうして一緒に調査する人を探していたのか教えてもらっても良いですか?」

「簡単な話、怖いんですぉ。お化け」

 ゲティさんも幽霊を怖がっていた。魔術師は幽霊を怖がるものなのだろうか。それならば私も幽霊なのだが明日空先生は怖がっている節は見えない。

「嘘ですよね?空穂ちゃんだって幽霊ですし。怖がっていないじゃないですか」

 以心伝心のように私の言いたかったことを伝えてくれる愛美。
 最近は私が近くにいるため、私の考えを話すこともある。私の姿が見えない相手に対して危機感値センサーが働いた時などは、姿が見えない事を利用して愛美に直接教えたりする。
 今後は愛美が見えているものに触ることができるためポルターガイストを起こしてもいいが、愛美の近くにいると心霊現象が起こると噂になっても困る。

「説明が難しいですねぇ。そこにいると分かっているものは事象としてそこに存在している。ただ僕の思うお化けっていうのは居ないはずのものが何故か存在している、その不可解さが怖いんですぉ」

 一応校庭に向かうために私たちは足を進める。足跡は2人分。声は3人分。

「百聞は一見にしかずと言うでしょう?自分の目でまでは恐怖を抱え警戒する、それが僕という魔術師なんですよぉ」

「本当ですか?」

「私は嘘つきませんよぉ。魔術師ですしねぇ」

 社長も言っていたが魔術師は嘘を付くことをしないらしい。嘘を着く魔術師もいるらしいが、その場合はその嘘が魔術を発動するためのルールになっていると言っていた。私にはよく分からないが魔術師は自分の魔術を行使するときにルールを定めている。

「もう1つ理由があるとすれば七不思議の七番目を見てみたいっていう興味でしょうかぁ」


・ 


 校庭が見える位置に付いたが、想像通りそこには何もなかった。月明かりに照らされた校庭には運動部が片付け忘れた道具等も何もなく、陰影が広がっている。

「やっぱり校庭で動いている像なんてないですねー」

「そもそも銅像がうちの学校にはありませんからねぇ」

 誰も居ない校庭を見つめながら話す。そもそも銅像がないため動くものはない。夜の校庭を見ていると吸い込まれそうな気分になってくる。夜の海のような黒にのみ込まれるような、裏世界に繋がるような不気味さを感じる。深夜特有の音も光も少ない空間では精神に影が差す。

「夏前とはいえ少し肌寒くなってきましたねぇ。次の場所はどこですかぁ?」

 愛美はノートを開く。それに合わせて明日空先生が懐中電灯でノートを照らす。言い争いこそ無いが、愛美が突っかかって明日空先生が流すような会話が多いが行動の相性が悪いようには見えない。

「次は理科室ですね。骨格標本が動くみたいですよ」

 理科室は一階にあるためこの場所から移動するには時間がかからない。

「動く骨といえば妖怪が居ますねぇ」

「妖怪ですか?」

 学校の七不思議自体が学校の怪談と呼ばれる妖怪の一種ともいえる。動く骨の妖怪は色々いる。事務所に置かれている本を暇な時に読んでいたから多少は知っている。
 勉強して知識を得ておくことは、裏世界絡みの何かのアクシデントがあった時に冷静な行動や判断に必要だと社長が言っていた。そのため事務所で暇な時は愛美と一緒に読んでいる。
 妖怪関係の本を読んだ時に骨の妖怪は「狂骨」や「骨女」、「がしゃどくろ」などが居たはずだ。がしゃどくろに関しては歌川国芳が描いた「相馬の古内裏」が有名だろう。巨大な骨の妖怪のようなので学校の怪談には似つかわしくないだろう。
 
「そんな物が居たら流石に分かりますからねぇ。流石に窓が空いていて動いているように見えたとかそんなところだと思いますよぉ」

「確認だけして次に行きましょうか」

・ 

 その後、理科室へ移動して確認したが骨格標本は動いていなかった。毎日動くわけではないかも知れないが裏世界の夜の特有の雰囲気が骨格標本からはしないためこれもただの噂だろう。

「問題なさそうですね」

「それでは次に行きましょうかぁ」

 それにしても調査と言って居るが簡単に済ませすぎな気もする。愛美の本来の性格ならしっかり調査せずにその場を離れるようなことはしない。先ほどの校庭の時も少し感じた違和感。何かに急かされているように先に進もうとする。明日空先生もそれに同調するように進んでいく。

「えっとー。もう少しちゃんと調べなくても良いの?」

「大丈夫でしょ。それよりも早く全部調べて帰ろう」

 何かに導かれるように、私たちは進んでいく。
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