私は魔物と人間の間で揺れ動いているが実は結構な感じの女神だったらしい(多分)

きんのたまご

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ここは深い森の奥。
魔物が住むと言われている。
人が寄り付かないそんな森に私は物心ついた時から1人で暮らしている。
勿論両親の顔も知らない。他の人にも会った事も無い。
そんな私がどうやって1人で暮らして来れたかと言うと……


コンコンコン。ノックが聞こえる。
「はーい」
私は扉を開ける。するとそこにいるのは小さな羽をはためかせ大きな耳にギョロっとした1つ目のまぁるい魔物。
「あら、モーリー。今日はどうしたの?」
『ママがティアに持って行けって』
そう言ってカゴいっぱいの林檎を差し出してきた。
「ありがとう。あっそうだちょっと待ってね」
私はそう言って家の中へ
「お待たせ!これ私が作ったクッキー。良かったら食べて」
とお返しにカゴいっぱいのクッキーを渡す。
『ティアありがと』
嬉しそうにそれを受け取りモーリーはこの森の更に奥へと帰って行った。
私はそれを手を振って見送ると再び家の中へ戻った。


私は気が付けば森の中で1人だったそして当たり前のようにこの世界で魔物と呼ばれるものと話が出来た。
生活の仕方はみんな魔物達が教えてくれた。
人間はこうして暮らすのだと。料理をしたり、掃除したり、洗濯したり。
お風呂に入る事も教えてもらったなぁ。
物心ついた時は私も魔物だと思っていたのだがそれは違うと教えてくれたのも魔物だった。
生憎ここには鏡?がない。鏡とは自分の姿が写る物らしい。これも教えてもらった。
『窓のガラスに映っているのがティアだよ』
と言われ見てみたら確かに魔物とは違うようだ。私のような容姿の者を人間と言うらしい。
だから私は当たり前のように人間と魔物は意思の疎通が出来て仲が良いのだろうと思っていたのだが、この森に迷い込んだ人間?がモーリー達を見て凄い顔をして逃げて行くので、そうじゃないんだと悟った。
みんな私に優しくしてくれるのに何でモーリー達を見て逃げるのかとモーリーのおかあさんに聞くと私以外の人間に魔物の言葉は通じないらしい。
ふーん。ってことは私も魔物なんじゃ?と思ってもやっぱり人間らしかった。どちらにしても魔物とこうして意志疎通が出来る私もまた普通の?人間では無いのだろう。もしかしたら人形の魔物なのかも!うんそうだ!そうに違いない!私は部屋の中1人で納得するのだった。
すると
コンコンコン
次は凄く小さいノック。
「今日はお客様が多いわ。……はーい」
私は扉を開ける、するとそこには誰もいない。
「?あら?」
おかしいなぁ。と首を傾げつつ扉を閉めようとすると
《ティア》
と、とても小さな声。下を見ると白いモコモコが。
「ジル!」
ジルは白兎のお爺さん。もうかれこれ200年くらいこの森に住んでいるらしくジルにも色んな事を教えられた。
何を隠そうジルがこの森の長なのだ。
そうそう、私は動物とも話が出来る。
やっぱりこうなると"私人間説" ますます怪しいなぁ。
とそんな事を考えていると
《お邪魔するよ》
とピョンと部屋の中に入ってきた。
「どうぞ」
私はジルを部屋に入れる。
「今回の旅はどうだった?」
ジルは長く生きているのでずっとこの森にいると退屈らしくしばしば旅に出る。森を抜けて人間の馬車?とかにこっそり乗ったりするらしい。
え~っと、今回は一年位かな?
いつも旅のお土産物と一緒に土産話を聞かせてくれる。とっても物知りだ。
《う~ん。今回も有意義な旅だったわい》
「そっか。今回はどこの国に?」
私は一枚の紙を机の上に広げる。
それは書きかけの地図?
私はジルの話にそってジルが行った国の場所を書き記している。
因みにこれはジルにするように言われた事だ。
《今回は前回行った国のもう1つ向こうに行ってきた。そこには海と呼ばれる大きな水溜まりがあってそこから魚と呼ばれる物を捕り人間は生活していた。活気のあるとても綺麗な国だったわい》
とその国の事を思い出すジルはとても楽しそうだった。
「そっかぁ、いつか私もジルと一緒に行ってみたいな」
《……そうじゃな。いつかな》
これはお決まりの台詞。何回もそう言ってジルは1度も私を森の外へ連れていってくれたことは無い。
まぁここでの生活に不満はない。魔物達も動物達もとても優しい。
私は毎日楽しく暮らしている。
              
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