マネジメント!

Hiiho

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アイドル×元アイドル 3

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  制作発表の後すぐに撮影スタジオに移動する。

  今日撮るのは、ヒロインを傷付けた兄を弟が殴るというシウとすばる二人だけのシーンだ。

  ドライリハーサルで何度も立ち位置やシウがすばるを殴る角度を調整する。シウが殴った勢いで二人はベッドに共に倒れるという演出が入り、一緒にベッドに倒れたシウをすばるが擽りじゃれ合っている。

  ドラマでは険悪ムードしかない二人が裏ではこんなに仲が良いとなると、そのギャップに悶える女性達が増えると言う事を、プロデューサー達も二人も理解している。
  実際その様子はスタッフの手によってすぐに本日公開のドラマ公式ホームページにアップされている。

  シウとすばるのそんな姿を見てテンションがた落ちなのは、世の中で俺ひとりなのかもしれない。





「マネージャー、今日元気ない?」

  撮影を終え、車に乗り込んですぐに後部座席からシウが声を掛けてくる。

「いいや。いつも通りだ」

  タレントに気を遣わせるくらい落ちてんのか俺。しかもシウは俺より7つも歳下だっていうのに。情けない事この上ない。

「人の心配してないで、家に着くまで少しでも寝てろよ。明日は早朝ロケだぞ」

「はーい。・・・あ、そう言えば社長からメール来てた。おめでとうって、ついでに外泊許可もらったから、すばるのマンション遊びに行ってもいいよね?」

  マジかよ、あんのクソ親父~!前から思ってたけど、シウに甘過ぎるだろ!
  ・・・だけど、俺が反対する権利も無ければ理由も無い。

「仕事に差し支えなければいい。けど送迎は俺がする。不謹慎な行動も禁止だぞ」

「そんなのするわけないし。マネが迎えに来るまでマンションから一歩も出ないようにしてればいいんでしょ?」

「・・・そうだ」

  それが一番心配なんだっつーに・・・。シウが考える不謹慎な行動の中に、コキ合いが入っている事を願うばかりだ。

「じゃあすばるにメッセージ入れておこー」

  スマホを取り出して両手で操作するシウ。
  暫く画面を見詰めている。

「明日って俺、夜、空いてるよね?」

「22時まで日本語のレッスンが入ってる」

  明後日のドラマ撮影の入りが6時だから空いていると言えば空いている。

「じゃあその後、すばるのマンションまで送って」

「・・・了解」

  と答えるしかない。すばるを日本のヒョンだと慕うシウを、唯のマネージャーである俺が縛りつける権限なんて無い。

  けれど・・・

「シウにとって、俺って・・・」

「マネージャーでしょ。俺のお世話係」

  どうしても聞かずにいられなくて速攻で返ってきた予想通りの答えに、ブレーキを踏む足に力が入る。

「それ以上にどう思ったらいい?」

  バックミラー越しに目が合ったシウは視線を逸らした後、不機嫌そうに窓の外を見た。

  『どう思ったらいい』か・・・俺はどう思われたいんだ。どう答えて欲しかった?

  一度キスして数回体を触っただけ、それなのに過去に抱いた誰よりもこいつに心を奪われてる。
  湊にさえ感じた事の無い独占欲がシウを求めて、行き場もなく体中を彷徨っている。

  だから何だ。
  俺を好きになれと言える筈もないし、言うつもりもない。形だけとはいえ妻がいる俺が言えるセリフでもない。


「あーそうだ、バディでもある。・・・湊さんには負けてるけど。・・・・・・少し寝る」

  シウは窓の方に顔を向けたまま、シートに寄りかかり目を閉じた。

  湊に負けてる?この前の『お詫び』を途中で止めた事を根に持ってんのか?こいつ意外と執念深いところあるよな。

  でもどうせ、明日すばると・・・日本のヒョンだもんな。無自覚エロを発揮してくるんだろ・・・。はあ・・・行かせたくない。





  20分程でマンションへ着き、後部座席で眠るシウに声を掛けるが反応が無い。
  仕方なく後ろのドアを開けてシウの肩を揺すった。

「オイ、着いたぞ。起きろ」

「うー・・・うん・・・」

  頼りない返事だけで、シウが動く気配はまるで無い。

「しょうがねーな」

  俺は、シウが座っているシートを少し倒し、隣に座ってタブレットPCで事務所からのメールを開く。

  制作発表を見た企業からのCM依頼やテレビ局からの番組出演依頼が山ほど来ているらしい。
  どの依頼を受けるか、目を通すだけでも骨が折れそうだ。

  何気なく眠るシウを見る。
  透き通る白肌に長い睫毛、高い鼻、程よい厚みで艶のある唇。こんなに美しいと思う人間を、シウの他に見たことが無い。俺のどストライクの顔立ちっていうのもあるけど。

  シウの唇に自分のそれが自然と近付く。

「・・・ばんり」

「え・・・」

  寝ているはずのシウにぎゅっと頭を抱えられ、唇が重なる。

  角度を変えながら重なり続ける柔らかい感触に、俺の思考は停止寸前で何とか状況を理解しようと働き出す。

  違う、俺じゃない。シウからのキスだ。しかも「ばんり」って呼ばなかったか?え、何が起こってる?

「シ・・・」

「黙ってよ。おしゃべりするくらいなら、俺と浮気してて」

  それは、シウとキスしてろって意味なのか?
  俺の気持ちをわかってて言ってんのか?俺がどんな奴か知っててやってんのか?

  きつく唇を閉じたままの俺とのキスを諦めたのか、シウの唇が離れ揺れるシアン色の瞳に見詰められる。

「ねえ、マネージャーの事・・・好きになってもいい?」

  ・・・・・・・・・え!?
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