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ファイナルコンタクト
第35話 問答の末に
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「ほらっ、何も答えられないんだ!」
「……検体Aとは確かにリュウタの言うとおり、わけあって回収しなくてはならなくなった人間の死体だ。しかし俺は地球で目立つことは許されなかった。かわいそうだが死体ごと回収せざるを得なかったんだ!」
「どうしてそのことを話してくれなかったんだよ!?」
「簡単なことだ。君は信用できない人間が人殺しだと聞いて良い印象を持つか? それでなくても君にお前は人殺しだと言われて、危機感を抱いていた最中だ。追い討ちをかけるように自分の罪を告白するほうが馬鹿げている。理想をいえば、俺自身の口から話すことにならなければどれほどいいかと思っていたほどだ」
「もうたくさんだ! 理由説明理由説明理由説明! 問答に何の意味があるんだよ!」
「質問したのはお前の方だろう?」
「聞いたって理解できない! 証明のしようもない! それが真実にせよ真実でないにせよ君のさじ加減ひとつだろ!」
「必要なことには全て答えている」
「ロードリウス器官の時もそうだった!」
「あれは俺のミスだ。しかし、あのことは俺の失態だったと認めている」
「それからこの異常な空間だ! この世界はおかしい! 狂ってる!」
「世界は常に一定のルールに基づいて運用されている。間違っているのは観測者であるお前の常識だ」
「じゃあどうして全てを話さないんだ!? 小分けにして話そうとするのはどうしてなんだよ!?」
「そんなものはよく考えればわかると思うが……あえて答えよう。俺はNSIAという組織の非道さと、お前の任務の過酷さをよく知っているからだ」
「!」
俺は、今まで軽快に喋ってたのが嘘みたいに、突然口が重くなってしまった。
静寂。獣座衛門は哀れんだような目で俺を見つめてきた。
「おかしいのはお前の方だ。頭を冷やせリュウタ」
「お前もだ! お前もお前もお前もお前もお前もお前もお前も! みんなおかしい! 狂ってやがるっ」
「……リュウタ」
そうしたら、獣座衛門は冷静な落ち着いた口調でおもむろに話を切り出した。
「なぁ、リュウタ。もしかしたらさ、俺達、もうお別れが近いのかもな」
「!」
なぜか獣座衛門は悲しげにいうんだ。
「俺達は、なんていうか、近づきすぎた……見てくれよ。この嘘みたいにヌメヌメした触手をさ。はは、下手糞なSF映画でももっとましなパーツ考えるよな……そうさ、俺とお前の違いなんか火を見るよりも明らかだったんだ」
「なんだよ……それ」
「友達になれた。それだけできっと俺達は満足なんだよ。それ以下でもそれ以上でもない」
意味がわからなかった。いつの間にか冷めてしまった茶を飲む。冷静になって改めて考えてみても。意味がわからない。なぜ、獣座衛門は俺達の別れが近いと思ったんだろう。まさか、獣座衛門は俺を殺そうとしているのか。ゾッとして怖気立つ。嫌だ。死にたくない。満足して、つまらなくなったら俺を殺す気か。今までゴミ虫みたいに殺してきたほかのオペレーターたちみたいに。
その時だった、不意に通信機のバイブする音が聞こえる。
ハッとしてキッチンの方を見る。背後から、獣座衛門がいう。
「また地球の何者かに必要とされているぞ。お前宛の電話だ」
俺は、小野田に背中を押されるようにしてキッチンの受話器を取った。
そして……俺の電話に出たのは……。
「隆……太?」
「!」俺は、頭が真っ白になる。「一穂……なのか?」
受話器の先から聞こえてきたのは、日本のクラスメイトの震えるような声。
「そうだよ! NASAの人達が電話番号を教えてくれたから……ねぇ? 今、作戦の最中でしょ? 元気にしてる?」
「――――!」
「隆太?」
「一穂……今、何月何日、何曜日だ?」
「え?」
「いいから教えてくれっ!」
「8月の、9日だよ――――」
その時だった。バチン、と部屋の明かりが突然消灯したんだ。
俺は、ハッとして息を飲む。耳にあてがう受話器からも何の物音もしなくなった。なんだ、何が起こってるんだ。咄嗟に思った。不気味な暗闇の虚空で、小野田と思しき声がぼそりとこぼした。
「ちくしょう。また宇宙船の異常か。ボロ小屋め……」
ゾッとして寒気を催す。いや、その正体こそわからないものの、不気味な気配を感じて鳥肌が立ってしまった。その感覚がむしょうに気持ち悪かった。得体の知れないものの気配がロボットハウスの中に突然ポッと現れた。それも目と鼻のすぐそばにある。怖い。ただそう思った。
「うひひひひひひひひひひ……」
高い声。甲高い声。すぐそばから聞こえる。俺は恐る恐るキッチンの奥の突き当りの暗黒を凝視する。そこには、暗闇にぼおっと浮き上がる。明るい何かがいた。
「……検体Aとは確かにリュウタの言うとおり、わけあって回収しなくてはならなくなった人間の死体だ。しかし俺は地球で目立つことは許されなかった。かわいそうだが死体ごと回収せざるを得なかったんだ!」
「どうしてそのことを話してくれなかったんだよ!?」
「簡単なことだ。君は信用できない人間が人殺しだと聞いて良い印象を持つか? それでなくても君にお前は人殺しだと言われて、危機感を抱いていた最中だ。追い討ちをかけるように自分の罪を告白するほうが馬鹿げている。理想をいえば、俺自身の口から話すことにならなければどれほどいいかと思っていたほどだ」
「もうたくさんだ! 理由説明理由説明理由説明! 問答に何の意味があるんだよ!」
「質問したのはお前の方だろう?」
「聞いたって理解できない! 証明のしようもない! それが真実にせよ真実でないにせよ君のさじ加減ひとつだろ!」
「必要なことには全て答えている」
「ロードリウス器官の時もそうだった!」
「あれは俺のミスだ。しかし、あのことは俺の失態だったと認めている」
「それからこの異常な空間だ! この世界はおかしい! 狂ってる!」
「世界は常に一定のルールに基づいて運用されている。間違っているのは観測者であるお前の常識だ」
「じゃあどうして全てを話さないんだ!? 小分けにして話そうとするのはどうしてなんだよ!?」
「そんなものはよく考えればわかると思うが……あえて答えよう。俺はNSIAという組織の非道さと、お前の任務の過酷さをよく知っているからだ」
「!」
俺は、今まで軽快に喋ってたのが嘘みたいに、突然口が重くなってしまった。
静寂。獣座衛門は哀れんだような目で俺を見つめてきた。
「おかしいのはお前の方だ。頭を冷やせリュウタ」
「お前もだ! お前もお前もお前もお前もお前もお前もお前も! みんなおかしい! 狂ってやがるっ」
「……リュウタ」
そうしたら、獣座衛門は冷静な落ち着いた口調でおもむろに話を切り出した。
「なぁ、リュウタ。もしかしたらさ、俺達、もうお別れが近いのかもな」
「!」
なぜか獣座衛門は悲しげにいうんだ。
「俺達は、なんていうか、近づきすぎた……見てくれよ。この嘘みたいにヌメヌメした触手をさ。はは、下手糞なSF映画でももっとましなパーツ考えるよな……そうさ、俺とお前の違いなんか火を見るよりも明らかだったんだ」
「なんだよ……それ」
「友達になれた。それだけできっと俺達は満足なんだよ。それ以下でもそれ以上でもない」
意味がわからなかった。いつの間にか冷めてしまった茶を飲む。冷静になって改めて考えてみても。意味がわからない。なぜ、獣座衛門は俺達の別れが近いと思ったんだろう。まさか、獣座衛門は俺を殺そうとしているのか。ゾッとして怖気立つ。嫌だ。死にたくない。満足して、つまらなくなったら俺を殺す気か。今までゴミ虫みたいに殺してきたほかのオペレーターたちみたいに。
その時だった、不意に通信機のバイブする音が聞こえる。
ハッとしてキッチンの方を見る。背後から、獣座衛門がいう。
「また地球の何者かに必要とされているぞ。お前宛の電話だ」
俺は、小野田に背中を押されるようにしてキッチンの受話器を取った。
そして……俺の電話に出たのは……。
「隆……太?」
「!」俺は、頭が真っ白になる。「一穂……なのか?」
受話器の先から聞こえてきたのは、日本のクラスメイトの震えるような声。
「そうだよ! NASAの人達が電話番号を教えてくれたから……ねぇ? 今、作戦の最中でしょ? 元気にしてる?」
「――――!」
「隆太?」
「一穂……今、何月何日、何曜日だ?」
「え?」
「いいから教えてくれっ!」
「8月の、9日だよ――――」
その時だった。バチン、と部屋の明かりが突然消灯したんだ。
俺は、ハッとして息を飲む。耳にあてがう受話器からも何の物音もしなくなった。なんだ、何が起こってるんだ。咄嗟に思った。不気味な暗闇の虚空で、小野田と思しき声がぼそりとこぼした。
「ちくしょう。また宇宙船の異常か。ボロ小屋め……」
ゾッとして寒気を催す。いや、その正体こそわからないものの、不気味な気配を感じて鳥肌が立ってしまった。その感覚がむしょうに気持ち悪かった。得体の知れないものの気配がロボットハウスの中に突然ポッと現れた。それも目と鼻のすぐそばにある。怖い。ただそう思った。
「うひひひひひひひひひひ……」
高い声。甲高い声。すぐそばから聞こえる。俺は恐る恐るキッチンの奥の突き当りの暗黒を凝視する。そこには、暗闇にぼおっと浮き上がる。明るい何かがいた。
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