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兄×弟=混ぜるな危険 2
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「もしも架の性癖に兄貴が起因してるとしたら、昨日のは俺じゃなくて、兄貴にしてもらった方がよかった?」
「そんなわけねぇだろ!俺は、一玖だから・・・っ」
顔を真っ赤にして一玖を睨む架。それを見て、一玖の胸が高揚する。
俺だから、なに? 言いなよ。俺に友達以上の好意があるんだって。
架が何の影響を受けてどんな風に生きてきたか、なんて大きな問題じゃない。
俺を求めてるかどうかが重要だ。
「俺で良ければ、架の力になりたいって思ってるよ。それとも幼馴染みの市太さんの方がいい?」
「いち、には・・・言えない。どう思われるか こえーし」
「俺に任せてみてくれないかな? 頼りないかもしれないけど、架よりはそういう経験あると思うし」
「え・・・うん」
架の表情が少し緩む。
嬉しそうな顔しちゃって、ホント単純だね、架。俺が、あんな可愛い架を兄貴にも市太さんにも譲る訳ないじゃん。
一玖はわかっていた。架が今頼れるのは自分しかいない、と。
そして実際、自分を肯定してくれる一玖に惹かれた架にとっては願ってもない事だった。
朝食を終え、スタッフ用のユニフォームに着替えた二人は1階のリネン室で女将のえみから仕事内容の説明を受ける。
「いっくんと架くんはお客様が退室なさった後のお部屋のシーツ、浴衣、タオル、マットの回収ね。その後で他のスタッフがお布団のクリーニングと清掃に入るから。あ、連泊のお客様のお部屋のリストがコレ、担当者がいるからそこは飛ばしていいわ。単純な作業だけど、結構体力いるしスピード命だからね、頑張って!」
移動式の大型ランドリーバスケットを一玖の前に出し、リネン室を出て行くえみ。
一玖と架はエレベーターで上階へ上がり、早朝に空いてしまった客室を順番にまわる。一通り回収を終えると、次は10時、12時と順に空室になった部屋のリネンの回収。遅めの昼食を摂り、休む暇も無く新しいシーツやタオル等を客室へ運び入れる。
15時までには次の客を迎え入れる事ができるように客室をリセットして、回収した客用リネン類とスタッフ達の使用済みのユニフォームをクリーニング業者に預け、一玖と架の一日の仕事が終わる。
「お疲れさまぁ!いっくん達のおかげで客室清掃のスタッフさん達、すごく助かったって言ってたわ。疲れたでしょ?夕飯はお客様の後になるから、それまで自由時間よ」
「やった~!架、温泉街散歩してみる?」
「・・・イヤ、俺いいわ。ちょっと休む。一玖行ってこいよ、地元だろ?」
えみから自由時間と聞き、テンションが上がる一玖とは逆に、初めてのアルバイトに疲れ果てている架。
「架が行かなきゃつまんないよ。だったら俺も休むし。こっちにいる間に行ければいいからさ」
架に合わせて最上階の客室へ戻る。
部屋に入るなり、架は畳の上に寝転がる。それを見た一玖は、備え付けの小さな冷蔵庫の中からスポーツドリンクのペットボトルを2本出し、一枚板の座卓の上に置く。
「架、匂い大丈夫だった?」
一玖に聞かれて、架は ハッとする。
そういえば平気だった。いつもなら他人が使った後の寝具の匂いなんて絶対に耐えられないはずなのに。
このフロアとは違う匂いの別フロアも違和感が無かった。
俺の中で何かが変わり始めてる。
もしかして、自分を解放できたことが関係してる・・・?
「一玖の、おかげかも」
「俺の?」
「うん。俺、今までオナニーもできなくて、そういう事を汚いって思ってた。彼女が欲しいって思ったりもしたけど、体質のせいで無理だって思ってたし・・・いちが傍にいてくれればいいって」
寝そべる架の横に腰を下ろし、架の顔にかかる茶色い髪を耳に掛けてやる一玖。
そんなことで架の心臓は大きく跳ねる。
「世界が俺を拒否してるんだ、って思ってたけど、ホントは拒否されるのが怖くて・・・自分から無意識に遠ざけてたんじゃないかって。でも一玖が、『汚くない』って言ってくれた」
「うん」
「初めて誰かを・・・」
一玖を好きになって、俺を受け入れてくれたのが嬉しくて、周りの事なんか気にもなんなくて。一玖しかいない、って思った。
そう言ってしまいたかったが、市太が一玖を想っていると思い込んでいる架は慎重に言葉を選ぶ。
「誰かに肯定されたかっただけかもしれない。一玖が友達になってくれてホント良かったよ。ありがとな」
それを聞いて、一玖の心に影が落ちる。
『友達』・・・ね。
架が俺に惹かれてるのは、単純に見て取れる。それでも簡単に認めないのは、市太さんに遠慮してるからだ。
架にはもっと強いショックを与えなきゃ。素直に俺を好きだって言えるような・・・
「架、お腹空いてない?お昼もあんまし食べてなかったしさ。俺、下でなんか買ってくるよ」
「ありがと・・・、ちょっと寝てていい?」
「いいよ」
瞳を閉じた架を確認して、一玖は部屋を出る。
浅い眠りの中、架は鼻先に漂うムスクの香りに眉を顰める。
これ・・・この匂い、支配人の・・・
途端に呼吸が乱れ、体の芯が熱くなる。
ムスクだけならこんな風にならないのに、この白檀の匂いと混ざると、どうしても体が反応してしまう。
どうしようもなく自分を汚して欲しくなって・・・
体の熱さに堪えきれず、架は薄目を開ける。
「ぁ・・・、いっ、く・・・?」
目の前には自分と同じように横たわる一玖の寝顔があった。
どうして、一玖からこの匂いが?
好きだと自覚してしまった一玖が、自分の性癖の根源となった匂いを纏っている。
それだけなのに架の中心は痛いくらいに勃起し、無意識にそこへと手を伸ばす。
「そんなわけねぇだろ!俺は、一玖だから・・・っ」
顔を真っ赤にして一玖を睨む架。それを見て、一玖の胸が高揚する。
俺だから、なに? 言いなよ。俺に友達以上の好意があるんだって。
架が何の影響を受けてどんな風に生きてきたか、なんて大きな問題じゃない。
俺を求めてるかどうかが重要だ。
「俺で良ければ、架の力になりたいって思ってるよ。それとも幼馴染みの市太さんの方がいい?」
「いち、には・・・言えない。どう思われるか こえーし」
「俺に任せてみてくれないかな? 頼りないかもしれないけど、架よりはそういう経験あると思うし」
「え・・・うん」
架の表情が少し緩む。
嬉しそうな顔しちゃって、ホント単純だね、架。俺が、あんな可愛い架を兄貴にも市太さんにも譲る訳ないじゃん。
一玖はわかっていた。架が今頼れるのは自分しかいない、と。
そして実際、自分を肯定してくれる一玖に惹かれた架にとっては願ってもない事だった。
朝食を終え、スタッフ用のユニフォームに着替えた二人は1階のリネン室で女将のえみから仕事内容の説明を受ける。
「いっくんと架くんはお客様が退室なさった後のお部屋のシーツ、浴衣、タオル、マットの回収ね。その後で他のスタッフがお布団のクリーニングと清掃に入るから。あ、連泊のお客様のお部屋のリストがコレ、担当者がいるからそこは飛ばしていいわ。単純な作業だけど、結構体力いるしスピード命だからね、頑張って!」
移動式の大型ランドリーバスケットを一玖の前に出し、リネン室を出て行くえみ。
