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今日は約束の1年の1日前。
屋敷には領地からお義父様とお義母様、そして私の両親にも来てもらっている。
「すみません、お呼び立てしてしまって」
私はまず夫の両親と話をする。
「いいえ、私達こそ貴女に甘えてばかりでごめんなさいね・・・」
「ああ、あの馬鹿な息子に代わりしっかり領地を治めてくれている。2人には頭があがらないよ」
「そんな、わたくしは当然の事をしているだけですわ」
私は2人に座るよう勧める。
「で?今日はどうしたんだい?話とは」
夫は子供の事をご両親には話していないようだ。まあ、そうか。表向き夫は侯爵家とはもう何の関係もないと発表している、そう易々と連絡も取れないだろう。
「突然で驚かれるかもしれませんが・・・夫が一緒に連れて行った彼女に子供が出来たんです」
「な、何?」
「なんですって?」
お二人共驚いておられるわ。
「そしてその子供を連れてキャスリーンさんと共に明日この屋敷に帰って来られます」
「・・・その子供は・・・・・・あの馬鹿の子供なのか?」
恐る恐る私にそう聞くお義父様。
「いいえ、違いますわ」
私は困ったように笑い首を振る。
「・・・そうか・・・違う・・・のか」
あら、まさかお義父様・・・。
「その子が旦那様の子供だったなら・・・もしかしてこの家を継がせようなどと・・・思っていらっしゃいました?」
私のその言葉にお義母様がお義父様を見た。
お義母様の方がまだマトモね。やっぱり跡継ぎの事どなると男はダメだわ、すぐに自分の利益を考える。
今更自分の血の繋がった子にこの家を継がせようなんて・・・ちょっと虫が良すぎるのではなくて?
私はここであの跡取りに関する事が書かれた紙を夫の両親の前に出す。
「こちらご覧いただけますか?」
その紙を手にとりお2人は黙って読み始める、だんだんお顔の色が悪くなっていますね。
「全ては旦那様の方から言い出したことですわ」
2人の顔をじっと見る。2人とも信じられないと言うような顔をしていた。・・・でしょうね、こんな馬鹿げた事。ちょっとやそっとでは信じられないわよね。
「ですから・・・例え産まれた子が旦那様の子供だったとしても・・・この家を継がせる事は出来ませんわ」
私がそこまで言うと2人は力なく下を向いた。
「何故・・・こんな事になった?」
・・・それを聞きますか?
私はあの契約書を2人に見せる。
こちらまで見せる気は無かったのだけれど・・・。
「夫は最初この契約内容をこちらに伝えずわたくしに婚約を申し入れて来ました。わたくしと旦那様とは幼馴染み、父も母も酷く喜び・・・わたくしとて申し込まれた時は喜びましたわ」
私はそこで立ち上がり2人に背を向ける。
「ですが・・・婚約者として初めて会ったあの日に夫はこの契約書を私に突き付け・・・ こんな馬鹿げた結婚は嫌だと断るわたくしにこちらからは婚約解消するつもりは無い婚約解消したければそれ相応のお金を払えと・・・」
そこで私は肩を震わせる。
「そうは言っても結婚すれば・・・夫婦として・・・やっていけると・・・そう思っていましたのに・・・夫は彼女と手を取り合い・・・」
そこまで言うと言葉に出来ないと言うように顔を覆って崩れ落ちた。
お義母様が駆け寄って来て肩を撫でて下さる。
「我が息子ながら・・・ほとほと愛想がつきましたわ・・・ごめんなさいね。こんなに頑張ってくれている貴女にこんな仕打ちを・・・」
私は首を横に振る。
「あの子はもう正式に侯爵家からは勘当します・・・貴方もそれで宜しいわね」
「ああ・・・どちらにせよ・・・こんな馬鹿な事をするような奴にまともに領地の事は出来ないだろう・・・」
「・・・申し訳ありません・・・取り乱しまして」
私は出てもいない涙を拭う。
「いいえ、無理もないわ。今までありがとう、あんな馬鹿な男の為に・・・貴女の大事な時間を使わせてしまったわね」
「いいえ、お義母様。お二人の娘になれた事は夫と結婚して良かった数少ない事の1つですわ・・・」
そうして私はお二人に向け微笑む。
