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「夢見の力・・・」
殿下がそう呟くのはお兄様が私の見た夢の事を話したから。
「そう、私はそう思っている」
えーっと私はその考え初めて聞きました…。
「お兄様…」
私は困惑顔でお兄様を見る。
「ふっ大丈夫だよ。悪いようにはしないよ」
そう言ってお兄様は微笑みながら頭を撫でてくれる。

お兄様はそう言ったけれど…夢見の力と言えばその力は聖女のそれと並ぶ程のもの。
光の魔法を使う聖女が現れなかった時代には夢見の力を持つ者が聖女と呼ばれていた事もある。
まさか自分の見るあの夢がそんな事になるとは思わなかった。
「ですが…あの夢は、その私の事だけですし…そんな夢見の力というようなものでは…」
「そうだね。でも…現実に酷似している。それはエミリアにも分かっているだろう?」
「…はい」
「一応調べる。その位に思っておけばいいよ。もしエミリアのこれが夢見の力だとして…私はそれを公表するつもりは無いよ」
お兄様は殿下の方を見る。殿下は困ったような顔をしていた。
それはそうね、今代の聖女に成りうるティアラさんが今あのように闇に魅入られている。私の夢が本当に夢見の力なら…王家は何としても手に入れたいはず。
「お前はエミリアが聖女になり得るから手に入れたいのか?」
お兄様が殿下に問う。
「違う!私はずっとエミリアだけが好きなんだ!そんな力なんてなくても私は!」
「そうか、それが聞けたらいい」
お兄様は私の嬉しい気持ちを代弁するように穏やかに微笑んだ。
「先の事はどうなるかは分からない…だがお前のその言葉を聞けたらそれでいい。まあまだお前とエミリアが結婚出来るか分からんしな」
「はっ?どういう事だ結婚出来るか分からないって!何でそんな事を」
「まあまあ、あくまで予定は未定と言うだけだ。気にするな」 
「いや、気にするだろ!」
目の前でじゃれ合う2人をいつまでも見ていたかったが今後の事を話さないと…。
「殿下、お兄様。そろそろいい加減にして下さい。仲が良いのは知っていますが次の話を致しましょう」
私が冷静にそう言うと2人はポカンとコチラを見た後気まずそうに「すみません」と謝った。




学園に行くといつものように殿下とティアラさんが一緒にいた。
私も殿下も…今はグレン様だけど、普段通りに過ごす。
だけど…一つだけ普段と違う事それは…これから私が悪役令嬢になるという事。
「ティアラさんいい加減私の婚約者の殿下にベタベタするのをやめて頂けます?」
高圧的にベンチに座る2人を見下ろしながら私はそう言った。


慣れない事は心臓に悪い。
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