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初めてのおつかい 【山小屋編3】
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恐ろしいモノに出会うと、ヒトは自分の持つ最大の力でねじ伏せる。
これは当たり前の行動なのかもしれない。
なぜなら男たちはこの小さな幼女に恐怖を感じていた。
どこまでも立ち向かってくる強さ、目の色、声音……
どれもが今まで見たことがないモノだった。
だからこそ、腕を振り上げ、足を振り上げ、アレッタを黙らそうと最大の力を振りかざす。
だがアレッタは、床に投げ出されるも、再び振り上げられたその足に掴まり、蹴られまいと体を丸めた。そのため蹴られはしなかったが、軽い幼女の体は、難なく壁へと飛ばされていく。
鈍い音が鳴り、ずるりと床に落ちていく。
それでもむくりと立ち上がるアレッタ。
男の足が、後ろへずれる。
「……なんだ、このガキ……」
大の大人が、それも男が、怯えるのもしかたがない。
普通の子供であれば泣きわめき、逃げ回るだけだ。
なのに彼女は立ち上がり、さらに鋭く光る目は衰えない。
むしろ、口元が笑っている───
「……また、フィアに怒られるな……」
アレッタは口の端から流れる血をぬぐって、大きく唾を吐き出した。
血溜まりが床にべちゃりと跳ねる。
アレッタは再びトンファーを構え、体勢を整えた。
息を大きく吸いこむと、
「……エン、行くぞっ!」
掛け声とともにアレッタは小さな膝を踏み込んだ。
だがそんな彼女に、まるでおぞましいものを追い払うように、容赦なく棍棒や包丁が襲いかかる。
それをギリギリでかわしながら、エンが爪を振り、トンファーを振りかざし、この部屋にいる男3人を翻弄していく。
だがこの攻撃は致命傷にはならない。
ただの時間稼ぎだ。
アレッタのトンファーが脛を叩き、エンの爪が腕を引き裂く。
地味に削られていく体力、深くなる傷、諦めずに襲ってくる幼女に、男たちはもう声で脅すしかない。
「ガキがいい気になるなよ!!!!」
「殺すぞ、このガキ!!!!」
「ひねり潰せっ」
ひたすらに向かってくるアレッタに男たちの怒声が飛び、腕が振り回る。
部屋を駆け回りながら、アレッタは思っていた。
いくら怒鳴られても構わない。
彼らが逃げる時間が稼げればそれでいい。
………でも、なぜこんなことをしてしまったのだろう……
アレッタは肩を揺らし、息を整えながら、トンファーで刃を受け流して床を転がった。
服もドロドロだ。それでも立ち上がり、重くなり始めたトンファーを振りかざす。
───私はヒトだ。
もう、死ぬかもしれないのに……
あばらが軋んで、立つのも辛い……
「………うぉぉぉおおぉっ!!!!」
アレッタは唸り声をあげて、走り込んだ。
小さい体を利用し、膝を狙う。
「まずは、1人目……」
再び光る目が流れていく。
アレッタはテーブルの上に一気に飛び乗ると、振り下ろされた包丁を叩き割って、顔面に突きを入れた。
見事に眉間にはまったトンファーは、鼻を潰し、すぐに意識も潰せたようだ。
膝から落ちていく男を横目に、
「2人目……」
すぐに包丁が横に薙ぎ払われ、アレッタは足を踏ん張りのけぞった。
ブリッジした体をトンファーで支え、自身を掴もうとする手に向けて足を蹴りだす。
幼女の手のひらに満たない小さな足は、男の太い手首を捉えると、いとも簡単に圧し折ってしまう。
「………い、いってぇぇぇっ!!!! いでぇぇ……
……な、なんだこいつ……馬鹿力出しやがって……っ」
腕を抑えもがきながら、逆の手でナタを取り上げアレッタに投げつけた。アレッタは寸前でかわすも、水平に円を描く刃が頬をかすっていく。熱く焼ける頬を拭うことなく、ナタを投げたことで前屈みに崩れた男に向かってトンファーを振り下ろした。
体を弓なりにして振り下ろしたのに、横に転がり避けられる。
叩き込んだトンファーが台にめり込んだ。だがアレッタはすぐにそれをも持ち上げ、起き上がった男のみぞおち目掛けて突き押した。それはみぞおちにハマり、しっかりと食い込んでいく。
それを横目に3人目へとアレッタは視線をずらしたが、
……男の目が死んでいない……!!!
