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サードコンタクト ~三日目の少年~
第20話 ブライアンのとまどい
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「単純に、金だよ」
「金……金か……人間が物流をスムースにするため作り出した紙くずのことだな?」
宇宙じゃ通貨はメジャーじゃないらしい。流通は物々交換なのか、はたまた共産主義的世界で必需品は配給制なのか。
「しかし、随分とつまらない理由なんだな」
小野田は何かを期待してたようなのか、なんだか落胆した様子だった。
「ごめんよ。でもさ、俺に変に下心があったら逆に嫌だろ?」
「確かにな」
小野田はさらっといった。それから続けていう。
「宇宙では地球よりももっと熾烈な資源の争奪競争になる。そうしたら記号化した物の価値など無意味だ。お前も金のための仕事なら必要なことだけ聞けば済む話だろ?」
「まあそうだけど……」
「しかし、君達日本人と言うのは本当に不思議な連中だな。俺を見ても恐怖心より好奇心が勝るようだ。もしかしたら、そのために組織は君を宇宙に送りつけたのかもしれない」
獣座衛門はしみじみといった。いうに事欠いて、今更なにいうんだよ。
「私のこの個性的なビジュアルはとてもじゃないが受け入れがたいと感じるものだと思っていたが、どうもそれは俺の固定観念で、文化の差異によるものだったらしい」
個性的なビジュアル。確かにそのとおりだ。それにしても、資料にも書いてあった。
――面白いことに彼は自分の容姿に対しての美的評価が低い――
獣座衛門はそのことを自覚しているのか。こうして言葉に出して俺に伝えるってことは、もう容姿に触れることに関しては不問にするってことなのかな。それにしても不思議なことがある。
「獣座衛門は自分でも、ユニークな見た目だって思うの?」
「うーん。私も地球の滞在期間が長くなるから、風土に毒されたのかもな」
獣座衛門は続けていう。
「目というのは……君達と感覚を共有できる珍しい器官なんだ」
「お互い違う世界に住んでるようにも聞こえるな」
「我々にはロードリウス器官というものがある。君達にしてみれば耳と嗅覚に相当する。コミュニケーションをとるときはこちらの方が強く役目を果たす。一種のテレパシーだ」
「えっ!?」
「安心しろ。思ったことを何でもかんでも聞き取れるものじゃない。耳と嗅覚を補う程度のものだと思ってもらいたい。動物にもサメのロレンチーニ器官があるだろ? 生物の発する微弱な電流を感知する器官だ。クジラのエコロケーションなどというものもある。人の持つ感覚器が全てだとは思わないほうが良い。動物は人の思いもよらない世界に生きているかもしれないのだぞ」
「要するに人間以外の動物はみんな宇宙人ってことだな」
「必要以上に異生物同士で仲間意識を持つのは危険ということだ。その点、野生の動物は未だ熾烈な弱肉強食の世界で生きてる。いい距離感を保っているんだ。君達からしたら一生懸命に生きる彼らが本能的に滑稽に思えるかも知れないが、いつか足下を掬われるぞ」
それはある意味では人間関係にもいえる。
相手も自分と同じ世界に生きてるように思えて、実は違う世界に生きている。感じ方も多種多様だ。相手の身になって考える意識が欠落しているか、もしくは放棄している。共感感覚への過信が俺たちを盲目にしてるのか。
「……!」
その時、咄嗟に思いついた。そうだ、どうしてジェイコブがステイマンのことを知っていたのか。理由はひとつしかない。ステイマンが告げ口したんだ。そうに決まってる。
「……リュウタ?」
「ちょっとトイレに行ってくる」
トイレに行くフリをして、俺は再び通信機へと向かった。
ステイマンとの会話の内容を思い出し、彼が告げ口した意図を問い詰めるためだ。
「どうしてだよ……ステイマン」