屋敷には領地からお義父様とお義母様、そして私の両親にも来てもらっている。
「すみません、お呼び立てしてしまって」
私はまず夫の両親と話をする。
「いいえ、私達こそ貴女に甘えてばかりでごめんなさいね・・・」
「ああ、あの馬鹿な息子に代わりしっかり領地を治めてくれている。2人には頭があがらないよ」
「そんな、わたくしは当然の事をしているだけですわ」
私は2人に座るよう勧める。
「で?今日はどうしたんだい?話とは」
夫は子供の事をご両親には話していないようだ。まあ、そうか。表向き夫は侯爵家とはもう何の関係もないと発表している、そう易々と連絡も取れないだろう。
「突然で驚かれるかもしれませんが・・・夫が一緒に連れて行った彼女に子供が出来たんです」
「な、何?」
「なんですって?」
お二人共驚いておられるわ。
「そしてその子供を連れてキャスリーンさんと共に明日この屋敷に帰って来られます」
「・・・その子供は・・・・・・あの馬鹿の子供なのか?」
恐る恐る私にそう聞くお義父様。
「いいえ、違いますわ」
私は困ったように笑い首を振る。
「・・・そうか・・・違う・・・のか」
あら、まさかお義父様・・・。
「その子が旦那様の子供だったなら・・・もしかしてこの家を継がせようなどと・・・思っていらっしゃいました?」
私のその言葉にお義母様がお義父様を見た。
お義母様の方がまだマトモね。やっぱり跡継ぎの事どなると男はダメだわ、すぐに自分の利益を考える。
今更自分の血の繋がった子にこの家を継がせようなんて・・・ちょっと虫が良すぎるのではなくて?
私はここであの跡取りに関する事が書かれた紙を夫の両親の前に出す。
「こちらご覧いただけますか?」
その紙を手にとりお2人は黙って読み始める、だんだんお顔の色が悪くなっていますね。
「全ては旦那様の方から言い出したことですわ」
2人の顔をじっと見る。2人とも信じられないと言うような顔をしていた。・・・でしょうね、こんな馬鹿げた事。ちょっとやそっとでは信じられないわよね。
「ですから・・・例え産まれた子が旦那様の子供だったとしても・・・この家を継がせる事は出来ませんわ」
私がそこまで言うと2人は力なく下を向いた。
「何故・・・こんな事になった?」
・・・それを聞きますか?
私はあの契約書を2人に見せる。
こちらまで見せる気は無かったのだけれど・・・。
「夫は最初この契約内容をこちらに伝えずわたくしに婚約を申し入れて来ました。わたくしと旦那様とは幼馴染み、父も母も酷く喜び・・・わたくしとて申し込まれた時は喜びましたわ」
私はそこで立ち上がり2人に背を向ける。
「ですが・・・婚約者として初めて会ったあの日に夫はこの契約書を私に突き付け・・・ こんな馬鹿げた結婚は嫌だと断るわたくしにこちらからは婚約解消するつもりは無い婚約解消したければそれ相応のお金を払えと・・・」
そこで私は肩を震わせる。
「そうは言っても結婚すれば・・・夫婦として・・・やっていけると・・・そう思っていましたのに・・・夫は彼女と手を取り合い・・・」
そこまで言うと言葉に出来ないと言うように顔を覆って崩れ落ちた。
お義母様が駆け寄って来て肩を撫でて下さる。
「我が息子ながら・・・ほとほと愛想がつきましたわ・・・ごめんなさいね。こんなに頑張ってくれている貴女にこんな仕打ちを・・・」
私は首を横に振る。
「あの子はもう正式に侯爵家からは勘当します・・・貴方もそれで宜しいわね」
「ああ・・・どちらにせよ・・・こんな馬鹿な事をするような奴にまともに領地の事は出来ないだろう・・・」
「・・・申し訳ありません・・・取り乱しまして」
私は出てもいない涙を拭う。
「いいえ、無理もないわ。今までありがとう、あんな馬鹿な男の為に・・・貴女の大事な時間を使わせてしまったわね」
「いいえ、お義母様。お二人の娘になれた事は夫と結婚して良かった数少ない事の1つですわ・・・」
そうして私はお二人に向け微笑む。
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