18 / 65
第20話 動き出したエルフ
しおりを挟む
とんとんと背中をさすられること数分───
あまりの居心地の良さに、つい懐いていたことに莉子は気づいた。
『なぐさめてもらっても、現実は変わらない』
莉子は心をひきしめなおし、その場所から離れようと、イウォールの胸を押した。
押しのけようと莉子は腕を突き出したつもりだ。
……が、びくともしない。
これが2メートルの男の力───
どんなに華奢に見えても、2メートルは2メートルだ。
莉子はこれはまずいと、暴れるようにもがく。
「ぼ、ぼう、だいじょぶでずがら!」
「もう少し私の胸で泣いていてください。考えがまとまりそうなので。むしろ、いつでも抱きしめるので、ぜひこれから慣れてください」
「ちょ……! 大丈夫ですって!」
さらに暴れようとするが、イウォールに再び優しく抱きとめられてしまう。
「さあ、リコ、ここを立退かなくても大丈夫です。安心してください」
「へ? それは、ど、どういう……?」
「この名案の礼と、婚姻の印に口づけを……」
莉子の強引な足払いが決まるが、イウォールの動きは早かった。
スマホ片手に呼び出したのは、あの3人だ。
会社の近くのタワーマンションに住んでいるだけあって、集合は想像よりも早かった。
ケレヴの黒塗りの高級外車で莉子のカフェに乗り付けたが、連絡してから10分も経っていない。
到着した3人だが……
「今日ランチなしの日だろ? だから昼からデート入れたのに、なんなんだよ、イウォール!」
イライラをそのままぶつけてくるのはケレヴだ。
「ランチ食べれるの、ね? オレ、ビーフシチュー!」
ご飯のことしか頭にないのは、トゥーマだ。
「なにか問題があったんですよね? ……大丈夫ですか、リコさん?」
一番の常識人は、アキラだけのようだ。
「とりあえず、黙れケレヴ。デートはキャンセルしろ。トゥーマ、昼飯はまだだ。アキラはよろしい」
近くのテーブルに3人を座らせると、イウォールは眉をくいっと釣り上げた。
「さあ、お前たち3人に問おう。お前たちは、ここのカフェがなくなるのことを望むか?」
莉子が作り置きしている麦茶を飲みながら、ケルヴは首を横に振る。
「それは……俺は嫌かな。まだパスタ食ってねぇしな、俺」
トゥーマはぐっと顔つきが険しくなった。
「オレも嫌! だってオレ、常連になるって約束したし」
アキラは悲しそうに眉をハの字につくる。
「僕も嫌です。こんな食事ができるカフェが会社の近くにあるのに、なくなるなんて……本当ですか、リコさん?」
その3人の返答にイウォールは満足げだ。
ふふんと笑いながら、テーブルにあの用紙をすべらせた。
「これを見ろ」
立退き期限が書かれた用紙で、日付にマーカーも引いてある。
その日付は、7月31日。
それまでに撤退をすること、仰々しく記されている。
最後に並ぶのは、ラハ製薬の文字だ───
「……ラハかよ。こんなもん、物理でぶっ潰す!」
青筋を立てながら拳をばちんと鳴らしたのはケレヴだ。
さすが大将。肉弾戦に持っていく気のようだ。
「あいつらこすいんだよ……。この際だから、会社ごと乗っ取ろうぜ……幹部引っこ抜いて、ラハを裸にひん剥いてやる……」
トゥーマの表情は黒い。しかも実行できる力があるのがわかる。
「ちょっと、ここじゃ魔法だって使えないんだから。……もうさ、向こう戻って、領土ごと貰わない? 今から侵略すれば圧勝じゃん。奇襲作戦なら、僕、かなりいい案があるんだ」
一番腹黒いのはアキラのようだ。優しい笑顔でひどいことを吐き捨てている。
「気持ちはわかるが、ここはここのやり方だ」
ピシャリと言われ、3人は一度大人しくなるものの、黒い闘志は失われていない。
莉子は4人の顔をそれぞれに眺めるが、一体、何がどうなっているのか掴みどろこがない。
ただイウォールは優しく微笑み、任せてと言うように、胸に手を当て、ゆっくりとまばたきをした。
あまりの居心地の良さに、つい懐いていたことに莉子は気づいた。
『なぐさめてもらっても、現実は変わらない』
莉子は心をひきしめなおし、その場所から離れようと、イウォールの胸を押した。
押しのけようと莉子は腕を突き出したつもりだ。
……が、びくともしない。
これが2メートルの男の力───
どんなに華奢に見えても、2メートルは2メートルだ。
莉子はこれはまずいと、暴れるようにもがく。
「ぼ、ぼう、だいじょぶでずがら!」
「もう少し私の胸で泣いていてください。考えがまとまりそうなので。むしろ、いつでも抱きしめるので、ぜひこれから慣れてください」
「ちょ……! 大丈夫ですって!」
さらに暴れようとするが、イウォールに再び優しく抱きとめられてしまう。
「さあ、リコ、ここを立退かなくても大丈夫です。安心してください」
「へ? それは、ど、どういう……?」
「この名案の礼と、婚姻の印に口づけを……」