裏切られた気持ちだった。あんたは俺をここに連れてきた責任があるんだ。俺はそれ以外に考えられなかった。ところが、トイレの個室に入って通信機に手を伸ばすと……突然通信機の端末がバイブを始めた。俺はびっくりして怖気立つ。何なんだよこんな時に。
「こんな時にっ」
相手は誰か、決まってる。ジェイコブだ。きっとさっきの話の続きがあるんだ。
「どうしたんだジェイコブ……俺はっ――――!?」
「ヘイ! リュウタ! 俺だ!」
「! またあんたか!? もうやめてくれ!」
相手はブライアンと名乗る男だ。俺は激しい言葉でまくし立てる。
「目的は宇宙人なんだろ。下手なことをしたら俺の上司にいいつけるぞ!?」
「待て! 何を言ってる? 早まるな! それだけは絶対にダメだ!」
「考えたんだ……あんたのいってることが真実で、全てがでたらめだったらって……けれど一つだけ納得できないことがある。ケネディ宇宙センター。よく考えてみたらおかしな話だ。アメリカの国家機関の設備を外部の組織が勝手に利用できるわけないだろ?」
「だからそれはっ」
「何だ?」
「…………」
俺はブライアンの返答を待った。けれど、いつまで経っても何も答える様子はなかった。やっぱりだ。俺の思ったとおりだった。このブライアンはなぜか俺とプロジェクトのことを知った。彼はその時、俺を混乱させるようなストーリーを捏造して、俺に組織を裏切って寝返らせるよう仕組んだ。詰めの甘いシナリオ。その綻びが垣間見えた気がした。
だけど、次の瞬間に俺の口をついて飛び出た言葉は、俺自身でさえも予想できなかった突拍子もない一言だった。
「――――ある男を捜してる」
「……!?」
「探して欲しい男がいるんだ。あんたが本当にCIAなら人探しはお手の物だろ?」
「わからないよリュウタ。詳細を聞かないことには。場合によるとしか言えない」
ブライアンは本当に困ったようにいった。
「ジェイクマースティンという男は元オペレーターなんだ。もし彼が実在するなら……あんたのいうフェイクとリアルの架け橋になると思うんだよ」
「まさか」
「ああ……他にもチャールズ・ロペスという男がいた。知ってるのか?」
「有名人だ! なぜ彼のことを君が?」
「……チャールズは宇宙人と会って未知のテクノロジーを得たんだ。それで莫大な富を築いたと教えられた」
ブライアンは僅かに沈黙した。俺には意味深に思えたけど構わずに続ける。
「ところがだ。そうしてうまみを得た成功者がいる傍ら、マースティンは姿を消した。まるで自分のことを詮索されるのを恐れるかのように……」
「確かに安っぽい二時間映画にしちゃもったいないミステリーだな。わかったリュウタ。彼のことを探してみることにしよう」
「……ああ」
とはいえ、罪悪感は拭えない。ある意味での機密を外部の人間に漏らしているには違いないんだ。それに、ブライアンがどの程度信用に足る人物かもわからない。そんなことぼうっと考えていたら、ブライアンはおもむろに言う。
「リュウタ、アイリーンという名前の女性には聞き覚えはないか?」
「アイリーン?」
覚えがない。俺は戸惑うばかりだ。痺れを切らしてブライアンはいう。
「彼女はFBIの捜査官だ。君と接触したときは確か記者を名乗っていたらしいが」
思い出した。確か宇宙飛行士のダニエルと基地の近場の喫茶店でお茶を飲んでるときに乱入してきて口論になった女性だ。どうして彼女が。ブライアンがいう。
「実は彼女の方から我々に協力を要請してきたんだ」
「待てよ……そうだ、アイリーンだよ。アイリーンはケネディ宇宙センターから俺達の宇宙船が打ち上げられる瞬間を見てるはずだぞ?」
「アイリーンは打ち上げのタイミングには出くわしてないといってる」
「そんな。じゃあ俺が間違ってるのか?」
「待て。状況を整理しよう。君は確かに宇宙船で宇宙に出立した。それは確かだな?」
「ああ?」
「そして今、宇宙空間の宇宙ステーションの中で宇宙人と二人でいると?」
「ああ?」
「アイリーンは組織を見失った。今君のことを監視し君と通信している司令部はそこにはない……組織の居場所がわからないんだ」