すぐに生きている手でトンファーが捕まれた。
がっちりと握られ、ビクともしない。
多少の脂肪と筋肉で、彼の腹は守られたのだ。
アレッタはトンファーをすぐに手放し、台から一気に飛び降りた。
なぜなら床に棍棒が落ちているからだ。
着地と同時に走り込むが、長い男の腕は、至極簡単にアレッタの襟首を掴みあげた。
幼女の歩幅は思っているよりも小さいのだ。
首を吊るように持ち上げられ、彼女が足をばたつかせるも全く離されない。
エンも爪を伸ばしアレッタの援護しようとするが、もう1人の男に布袋に詰め込まれてしまった。袋の中できゃんきゃんと喚くエンの声が虚しく響く。
両肩を抱えて捕まえられても、まだアレッタはもがき、諦めない。
この腕から逃れられれば……!!!
アレッタは渾身の力を込めて体を揺する。
だがそれはただ体力を消耗するだけで、足が床に着いてくれない。
さらに暴れるアレッタに、エンを捕まえた男の腕が飛んできた。
「黙ってろ、ガキっ!!!」
頬とみぞおちを殴られ、目をチカチカさせる。
言葉にならない声を漏らし、涎を流し、ぜえぜえと息を切らしながらも、落ちそうになる意識を無理やり起こし、殴った男を睨みつけた。
その目はまだ諦めていない。
絶対に逃げるという意識が途絶えない。
もう一発殴ろうと男が腕を振り上げたとき、
「おいっ!! やめろっ!!!」
濁る意識でアレッタは声の方を見た。
扉に男がいる。
明るい光を背負いながら現れた男は、
───エイビス………?
くっきりと現れた男の両脇に、ジャンとシルファが抱えられている。
だがシルファの頬は赤黒く腫れ、それでも暴れるシルファは逃れようと必死だ。
「………ったく、ガキ1人になにやってんだ、てめぇらっ!」
アレッタの思考が止まった。
………4人目が、いた……
あの忘れかけた絶望が、アレッタの足に再び縋りついた瞬間だった────
これは当たり前の行動なのかもしれない。
なぜなら男たちはこの小さな幼女に恐怖を感じていた。
どこまでも立ち向かってくる強さ、目の色、声音……
どれもが今まで見たことがないモノだった。
だからこそ、腕を振り上げ、足を振り上げ、アレッタを黙らそうと最大の力を振りかざす。
だがアレッタは、床に投げ出されるも、再び振り上げられたその足に掴まり、蹴られまいと体を丸めた。そのため蹴られはしなかったが、軽い幼女の体は、難なく壁へと飛ばされていく。
鈍い音が鳴り、ずるりと床に落ちていく。
それでもむくりと立ち上がるアレッタ。
男の足が、後ろへずれる。
「……なんだ、このガキ……」
大の大人が、それも男が、怯えるのもしかたがない。
普通の子供であれば泣きわめき、逃げ回るだけだ。
なのに彼女は立ち上がり、さらに鋭く光る目は衰えない。
むしろ、口元が笑っている───
「……また、フィアに怒られるな……」
アレッタは口の端から流れる血をぬぐって、大きく唾を吐き出した。
血溜まりが床にべちゃりと跳ねる。
アレッタは再びトンファーを構え、体勢を整えた。
息を大きく吸いこむと、
「……エン、行くぞっ!」
掛け声とともにアレッタは小さな膝を踏み込んだ。
だがそんな彼女に、まるでおぞましいものを追い払うように、容赦なく棍棒や包丁が襲いかかる。
それをギリギリでかわしながら、エンが爪を振り、トンファーを振りかざし、この部屋にいる男3人を翻弄していく。
だがこの攻撃は致命傷にはならない。
ただの時間稼ぎだ。
アレッタのトンファーが脛を叩き、エンの爪が腕を引き裂く。
地味に削られていく体力、深くなる傷、諦めずに襲ってくる幼女に、男たちはもう声で脅すしかない。
「ガキがいい気になるなよ!!!!」
「殺すぞ、このガキ!!!!」
「ひねり潰せっ」
ひたすらに向かってくるアレッタに男たちの怒声が飛び、腕が振り回る。
部屋を駆け回りながら、アレッタは思っていた。
いくら怒鳴られても構わない。