莉子の強引な足払いが決まるが、イウォールの動きは早かった。
スマホ片手に呼び出したのは、あの3人だ。
会社の近くのタワーマンションに住んでいるだけあって、集合は想像よりも早かった。
ケレヴの黒塗りの高級外車で莉子のカフェに乗り付けたが、連絡してから10分も経っていない。
到着した3人だが……
「今日ランチなしの日だろ? だから昼からデート入れたのに、なんなんだよ、イウォール!」
イライラをそのままぶつけてくるのはケレヴだ。
「ランチ食べれるの、ね? オレ、ビーフシチュー!」
ご飯のことしか頭にないのは、トゥーマだ。
「なにか問題があったんですよね? ……大丈夫ですか、リコさん?」
一番の常識人は、アキラだけのようだ。
「とりあえず、黙れケレヴ。デートはキャンセルしろ。トゥーマ、昼飯はまだだ。アキラはよろしい」
近くのテーブルに3人を座らせると、イウォールは眉をくいっと釣り上げた。
「さあ、お前たち3人に問おう。お前たちは、ここのカフェがなくなるのことを望むか?」
莉子が作り置きしている麦茶を飲みながら、ケルヴは首を横に振る。
「それは……俺は嫌かな。まだパスタ食ってねぇしな、俺」
トゥーマはぐっと顔つきが険しくなった。
「オレも嫌! だってオレ、常連になるって約束したし」
アキラは悲しそうに眉をハの字につくる。
「僕も嫌です。こんな食事ができるカフェが会社の近くにあるのに、なくなるなんて……本当ですか、リコさん?」
その3人の返答にイウォールは満足げだ。
ふふんと笑いながら、テーブルにあの用紙をすべらせた。
「これを見ろ」
立退き期限が書かれた用紙で、日付にマーカーも引いてある。
その日付は、7月31日。
それまでに撤退をすること、仰々しく記されている。
最後に並ぶのは、ラハ製薬の文字だ───
「……ラハかよ。こんなもん、物理でぶっ潰す!」
青筋を立てながら拳をばちんと鳴らしたのはケレヴだ。
さすが大将。肉弾戦に持っていく気のようだ。
「あいつらこすいんだよ……。この際だから、会社ごと乗っ取ろうぜ……幹部引っこ抜いて、ラハを裸にひん剥いてやる……」
トゥーマの表情は黒い。しかも実行できる力があるのがわかる。
「ちょっと、ここじゃ魔法だって使えないんだから。……もうさ、向こう戻って、領土ごと貰わない? 今から侵略すれば圧勝じゃん。奇襲作戦なら、僕、かなりいい案があるんだ」
一番腹黒いのはアキラのようだ。優しい笑顔でひどいことを吐き捨てている。
「気持ちはわかるが、ここはここのやり方だ」
ピシャリと言われ、3人は一度大人しくなるものの、黒い闘志は失われていない。
莉子は4人の顔をそれぞれに眺めるが、一体、何がどうなっているのか掴みどろこがない。
ただイウォールは優しく微笑み、任せてと言うように、胸に手を当て、ゆっくりとまばたきをした。
0
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています
黒崎隼人
ファンタジー
Sランク勇者パーティのお荷物扱いされ、「ゴミスキル」と罵られて追放された鑑定士のアッシュ。
失意の彼が覚醒させたのは、森羅万象を見通し未来さえも予知する超チートスキル【万物鑑定】だった!
この力を使い、アッシュはエルフの少女や凄腕の鍛冶師、そして伝説の魔獣フェンリル(もふもふ)といった最強の仲間たちを集め、辺境の町を大発展させていく。
一方、彼を追放した勇者たちは、アッシュのサポートを失い、ダンジョンで全滅の危機に瀕していた――。
「今さら戻ってこい? お断りだ。俺はこっちで幸せにやってるから」
底辺から駆け上がる痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜
k-ing /きんぐ★商業5作品
ファンタジー
2023/5/26 男性向けホトラン1位になりました!
読みやすくするために一話の文字数少なめです!
頭を空っぽにして読んで頂けると楽しめます笑
王族は英才教育によって才能を開花する。そんな王族に生まれたアドルは成人しても才能が開花しなかった。
そんなアドルには友達と言える人は誰もおらず、孤独な日々を送っていた。
ある日、王である父親に好きに生きるようにと、王族から追放される。
ただ、才能に気づいていないのは王のみだった。
地図で一番奥にある辺境の島から、王国に戻りながら旅をしたら才能に気づくだろう。
そんなつもりで旅をしたが、着いた島は地図上にない島だった。
そこには存在しないと思われるもふもふ達が住む島だった。
帰ることもできないアドルはもふもふ達と暮らすことを決意する。
あれ?
こいつらも少し頭がおかしいぞ?
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる