貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご

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最初は何だったかしら……。
そうそう、あれは婚約して間もなくだったわ。
婚約の証としてアクセサリーを贈りたいと仰って…私は一応忙しければ無理なさらずにとか言った気もするけれど、あの男はその位の時間はあると言って一緒に宝石店へ出掛ける約束をして………そして当日に行けなくなったからと迎えに来てくれた彼の家の御者がそう言って、一人で宝石店まで送って貰って……………………結局私は何も買わずに……店にも入らずに帰ったのだった。
その後どんな物を買ったのかなんて聞かれる事も無く…政略結婚なんてこんなものかと思ったのだったわ。
でも確かその時も思ったのよね……出来ない約束ならしないで欲しいって。


ふっと意識が浮上する。どうやら寝てしまっていたらしい。
昼食を食べた後、執務室で領地の報告を受けてその後一段落付いた所で休憩にソファーに移動して…。
「うとうとしてしまったみたい…」
一つ伸びをして窓から園庭を眺めるとアレクシスが使用人達と共にワイワイと何かしていた。
そんな光景を眺めていると背後の扉からノックの音が聞こえる。
「どうぞ」
カチャ
「失礼致します」
そう言って入って来たのはこの家の執事であるリチャード。
「ごめんさいね、寝てしまったみたいで」
「いえ、大丈夫です。お疲れのようですので起こさずにいたのですから」
「そう?ありがとう」
「お疲れの所申し訳ありませんが、こちらの書類の方だけ目を通して頂けますでしょうか」
それは領地から上がって来た報告書。
夫は城に出仕する文官。ちゃんと職もあり収入も有るけれどこの領地は結婚の祝いとして私の両親が夫にくれたもの。
夫も普段から仕事が忙しいと言っているので管理が大変だから構わないと言った私に母は持っていて困る物でも無いから貰っておきなさいと言った。
頂いた領地は気候もよくそこそこの特産品もあり管理しやすい場所でお陰で夫の稼ぎに頼らなくても生活出来る位には収入がある。
本当に結婚祝いとして良い物を下さった両親には感謝しかない。
書類を確認しながら私はリチャードに尋ねる。
「アレクシスは何をしているの?」
「アレクシス様は奥様がお好きな花で庭に花壇をお造りになっておられます。奥様の執務室から見える所に花壇があれば少しでもお心の癒しになるだろうと」
「……そう、そうなの」
「良かったですね。アレクシス様はお心のお優しいお子様ですよ」
「そうね、とても優しい子だわ。父親がいない同然で育っても周りにいい使用人が沢山いるから…」
「奥様にそう言って頂けると働いている皆涙して喜ぶ事でしょう」
執事の少し大袈裟なその物言いに少し笑ってしまった。

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