彼らが逃げる時間が稼げればそれでいい。
………でも、なぜこんなことをしてしまったのだろう……
アレッタは肩を揺らし、息を整えながら、トンファーで刃を受け流して床を転がった。
服もドロドロだ。それでも立ち上がり、重くなり始めたトンファーを振りかざす。
───私はヒトだ。
もう、死ぬかもしれないのに……
あばらが軋んで、立つのも辛い……
「………うぉぉぉおおぉっ!!!!」
アレッタは唸り声をあげて、走り込んだ。
小さい体を利用し、膝を狙う。
「まずは、1人目……」
再び光る目が流れていく。
アレッタはテーブルの上に一気に飛び乗ると、振り下ろされた包丁を叩き割って、顔面に突きを入れた。
見事に眉間にはまったトンファーは、鼻を潰し、すぐに意識も潰せたようだ。
膝から落ちていく男を横目に、
「2人目……」
すぐに包丁が横に薙ぎ払われ、アレッタは足を踏ん張りのけぞった。
ブリッジした体をトンファーで支え、自身を掴もうとする手に向けて足を蹴りだす。
幼女の手のひらに満たない小さな足は、男の太い手首を捉えると、いとも簡単に圧し折ってしまう。
「………い、いってぇぇぇっ!!!! いでぇぇ……
……な、なんだこいつ……馬鹿力出しやがって……っ」
腕を抑えもがきながら、逆の手でナタを取り上げアレッタに投げつけた。アレッタは寸前でかわすも、水平に円を描く刃が頬をかすっていく。熱く焼ける頬を拭うことなく、ナタを投げたことで前屈みに崩れた男に向かってトンファーを振り下ろした。
体を弓なりにして振り下ろしたのに、横に転がり避けられる。
叩き込んだトンファーが台にめり込んだ。だがアレッタはすぐにそれをも持ち上げ、起き上がった男のみぞおち目掛けて突き押した。それはみぞおちにハマり、しっかりと食い込んでいく。
それを横目に3人目へとアレッタは視線をずらしたが、
……男の目が死んでいない……!!!
すぐに生きている手でトンファーが捕まれた。
がっちりと握られ、ビクともしない。
多少の脂肪と筋肉で、彼の腹は守られたのだ。
アレッタはトンファーをすぐに手放し、台から一気に飛び降りた。
なぜなら床に棍棒が落ちているからだ。
着地と同時に走り込むが、長い男の腕は、至極簡単にアレッタの襟首を掴みあげた。
幼女の歩幅は思っているよりも小さいのだ。
首を吊るように持ち上げられ、彼女が足をばたつかせるも全く離されない。
エンも爪を伸ばしアレッタの援護しようとするが、もう1人の男に布袋に詰め込まれてしまった。袋の中できゃんきゃんと喚くエンの声が虚しく響く。
両肩を抱えて捕まえられても、まだアレッタはもがき、諦めない。
この腕から逃れられれば……!!!
アレッタは渾身の力を込めて体を揺する。
だがそれはただ体力を消耗するだけで、足が床に着いてくれない。
さらに暴れるアレッタに、エンを捕まえた男の腕が飛んできた。
「黙ってろ、ガキっ!!!」
頬とみぞおちを殴られ、目をチカチカさせる。
言葉にならない声を漏らし、涎を流し、ぜえぜえと息を切らしながらも、落ちそうになる意識を無理やり起こし、殴った男を睨みつけた。
その目はまだ諦めていない。
絶対に逃げるという意識が途絶えない。
もう一発殴ろうと男が腕を振り上げたとき、
「おいっ!! やめろっ!!!」
濁る意識でアレッタは声の方を見た。
扉に男がいる。
明るい光を背負いながら現れた男は、
───エイビス………?
くっきりと現れた男の両脇に、ジャンとシルファが抱えられている。
だがシルファの頬は赤黒く腫れ、それでも暴れるシルファは逃れようと必死だ。
「………ったく、ガキ1人になにやってんだ、てめぇらっ!」
アレッタの思考が止まった。
………4人目が、いた……
あの忘れかけた絶望が、アレッタの足に再び縋りついた瞬間だった────
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