「俺が助かるには、まずは組織の居所を押さえる必要がある?」
「そうだ。何か手がかりがあればいいんだが……」
「ごめん」
無力な俺は、謝る事しかできななかった。ブライアンはいう。
「謝ることじゃない。これは私の仕事だ。君がすることは、わかってるね?」
「……うん」
「よし、マースティンか……他に何か知っていることはあるか?」
「え?」
「何でもいい。組織を突き止める手がかりになるかもしれない」
俺は困惑する。知っていることと言えば、ロボットハウスと、司令官のジェイコブという男のこと。だけど、これは既にブライアンは知っている可能性が高い。あとは、獣座衛門から聞き知った事実だけだった。
「……宇宙人のことになるけど?」
俺は、獣座衛門のこと。それから生物の起源のことなどを話した。ところが、目に見えてブライアンの反応が変わる。彼は切迫した口調でいう。
「やめろっ、もうやめてくれっ」
「?」
ぜぇぜぇと、荒い呼吸音が聞こえてくる。ブライアンは必至の声音でいう。
「そんな……真実は野蛮だ、この世は狂ってる、これじゃあダメだ!」
どう言う事なんだ。これじゃあダメだって、何を基準にそんなことをいうんだ。俺にはとても興味深くて、ある意味じゃ感慨深い話に思えたけど、受け取り手が違うとこうも印象が違うものか。俺は益々わからなくなる。獣座衛門はいった。――君達は本当に不思議な連中だな――と、それはある意味では的確な表現なのかもしれない。ブライアンの悲鳴のような訴えは続く。
「よく考えてみてくれ! 君もそんなものは間違ってると思うだろ? 恐ろしいだろ?」
「確かに怖いけど、よくわからない……けれどそれが真実なんだから仕方ないじゃないか?」
俺がいうと、ブライアンのヒッと息を飲む声がした。そして今度は怒り出す。
「それが真実なら、俺は明日から何を信じて生きていけばいい? どうすればいい!?」
なんでそんなことを聞くんだろう。子供の俺に聞いて正しい答えが返ってくるとでも思ってるのか。あるいは、思ってない。ただの心の叫びで、心のより所を探してるだけか。
「金……金か……人間が物流をスムースにするため作り出した紙くずのことだな?」
宇宙じゃ通貨はメジャーじゃないらしい。流通は物々交換なのか、はたまた共産主義的世界で必需品は配給制なのか。
「しかし、随分とつまらない理由なんだな」
小野田は何かを期待してたようなのか、なんだか落胆した様子だった。
「ごめんよ。でもさ、俺に変に下心があったら逆に嫌だろ?」
「確かにな」
小野田はさらっといった。それから続けていう。
「宇宙では地球よりももっと熾烈な資源の争奪競争になる。そうしたら記号化した物の価値など無意味だ。お前も金のための仕事なら必要なことだけ聞けば済む話だろ?」
「まあそうだけど……」
「しかし、君達日本人と言うのは本当に不思議な連中だな。俺を見ても恐怖心より好奇心が勝るようだ。もしかしたら、そのために組織は君を宇宙に送りつけたのかもしれない」
獣座衛門はしみじみといった。いうに事欠いて、今更なにいうんだよ。
「私のこの個性的なビジュアルはとてもじゃないが受け入れがたいと感じるものだと思っていたが、どうもそれは俺の固定観念で、文化の差異によるものだったらしい」
個性的なビジュアル。確かにそのとおりだ。それにしても、資料にも書いてあった。
――面白いことに彼は自分の容姿に対しての美的評価が低い――
獣座衛門はそのことを自覚しているのか。こうして言葉に出して俺に伝えるってことは、もう容姿に触れることに関しては不問にするってことなのかな。それにしても不思議なことがある。
「獣座衛門は自分でも、ユニークな見た目だって思うの?」
「うーん。私も地球の滞在期間が長くなるから、風土に毒されたのかもな」
獣座衛門は続けていう。
「目というのは……君達と感覚を共有できる珍しい器官なんだ」
「お互い違う世界に住んでるようにも聞こえるな」
