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セカンドコンタクト ~宇宙人・小野田獣座衛門のこと~
第14話 "手"のはなし
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俺は下痢をどうにか克服してトイレから帰ってきた。まだ腹痛がする。完治には時間がかかりそうだ。獣座衛門はテレビに向き合ってた。よく見ると彼はPF2の電源を入れてゲームをしてたんだ。触手で器用にゲームコントローラーを掴んで熱心に操作している。
「なにやってんだ。どうやって……?」
「おう、これか?」
獣座衛門は俺の方は見ずに触手でPF2本体を指差した。
PF2にはブサイクな出力ケーブルみたいなものが接続されていた。どう見ても俺の知るAVケーブルには見えない。獣座衛門はいう。
「上の操作盤から要らないものを二・三本拝借させてもらった。大丈夫さ。材料さえあれば宇宙テクノロジーで近いものを作るのは容易だ」
「おい! ダメだって……返して来いよ!」
「堅いこというなよ。もとはと言えばお前がAVケーブルを忘れてくるなんてヘマするからいけないんだ」
「横暴だ!」
「なんとでもいえ。俺はゲームをする」
テレビに映っているのはさっき俺が見せた《物体魂》のソフトだ。どうやら意地でもゲームがしたかったらしい。獣座衛門の執念にはほとほと頭が下がる思いだ。
「……」
沈黙。静寂の中でゲーム音ばかりが聞こえてくる。俺は思わず堪えかねて、大げさなジェスチャーもしながら獣座衛門に訴えかけた。
「俺の上司からの命令なんだ! 宇宙人との時間を有意義なものにして欲しいって!」
「……外人の考えてることはよくわからんな。まあ言う事だけ素直に聞いておけば丸く収まるんじゃねぇか」
お前は外国人以前に宇宙人だけどな。なんてことは口が裂けても言わない。
「意地でもゲームをするつもりなんだな?」
「お前もおかしな地球人だな? ゲームを持ってきたのはそっちだろう。その通りだ。俺はゲームをするぞ」
「うぐぐ……」
その時、ハッとして閃いた。ステイマンに電話しよう、と。
ジェイコブにはああ言われたけど、もしかしたらステイマンならジェイク・マースティンについて何か知ってるかもしれない。その時にもうひとつ気になったことがある。俺は獣座衛門に質問する。
「なぁ、思ったんだが……。どうして君は通信機を嫌がるんだ?」
「……人にものを訊くときは自分から訪ねてくるものだろう?」
だ、そうだ。獣座衛門の言う事は真っ当なものだった。俺はお茶を淹れに台所へと向かった。そのついでに、通信機でステイマンに連絡する。彼は嬉しそうな声で答えた。
「おお、リュウタ! 本当に連絡して来てくれたんだな!」
獣座衛門の手前でもある。監視カメラを警戒しつつ俺は声を潜めていう。
「そうなんだ、ステイマン。少し気になったことがある」
「え?」
「実はジェイコブにも同じ質問をしたんだけど、俺と同じくオペレーター計画に参加してたジェイク・マースティンという日本語の講師がいたはずなんだ。知らないか?」
「ジェイク……さぁな。だいいちジェイコブは知らないといったんだろう?」
「まぁ……そうなんだけど」
「ううん。気になるのなら調べてやってもいい」
「ほんとう!?」
「ああ、しばらくしたらまた連絡してくれ」
俺はステイマンにお礼を言って通話を切った。その時、背後から声がしたんだ。
「リュウタ……?」
「わっ!」
俺はトレイに乗せた湯飲みをこぼしそうになって思わず慌てた。
「な……なんだよ! 急に話しかけるなよ!」
「いいや……お茶を入れるにしても時間がかかると思ったんだ」
「なんでもないぜ。いや、うまいお茶を入れるには時間がかかるんだ」
ちょっと怪しい屁理屈だったけどギリセーフ。俺は茶の間へ戻って来て湯飲みをちゃぶ台に置く。もう1時間くらいずっとゲームに没頭していた獣座衛門だったけど、突然いう。
「”手”が疲れた。そろそろ晩飯にしよう」
時計を見た。確かに夜も更けた。太陽が見えないからまるで時間がわからなかった。
「我々の体内時計は正確なんだ。故郷の惑星にはよく似た恒星が複数個あることから日時計の技術が成熟しなかったんだよ」
獣座衛門は正確な時計を道具としてではなく体内に持ってる。正直羨ましかった。人間には失われてしまったとかいう磁覚にも近いものがあるのか。俺達はキッチンに来た。獣座衛門はうんざりしたようにカップ麺を取り出す。
「人間達が用意したメニューはこれだ。正直飽き飽きだよ」
「なら料理をしよう!」「?」
宇宙空間での料理は難しい。けれど人工重力の発生しているこの空間は別だ。俺は持ち込んだ生鮮食品を使って料理をした。とはいえ、ぱさぱさのパンと目玉焼きとサラダだけれど。日本では休日の朝や夕食は基本的に自炊していた。こんなものでもインスタント食品に比べたらマシだと思う。ちゃぶ台に食器を並べる。宇宙人と夕食。獣座衛門は口吻でむしゃむしゃと乾燥したパンと目玉焼きのソーセージを咀嚼していた。
