契約結婚を申し込んできた夫にちっちゃく復讐しようと思う

きんのたまご

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番外編

その後のアイリス2

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今日は毎月1度開催される孤児院のバザーの日。
私はこの孤児院の子供達に刺繍の仕方と料理全般を教えている、大きくなった子供達がここを出ていっても生活に困らないように手に職ではないがちょっとでも出来ることが増えたらいいと思っている。
勿論小さい子供には刺繍や料理などはな危ないので花を押し花にして栞を作る事なども教えている。
で、日々子供達が頑張って作った刺繍の作品やクッキー等の焼き菓子、日持ちがするジャム、あとは押し花の栞、畑で育てた野菜等がバザーの商品となる。
「さてと、こんなものかしら?」
長いテーブルに白いクロスをかけてその上に商品をなるべく綺麗に見えるように並べる。
「マザー出来た!」
商品を並べ終えた子供達が私の所にやって来る。
「ちゃんと並べらてたかしら?」
「はい!ちゃんと出来ました!」
比較的歳が上の子供達がそう答える。
「そう、じゃあお着替えしましょうか」
「はーい!」
このバザーには一般の庶民の方も来てくれるが主なお客様は貴族の方達、まぁ一種の 寄付みたいなものね、そうやって孤児院にお金を落とすのも貴族の仕事みたいなものだ。
だからそのお客様達に失礼の無い服装でお出迎えする。
まぁそうは言っても女の子はちょっと綺麗なワンピース、男の子は白いシャツに紺のパンツぐらいのものだけれど、それでも子供達には月一回のおめかし、お着替えの時はいつも嬉しそうだ。
この孤児院は正直お金には困っていない、私が侯爵夫人をやっていた時から孤児院の運営に困らないようにしていた。だからといって贅沢出来るような生活でも無い、いつ子供がもっと増えるかも分からないし。
だから貯えは貯えとして取っておくとして、日々の生活のお金はこうしてバザーで稼ぐのだ。

「ようこそ起こし下さいました」
皆で並び行儀良く挨拶する子供達。
「あらあら、まぁここの孤児院の子達は皆お行儀が良いわねぇ」
貴族の奥様が微笑みながらそう言う。
「ありがとうございます」
私はそれに笑顔で返す。
どこの孤児院でもそうだが貴族の家に引き取られるのも少ない事では無い。自分達の子供がが出来ず自分の子供として引き取る方、子供の遊び相手として(使用人として)引き取る方、理由は様々だけどこういう場でアピールして貴族の家に引き取られるケースも多い、だから子供達の為にもここは頑張らねば!まぁうちの子達は全員いい子達ばかりだけれど!
よーし!子供達の為に今日も売って売って売って売って売りまくるわよー!

「あら、もうこんな時間だわ」
お腹が空いてきたと思ったらもうお昼の時間だった。
バザーの日には外で炊き出しを行う、お客様にも食べて貰うために。
孤児院の庭にテーブルセットを用意して真ん中に大きなお鍋を置いてシチューのようなスープを振る舞う。テーブルの上には予め用意してある摘んで食べれる軽食。
今日ばかりはテーブルマナーを忘れて気楽に食事してもらう。最初は貴族の方達にはびっくりされたが私が元侯爵夫人であった事は有名で、まあ私が食べているならと恐る恐る口にして下さった貴族の方達が美味しいと言ってくれて口コミでどんどん広がり今ではこれを目当てに来て下さる方も少なくはない。
「相変わらず美味しいわ」
「ええ、月1回のこの日が楽しみで」
「わたくしもですわ」
和やかに進む食事。
良かった今日も大成功だわ、私はほっと胸を撫で下ろす。まだ午後の分があるが午後はどちらかと言うと庶民の方たちが多いのでうちの子達なら大丈夫!
そろそろ午後の準備をしようと立ち上がった私を呼ぶ声が聞こえた。
「アイリス様!」
ん?声のする方を見ると・・・あれはパーティーでキャスリーンにワイングラスを投げ付けていた方!
おお、なんだか凄い勢いでこちらに向かっていらっしゃる。
「お久しぶりでございます」
もう侯爵夫人では無い私は礼儀正しく挨拶をする。
「!?アイリス様!そんな他人行儀な!おやめ下さい!」
「?!いえ、わたくしはもう侯爵夫人ではありませんので・・・」
「そんな!そんな事仰らないで下さい」
「いえ、わたくしに敬語を使って下さる必要はありません。名前もアイリスとお呼び下さい」
「・・・そうですね、分かりました。ではアイリスと呼ばせて頂きます」
奥様がそう言って何故か顔を伏せてしまわれた・・・。私は奥様の手を取る。
「来ていただいてありがとうございます。久しぶりにお会い出来て嬉しいですわ」
私がそう言うと奥様は勢い良く顔をあげてそれはとても嬉しそうに微笑んで下さった。
「私も久しぶりにお会い出来て嬉しいです」
奥様はそう言って私に抱きついてこられた。
立場が変わってしまってもこうして尋ねて来て下さるなんて有難いですね!
持つべきものはかつての同士です。
「マザー!」
その時子供達が私の元に走って来るのが見えた。
「皆お利口な子達ばかりですね」
奥様がそう言ってくれる。
「そうなんです、皆私を助けてくれるんですよ。とてもいい子達ばかりです」
「・・・そうなんですね、アイリスが幸せそうで私も嬉しいです」
「ふふ、ありがとうございます」


こうして懐かしい顔を久しぶりに見て今日のバザーは終わった。
皆疲れたのだろう子供達はいつもより早い時間に眠ってしまった。子供達の部屋を出て自分の部屋へ戻る私は1人窓から空を眺める、そこには星が瞬いていた。
「いい夜だわ」
程よい疲れに満たされた心、ずっとこうして穏やかな日々が続けばいいと思いながら私は眠りに落ちた。
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