「我々にはロードリウス器官というものがある。君達にしてみれば耳と嗅覚に相当する。コミュニケーションをとるときはこちらの方が強く役目を果たす。一種のテレパシーだ」
「えっ!?」
「安心しろ。思ったことを何でもかんでも聞き取れるものじゃない。耳と嗅覚を補う程度のものだと思ってもらいたい。動物にもサメのロレンチーニ器官があるだろ? 生物の発する微弱な電流を感知する器官だ。クジラのエコロケーションなどというものもある。人の持つ感覚器が全てだとは思わないほうが良い。動物は人の思いもよらない世界に生きているかもしれないのだぞ」
「要するに人間以外の動物はみんな宇宙人ってことだな」
「必要以上に異生物同士で仲間意識を持つのは危険ということだ。その点、野生の動物は未だ熾烈な弱肉強食の世界で生きてる。いい距離感を保っているんだ。君達からしたら一生懸命に生きる彼らが本能的に滑稽に思えるかも知れないが、いつか足下を掬われるぞ」
それはある意味では人間関係にもいえる。
相手も自分と同じ世界に生きてるように思えて、実は違う世界に生きている。感じ方も多種多様だ。相手の身になって考える意識が欠落しているか、もしくは放棄している。共感感覚への過信が俺たちを盲目にしてるのか。
「……!」
その時、咄嗟に思いついた。そうだ、どうしてジェイコブがステイマンのことを知っていたのか。理由はひとつしかない。ステイマンが告げ口したんだ。そうに決まってる。
「……リュウタ?」
「ちょっとトイレに行ってくる」
トイレに行くフリをして、俺は再び通信機へと向かった。
ステイマンとの会話の内容を思い出し、彼が告げ口した意図を問い詰めるためだ。
「どうしてだよ……ステイマン」
裏切られた気持ちだった。あんたは俺をここに連れてきた責任があるんだ。俺はそれ以外に考えられなかった。ところが、トイレの個室に入って通信機に手を伸ばすと……突然通信機の端末がバイブを始めた。俺はびっくりして怖気立つ。何なんだよこんな時に。
「こんな時にっ」
相手は誰か、決まってる。ジェイコブだ。きっとさっきの話の続きがあるんだ。
「どうしたんだジェイコブ……俺はっ――――!?」
「ヘイ! リュウタ! 俺だ!」
「! またあんたか!? もうやめてくれ!」
相手はブライアンと名乗る男だ。俺は激しい言葉でまくし立てる。
「目的は宇宙人なんだろ。下手なことをしたら俺の上司にいいつけるぞ!?」
「待て! 何を言ってる? 早まるな! それだけは絶対にダメだ!」
「考えたんだ……あんたのいってることが真実で、全てがでたらめだったらって……けれど一つだけ納得できないことがある。ケネディ宇宙センター。よく考えてみたらおかしな話だ。アメリカの国家機関の設備を外部の組織が勝手に利用できるわけないだろ?」
「だからそれはっ」
「何だ?」
「…………」
俺はブライアンの返答を待った。けれど、いつまで経っても何も答える様子はなかった。やっぱりだ。俺の思ったとおりだった。このブライアンはなぜか俺とプロジェクトのことを知った。彼はその時、俺を混乱させるようなストーリーを捏造して、俺に組織を裏切って寝返らせるよう仕組んだ。詰めの甘いシナリオ。その綻びが垣間見えた気がした。
だけど、次の瞬間に俺の口をついて飛び出た言葉は、俺自身でさえも予想できなかった突拍子もない一言だった。
「――――ある男を捜してる」
「……!?」
「探して欲しい男がいるんだ。あんたが本当にCIAなら人探しはお手の物だろ?」
「わからないよリュウタ。詳細を聞かないことには。場合によるとしか言えない」
ブライアンは本当に困ったようにいった。
「ジェイクマースティンという男は元オペレーターなんだ。もし彼が実在するなら……あんたのいうフェイクとリアルの架け橋になると思うんだよ」
「まさか」
「ああ……他にもチャールズ・ロペスという男がいた。知ってるのか?」
「有名人だ! なぜ彼のことを君が?」
「……チャールズは宇宙人と会って未知のテクノロジーを得たんだ。それで莫大な富を築いたと教えられた」