一玖と架はエレベーターで上階へ上がり、早朝に空いてしまった客室を順番にまわる。一通り回収を終えると、次は10時、12時と順に空室になった部屋のリネンの回収。遅めの昼食を摂り、休む暇も無く新しいシーツやタオル等を客室へ運び入れる。
15時までには次の客を迎え入れる事ができるように客室をリセットして、回収した客用リネン類とスタッフ達の使用済みのユニフォームをクリーニング業者に預け、一玖と架の一日の仕事が終わる。
「お疲れさまぁ!いっくん達のおかげで客室清掃のスタッフさん達、すごく助かったって言ってたわ。疲れたでしょ?夕飯はお客様の後になるから、それまで自由時間よ」
「やった~!架、温泉街散歩してみる?」
「・・・イヤ、俺いいわ。ちょっと休む。一玖行ってこいよ、地元だろ?」
えみから自由時間と聞き、テンションが上がる一玖とは逆に、初めてのアルバイトに疲れ果てている架。
「架が行かなきゃつまんないよ。だったら俺も休むし。こっちにいる間に行ければいいからさ」
架に合わせて最上階の客室へ戻る。
部屋に入るなり、架は畳の上に寝転がる。それを見た一玖は、備え付けの小さな冷蔵庫の中からスポーツドリンクのペットボトルを2本出し、一枚板の座卓の上に置く。
「架、匂い大丈夫だった?」
一玖に聞かれて、架は ハッとする。
そういえば平気だった。いつもなら他人が使った後の寝具の匂いなんて絶対に耐えられないはずなのに。
このフロアとは違う匂いの別フロアも違和感が無かった。
俺の中で何かが変わり始めてる。
もしかして、自分を解放できたことが関係してる・・・?
「一玖の、おかげかも」
「俺の?」
「うん。俺、今までオナニーもできなくて、そういう事を汚いって思ってた。彼女が欲しいって思ったりもしたけど、体質のせいで無理だって思ってたし・・・いちが傍にいてくれればいいって」
寝そべる架の横に腰を下ろし、架の顔にかかる茶色い髪を耳に掛けてやる一玖。
そんなことで架の心臓は大きく跳ねる。
「世界が俺を拒否してるんだ、って思ってたけど、ホントは拒否されるのが怖くて・・・自分から無意識に遠ざけてたんじゃないかって。でも一玖が、『汚くない』って言ってくれた」
「うん」
「初めて誰かを・・・」
一玖を好きになって、俺を受け入れてくれたのが嬉しくて、周りの事なんか気にもなんなくて。一玖しかいない、って思った。
そう言ってしまいたかったが、市太が一玖を想っていると思い込んでいる架は慎重に言葉を選ぶ。
「誰かに肯定されたかっただけかもしれない。一玖が友達になってくれてホント良かったよ。ありがとな」
それを聞いて、一玖の心に影が落ちる。
『友達』・・・ね。
架が俺に惹かれてるのは、単純に見て取れる。それでも簡単に認めないのは、市太さんに遠慮してるからだ。
架にはもっと強いショックを与えなきゃ。素直に俺を好きだって言えるような・・・
「架、お腹空いてない?お昼もあんまし食べてなかったしさ。俺、下でなんか買ってくるよ」
「ありがと・・・、ちょっと寝てていい?」
「いいよ」
瞳を閉じた架を確認して、一玖は部屋を出る。
浅い眠りの中、架は鼻先に漂うムスクの香りに眉を顰める。
これ・・・この匂い、支配人の・・・
途端に呼吸が乱れ、体の芯が熱くなる。
ムスクだけならこんな風にならないのに、この白檀の匂いと混ざると、どうしても体が反応してしまう。
どうしようもなく自分を汚して欲しくなって・・・
体の熱さに堪えきれず、架は薄目を開ける。
「ぁ・・・、いっ、く・・・?」
目の前には自分と同じように横たわる一玖の寝顔があった。
どうして、一玖からこの匂いが?
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