「ふうん……悪くねぇな」
そういって、彼はそっぽを向いた。
「……」
この宇宙人の感情は基本的には不可解だった。表情がないから人間みたいに分かりやすくない。でも、少しだけ獣座衛門と仲良くなれたのかなって、そう思えたんだ。
「なにやってんだ。どうやって……?」
「おう、これか?」
獣座衛門は俺の方は見ずに触手でPF2本体を指差した。
PF2にはブサイクな出力ケーブルみたいなものが接続されていた。どう見ても俺の知るAVケーブルには見えない。獣座衛門はいう。
「上の操作盤から要らないものを二・三本拝借させてもらった。大丈夫さ。材料さえあれば宇宙テクノロジーで近いものを作るのは容易だ」
「おい! ダメだって……返して来いよ!」
「堅いこというなよ。もとはと言えばお前がAVケーブルを忘れてくるなんてヘマするからいけないんだ」
「横暴だ!」
「なんとでもいえ。俺はゲームをする」
テレビに映っているのはさっき俺が見せた《物体魂》のソフトだ。どうやら意地でもゲームがしたかったらしい。獣座衛門の執念にはほとほと頭が下がる思いだ。
「……」
沈黙。静寂の中でゲーム音ばかりが聞こえてくる。俺は思わず堪えかねて、大げさなジェスチャーもしながら獣座衛門に訴えかけた。
「俺の上司からの命令なんだ! 宇宙人との時間を有意義なものにして欲しいって!」
「……外人の考えてることはよくわからんな。まあ言う事だけ素直に聞いておけば丸く収まるんじゃねぇか」
お前は外国人以前に宇宙人だけどな。なんてことは口が裂けても言わない。
「意地でもゲームをするつもりなんだな?」
「お前もおかしな地球人だな? ゲームを持ってきたのはそっちだろう。その通りだ。俺はゲームをするぞ」
「うぐぐ……」
その時、ハッとして閃いた。ステイマンに電話しよう、と。
ジェイコブにはああ言われたけど、もしかしたらステイマンならジェイク・マースティンについて何か知ってるかもしれない。その時にもうひとつ気になったことがある。俺は獣座衛門に質問する。
「なぁ、思ったんだが……。どうして君は通信機を嫌がるんだ?」
「……人にものを訊くときは自分から訪ねてくるものだろう?」
だ、そうだ。獣座衛門の言う事は真っ当なものだった。俺はお茶を淹れに台所へと向かった。そのついでに、通信機でステイマンに連絡する。彼は嬉しそうな声で答えた。
「おお、リュウタ! 本当に連絡して来てくれたんだな!」
獣座衛門の手前でもある。監視カメラを警戒しつつ俺は声を潜めていう。
「そうなんだ、ステイマン。少し気になったことがある」
「え?」
「実はジェイコブにも同じ質問をしたんだけど、俺と同じくオペレーター計画に参加してたジェイク・マースティンという日本語の講師がいたはずなんだ。知らないか?」
「ジェイク……さぁな。だいいちジェイコブは知らないといったんだろう?」
「まぁ……そうなんだけど」
「ううん。気になるのなら調べてやってもいい」
「ほんとう!?」
「ああ、しばらくしたらまた連絡してくれ」
俺はステイマンにお礼を言って通話を切った。その時、背後から声がしたんだ。
「リュウタ……?」
「わっ!」
俺はトレイに乗せた湯飲みをこぼしそうになって思わず慌てた。
「な……なんだよ! 急に話しかけるなよ!」
「いいや……お茶を入れるにしても時間がかかると思ったんだ」
「なんでもないぜ。いや、うまいお茶を入れるには時間がかかるんだ」
ちょっと怪しい屁理屈だったけどギリセーフ。俺は茶の間へ戻って来て湯飲みをちゃぶ台に置く。もう1時間くらいずっとゲームに没頭していた獣座衛門だったけど、突然いう。
「”手”が疲れた。そろそろ晩飯にしよう」
時計を見た。確かに夜も更けた。太陽が見えないからまるで時間がわからなかった。
「我々の体内時計は正確なんだ。故郷の惑星にはよく似た恒星が複数個あることから日時計の技術が成熟しなかったんだよ」
獣座衛門は正確な時計を道具としてではなく体内に持ってる。正直羨ましかった。人間には失われてしまったとかいう磁覚にも近いものがあるのか。俺達はキッチンに来た。獣座衛門はうんざりしたようにカップ麺を取り出す。
「人間達が用意したメニューはこれだ。正直飽き飽きだよ」
「なら料理をしよう!」「?」
宇宙空間での料理は難しい。けれど人工重力の発生しているこの空間は別だ。俺は持ち込んだ生鮮食品を使って料理をした。とはいえ、ぱさぱさのパンと目玉焼きとサラダだけれど。日本では休日の朝や夕食は基本的に自炊していた。こんなものでもインスタント食品に比べたらマシだと思う。ちゃぶ台に食器を並べる。宇宙人と夕食。獣座衛門は口吻でむしゃむしゃと乾燥したパンと目玉焼きのソーセージを咀嚼していた。
「ふうん……悪くねぇな」
そういって、彼はそっぽを向いた。
「……」
この宇宙人の感情は基本的には不可解だった。表情がないから人間みたいに分かりやすくない。でも、少しだけ獣座衛門と仲良くなれたのかなって、そう思えたんだ。
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