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Hiiho

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スキャンダル童貞 3

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「だーかーらぁー、ばんりはぁ、あんな顔してるけどぉ、スパダリなんですよぅ」

  飲み始めて1時間。まだアルコールに免疫がない俺は、いい感じにフワフワ気分を味わいながら大好きな万里のことを金子さんにひたすら話していた。

「あーわかったわかった!・・・・・・ダーリン様の自慢はもう腹いっぱいだから、シウと河森がいつもどんな風にラブい事してんのか教えてくれよ!」

「えー・・・」

  なんだよ。もっと万里のカッコイイとこ いっぱい知って欲しいのに。もっともっと自慢したいのに~!

「あのさ、河森が料理得意だとかキレイ好きだとか、そんなんはっきり言ってどうでもいいんだよね。それ聞いて俺『キャー!ステキー!』とかなんないしさ」

  えっ、そうなの? そういうもんなの?

「でもぉ、恋人が自分のために色々してくれるのってぇ、こー・・・きゅんきゅんどきどきってするじゃないですかぁ」

  万里が作ってくれるゴハンも、綺麗に畳んでくれる服も・・・俺のためにやってくれてるんだって改めて考えると、すごく幸せな気持ちになる。

「俺が聞きたいのはそういうキュンドキじゃないんだよね。わかんねーかな」

  テーブルの向こうに座っていた金子さんが、俺の隣の席に移動してきてぎゅっと手を握ってくる。

「俺達、結構濃いラブシーンしたじゃん?」

「はい」

  急になんだ?まさか、金子さん また俺のこと抱くとか言い出すんじゃ?

  せっかく仲良くなれたのに、ああいうの嫌だな・・・

「シウ、あの時に貞操具つけてたのってもしかして、河森に言われたからなんだろ?」

「・・・ていそうぐ・・・」

  ああ!そういえば金子さん、撮影の時 絶対気付いてたよな。

「あれはぁ、言われたんじゃなくって、万里が勝手に俺のに嵌めただけですよぉ」

「ふぉっ!?・・・河森マジか。マジか河森ぃぃぃぃ!こんな純粋そうなシウになんて事すんだよ!いいぞもっとやれ!」

  自分でテーブルに額を打ち付けて、興奮状態の金子さん。・・・どうしちゃったの、ちょっと怖い。

「火ついてるから危ないですよー。髪燃えちゃいます」

  ロースターテーブルの火で金子さんの髪が燃えてしまわないように、テーブルに突っ伏した彼の頭をそっと起こす。

「河森ってば、俺との濡れ場に嫉妬して、シウにそんな過激なことやらせんの?えーえー、ガチ中のガチじゃんそんなもん。ああ~!あん時そのエピソード知ってたら、萌えまくったのにな~。それに、あんな目に合わなくて済んだのにな、俺・・・」

「あんな目?」

「なな何でもないよ!俺のことはいいって!・・・それより、俺が求めてんのはそーゆー話だよ。そーゆーのもっとちょうだい」

「あー、またはぐらかす」

「で、で、やっぱ楽屋とかでヤッちゃったりしてんの?」

  金子さんの表情が期待に満ち満ちている。

  俺と万里の情事にそんなに興味あるの?男同士なのに、おかしいって思わないの?

  金子さんと話してると、万里との関係もごく普通の恋愛なんだって思えてくる。変な人だけど、すごくいい人だ。

「楽屋で・・・俺はしたかったけどぉ、万里は最後までしてくれなくって・・・」

  あれ、何こんな話までしちゃってるんだろう。酔っ払い過ぎだな、俺。

「くぅぅぅ!おあずけ的な!? 河森Sっぽいもんな・・・あー滾るわ・・・イジメられてるシウとか!最高じゃん河シウ!」


  興奮を抑えられないといった金子さんは、物凄い力で抱きついてくる。

「ちょぉっ、痛いですよぉもー。なんでそんなテンション上がってるんですかぁ」

「酔っ払って気怠そうなシウも最高だけど、コレ見て理性とか飛んじゃう河森を俺は切望するぞ!」

  俺を抱きしめたまま涙を流す金子さん。

  意味わかんない。



  カタン と個室の外で音がして、金子さんもそれに気付いたようで、パッと素早く俺から離れて向かいの席へと戻る。

「・・・もっちー?」

  金子さんが引き戸越しに声を掛けるけど、何の反応も返って来ない。

  誰もいない?気の所為だったのかな。


  と その時、個室の戸がスッと引かれて

「お疲れ・・・」

  少しだけ疲れた顔をした万里が入ってくる。

「万里!もぉ!いるなら返事くらいしろよぉ。趣味悪いぞ」

「は?今来たとこだっつーの。それよりシウ、結構酔ってるみてぇだけど・・・なんもなかったんだろうな」

  万里が金子さんの方をチラリと見る。

  ねえ、それって、俺を心配してくれてたんだよね?予定よりも早く来てくれたし・・・。


「やっべぇ!河森ジェラってんの!やばやばっ、かっわいーじゃん。あー推せるわ・・・」

  片手を胸に当てて、キャーキャーと身悶えている金子さん。

  ほんと今日どうしちゃったんだ、この人。


「万里、ごめん。金子さんに言っちゃったぁ」

  正直に言うと、大きく溜息を吐いた万里に肩を引き寄せられ、俺は彼の腕の中に閉じ込められた。

「言っちゃったんならもう隠すことねえよな。ヒロムは油断できないから、シウは俺のもんだって見せつけとく」

  万里の腕に ぎゅー っと力が入って、痛いくらいの拘束感とアルコールでいつもより大きく脈打つ心臓。

  嬉しい。金子さんしかいないけど、人前で堂々と万里が抱きしめてくれる。


  万里、だいすき。



  金子さんはその後ずっと万里と俺を手を組んで祈るように見ていたり、口元を両手で覆って乙女チックになったり、時々『尊い』だとか『エモい』だとかよくわからない言葉を並べたりしていた。

  だけど倉持さんが合流した途端に急に静かになって・・・今日の金子さんは、なんだか変な人に磨きがかかったみたいだった。



  俺は浮かれていた。ほんの少しだけでも、万里との関係が前進した気がしていた。

  これから起ころうとしている事も知らずに。




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