ブライアンは僅かに沈黙した。俺には意味深に思えたけど構わずに続ける。
「ところがだ。そうしてうまみを得た成功者がいる傍ら、マースティンは姿を消した。まるで自分のことを詮索されるのを恐れるかのように……」
「確かに安っぽい二時間映画にしちゃもったいないミステリーだな。わかったリュウタ。彼のことを探してみることにしよう」
「……ああ」
とはいえ、罪悪感は拭えない。ある意味での機密を外部の人間に漏らしているには違いないんだ。それに、ブライアンがどの程度信用に足る人物かもわからない。そんなことぼうっと考えていたら、ブライアンはおもむろに言う。
「リュウタ、アイリーンという名前の女性には聞き覚えはないか?」
「アイリーン?」
覚えがない。俺は戸惑うばかりだ。痺れを切らしてブライアンはいう。
「彼女はFBIの捜査官だ。君と接触したときは確か記者を名乗っていたらしいが」
思い出した。確か宇宙飛行士のダニエルと基地の近場の喫茶店でお茶を飲んでるときに乱入してきて口論になった女性だ。どうして彼女が。ブライアンがいう。
「実は彼女の方から我々に協力を要請してきたんだ」
「待てよ……そうだ、アイリーンだよ。アイリーンはケネディ宇宙センターから俺達の宇宙船が打ち上げられる瞬間を見てるはずだぞ?」
「アイリーンは打ち上げのタイミングには出くわしてないといってる」
「そんな。じゃあ俺が間違ってるのか?」
「待て。状況を整理しよう。君は確かに宇宙船で宇宙に出立した。それは確かだな?」
「ああ?」
「そして今、宇宙空間の宇宙ステーションの中で宇宙人と二人でいると?」
「ああ?」
「アイリーンは組織を見失った。今君のことを監視し君と通信している司令部はそこにはない……組織の居場所がわからないんだ」
「俺が助かるには、まずは組織の居所を押さえる必要がある?」
「そうだ。何か手がかりがあればいいんだが……」
「ごめん」
無力な俺は、謝る事しかできななかった。ブライアンはいう。
「謝ることじゃない。これは私の仕事だ。君がすることは、わかってるね?」
「……うん」
「よし、マースティンか……他に何か知っていることはあるか?」
「え?」
「何でもいい。組織を突き止める手がかりになるかもしれない」
俺は困惑する。知っていることと言えば、ロボットハウスと、司令官のジェイコブという男のこと。だけど、これは既にブライアンは知っている可能性が高い。あとは、獣座衛門から聞き知った事実だけだった。
「……宇宙人のことになるけど?」
俺は、獣座衛門のこと。それから生物の起源のことなどを話した。ところが、目に見えてブライアンの反応が変わる。彼は切迫した口調でいう。
「やめろっ、もうやめてくれっ」
「?」
ぜぇぜぇと、荒い呼吸音が聞こえてくる。ブライアンは必至の声音でいう。
「そんな……真実は野蛮だ、この世は狂ってる、これじゃあダメだ!」
どう言う事なんだ。これじゃあダメだって、何を基準にそんなことをいうんだ。俺にはとても興味深くて、ある意味じゃ感慨深い話に思えたけど、受け取り手が違うとこうも印象が違うものか。俺は益々わからなくなる。獣座衛門はいった。――君達は本当に不思議な連中だな――と、それはある意味では的確な表現なのかもしれない。ブライアンの悲鳴のような訴えは続く。
「よく考えてみてくれ! 君もそんなものは間違ってると思うだろ? 恐ろしいだろ?」
「確かに怖いけど、よくわからない……けれどそれが真実なんだから仕方ないじゃないか?」
俺がいうと、ブライアンのヒッと息を飲む声がした。そして今度は怒り出す。
「それが真実なら、俺は明日から何を信じて生きていけばいい? どうすればいい!?」
なんでそんなことを聞くんだろう。子供の俺に聞いて正しい答えが返ってくるとでも思ってるのか。あるいは、思ってない。ただの心の叫びで、心のより所を探してるだけか。
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