マネジメント!

Hiiho

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甘くてあまい 3

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  その日の夜


  俺は、今日から煩悩を断つ!


  万里とベッドに並んで、ミイラのように胸の上で腕を組んで瞼を閉じる。

「・・・どうした? 腹でも痛いのか?」

  万里は心配そうに俺の様子を窺ってくる。

  いつもなら暑苦しいくらいに万里に抱きつく俺だけど、もうそんな事しない。
  だって、くっついちゃったら万里に触って欲しくなって、挿れて欲しくなって「してして」って強請って・・・とにかくえっちな気分になってしまうから。

「ベッド、男2人でダブルはやっぱり小さいか?おまえ寝相悪いしな。今度買う時はキングサイズだな」

「えっ? 別にこのままでいい!部屋狭くなんの嫌だし」

  寝相は悪くてもベッドから落ちた事が無いのが自慢の俺は、キングサイズにしちゃったらきっと万里からかけ離れたベッドの端まで移動してしまう。

  触れなくてもくっつけなくても、万里から離れるのは嫌だ。

「ならなんでそんな寝方すんだよ」

「・・・えとね、・・・精神統一!」

「ふーん」

  数秒間の沈黙の後、万里が、ミイラスタイルの俺を横からぎゅっと抱きしめてくる。

「なっ?なになになにっ?」

  やめろよぉ!せっかく俺が、湧き上がりそうなスケベ心を鎮めようとしてんのに~!

「俺の体温無くても寝れんの?」

  万里の、体温・・・。
  何その、誘ってるみたいな言い方。なんか期待しちゃう・・・

  ってちっがーう!!

  万里はただ率直な疑問を口にしただけで、決して「俺の体温が欲しいんだろ?」とか「俺の肌であっためてやろうか?」っていうそういう意味を含めてるんじゃないから!

  俺は、万里に好きっていっぱい言って欲しい。セックス中だって、「かわいい」じゃなくて「好き」がいい。

  だから、自分から求めるイヤらしい俺じゃなくて、万里に求められる俺になるんだ。

「ねっねっ寝れますっ、寝れるから!まじで精神鍛えてるだけだからっ」

「そか。俺はソファで寝た方がいいか?」

「それはやだっ、一緒に寝る!」

「だったらいつもみたいに抱きついて来いよ。俺はシウの体温が無きゃ寝れない」

  俺の肩に、甘えるように額をくっつけてくる万里。


  そういうの、狡い。

  万里が可愛くて仕方なくなっちゃう。愛しくて離れたくなくて、ずっと触れていたくなる。

  やっぱり俺が淡白な方が、万里は優しい。ついでにめちゃくちゃカワイイ。

「万里、だいすき」

  万里の頭を抱えるようにしてぎゅっと抱きつくと、背中を大きな手で包むように抱き締め返してくれる。

「俺もいつもそう思ってる」


  いつも? イヤらしい俺の事も好きでいてくれてる?


  聞くのが怖い。だけど今なら・・・

「ばんり・・・・・・えっちいおれ・・・ダメ、かな」

「・・・は?」

「俺、万里に触ったり触られたりしたら、どうしても・・・その・・・したくなっちゃって・・・」

  今も。万里の腹部に密着している下半身が疼き出しそうなのを必死で我慢してる。

「でも万里は、すぐに求めちゃう俺の事・・・好きじゃないんだろ」

  はあ、と万里は深い溜息。

  やっぱりそうなんだ。我慢して淡白に徹するのが最善策だったんだ。
  聞かなきゃよかった。


「・・・こうしてる今も、俺が欲しい、って思ってんのか?」

  そうだよ。欲しくて堪らない。でも、万里に嫌われたくない。

「いらないっ。思ってない! もう寝る!」

  落とした瞼の裏が熱くなる。


「いらねぇの? 残念。そうなると、俺が求めるしかなくなるんだけど」

「え・・・」

  パジャマの裾から入って来た万里の手が背骨のラインを滑り上がる。

「・・・っ」

「シウを大事にしたい。もちろんシウの体も。でもな、もし俺が欲しいだけ抱いたら、おまえを壊さない自信が無い」

  背中を撫でられながら、ボトムの中に差し込まれたもう片方の手に仙骨から尾骨にかけてを何度もなぞられて、不可抗力で反応してしまう中心。

「シウが求めてくれるから、俺は半分くらいは欲求不満を解消出来てたのに」
  
「はん、ぶ・・・ん?」

「エロいシウが見れないなら、俺が無理矢理にでも引き出すけど、いいのか?」

  え、え、どういうこと?
  それって、えろい俺を見たいってことなの?

  時々、日本語の難しさを痛感する時がある。『はい』か『いいえ』どちらかしか無ければ わかり易いのに・・・


「時間切れ。シウは俺が欲しい、俺もシウが欲しい。シウが求めて来ないなら、俺が求めるだけだ」


  ばっ と布団を剥いで、万里が覆い被さって深いキスで唇を塞がれる。

「ぅ・・・、んっ、んぅっ、待っ・・・っ」

  息もできないくらい激しくて「待って」のひとことすら言わせて貰えない。

「もっと、って言わねぇの?」

「はぁっ、は・・・だっ、てぇ」

  いつもと違う。焦れったくてもどかしい意地悪じゃない。
  なのにやっぱり意地悪なのに変わりはなくて

「えっちな俺が嫌だからいじめるの?」

「は? おまえなぁ・・・ホント鈍感」

  俺が、鈍感!? そんな訳ない! こと万里に関しては敏感すぎるくらい敏感なのに!

「俺に欲情して求めてくるシウも、快感でメロメロになってるシウも、震えて泣いてるシウも。エロくて可愛いシウを全部見たいから虐めてんの。わかんねぇ?」

「わかんないよっ。だって最近セックスの時好きって言わないじゃん!」

「好きだよ」

  え・・・っ?

「好きだ」

  囁きながら耳元に唇を寄せてくる万里。

「シウ、好きだよ」

  ゾク と甘い痺れが項から首筋に走る。

「シウが望むなら、何度でも言ってやる。その代わり、ちゃんと全部受け止めろよ。・・・今朝、俺がつけたキスマーク、見せて」

  キスマーク・・・。

  思い出して恥ずかしくなって、体中の血が沸騰したみたいに熱くなる。

「顔真っ赤。ぶん殴りたいくらい可愛いな、シウ」

  また「可愛い」だ。

  だけどわかった。

  さっき俺が万里を「カワイイ」って思ったのは、大好きで愛おしくて堪らなくなったからで、きっと万里も同じように思ってくれてるんだってこと。






  それから万里は抱き合っている間ずっと「好き」と言い続けて、その度に条件反射で甘い甘い痺れに脳ミソと体を襲われる俺。

  いつもより感じて、昨夜も体を酷使したのが祟って、途中からの事はほとんど覚えてない。


  朝、目覚めて覚えていたのは、ひたすらに甘ったるく繰り返す万里の「好き」と、囁かれる度に逃げた出したくなるほど ひどく感じてしまった事だけだった。

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