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第21話 エルフの内情と、提案
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「あ、あの、ラハ製薬と、なにかあるんですか……?」
莉子のこわばった声に、イウォールは笑って答えた。
「私たちの領地は北、ラハは南を治めています。山脈を隔てて、我々は常に敵対していました。同じ国民ではあるのですが、やはり馴染めない土地柄というのはあるのです。戦争まではいかなくとも、少なからずなにかしらのイザコザは常にあるもので……。特に向こうからしかけてくるものですから。こちらとしては、さっさとつぶしてしまいたいのですが、国王が平和主義なもので、なかなかそうもならず……」
遠くを見つめ話すイウォールの表情を読みとる。
あまりに深い目の色に、かなりの因縁や確執があるのがわかる。
意外とエルフも人間くさいんだな、と莉子は思うが、それほど簡単なものでもないのだろう。
「……結構、根深そうですね」
イウォールはその莉子の言葉に、大きくうなずいた。
「はい。ですので、今回、ラハが絡んでいるなら、きっちりと我々はこの店を守らせていただきます。むしろこれを機に、どうにか叩き伏せたい……」
イウォールからもにじむ黒い思惑に、莉子はただならぬ状況ではと、顔を青くするが、ケレヴが莉子の肩を叩いて笑った。
「安心しろ。一応、ここでのルールは守るしな」
「その、ここのルールってなんですか?」
「魔術禁止、のルールです」
イウォールは莉子の手をとり、掌にくるりと文字をなぞった。
そこに浮かんだのはよくファンタジーである魔術展開とよばれる魔法陣だ。
「……わぁ」
莉子の掌に魔法陣から半透明の赤い小人が浮かび上がった。
それは赤い髪を流しながら優美に踊っている。
あまりの美しい姿に見惚れてしまう。
「はい、おしまい」
イウォールがふっと息を吹きかけると、それはふわりと消えてしまった。
「あー……もう少し見たかったのに」
「今度、私の部屋で手取り足取り、見させてあげますよ」
「それは結構」
莉子がイウォールから一歩距離をとる。
一歩迫ろうとするイウォールを阻むように、すかさずアキラが体をすべりこませた。
「マスター・イウォール、セクハラになりますよ……!」
アキラは本当に優しく気遣いができるいい子だと、莉子は強く思う。
「ん? さっき魔術禁止って言ってましたよね?」
そうです。アキラは首を縦に振る。
「先程のはまだ見せる魔法ですから問題ありません。ただ、攻撃魔法も、もちろんあります。マスター・イウォールは国家魔導師であるため、魔術のプロです。プロボクサーが喧嘩できないのと一緒で、蚊を殺すような弱くて小さな攻撃魔法でも、扱えばすぐ僕たちの国が感知、通報されるシステムになっています」
「……感知されると?」
「投獄ののち、裁判はありますが、基本的に死罪となります」
「……死罪……」
エルフの国のルールの厳しさに、莉子は言葉をなくしてしまう。
「で、でも、攻撃魔法さえ使わなければ、大丈夫なんで!」
重くとらえた莉子にアキラは、慌ててつけたした。
それでも莉子のなかで納得ができないのか、小さくうなっている。
「ひどくないです? 正当防衛のときもあると思うんですけど」
「攻撃魔法っていうのは、何かを傷つける魔法だからな……正当防衛でも、永久投獄は間違いないな」
ケレヴの声に莉子はご立腹だ。
「それ、酷くないです?」
よしよしとイウォールが莉子の頭をなでる。
「ここの世界ではそれだけ脅威なんですよ。銃を持てない日本で、バズーカを持ち歩いてるようなものですから」
イウォールは子供に言い聞かせるように莉子に言うが、逆にそれほどまでの力が異世界にはあると思うと、少し背筋が寒くなる。
「だからなー、ここなりの方法でアイツらを潰すしかないんだが、イウォール、お前の策はどんなものなんだ?」
ケルヴの声に、イウォールは眼鏡を上げてこたえた。
「ここをエルフにも使えるカフェにする」
莉子にとってそれはとても魅力的な提案だった。
だけれど、それをすることで、どう、この店を守れるのだろう……?
莉子のこわばった声に、イウォールは笑って答えた。
「私たちの領地は北、ラハは南を治めています。山脈を隔てて、我々は常に敵対していました。同じ国民ではあるのですが、やはり馴染めない土地柄というのはあるのです。戦争まではいかなくとも、少なからずなにかしらのイザコザは常にあるもので……。特に向こうからしかけてくるものですから。こちらとしては、さっさとつぶしてしまいたいのですが、国王が平和主義なもので、なかなかそうもならず……」
遠くを見つめ話すイウォールの表情を読みとる。
あまりに深い目の色に、かなりの因縁や確執があるのがわかる。
意外とエルフも人間くさいんだな、と莉子は思うが、それほど簡単なものでもないのだろう。
「……結構、根深そうですね」
イウォールはその莉子の言葉に、大きくうなずいた。
「はい。ですので、今回、ラハが絡んでいるなら、きっちりと我々はこの店を守らせていただきます。むしろこれを機に、どうにか叩き伏せたい……」
イウォールからもにじむ黒い思惑に、莉子はただならぬ状況ではと、顔を青くするが、ケレヴが莉子の肩を叩いて笑った。
「安心しろ。一応、ここでのルールは守るしな」
「その、ここのルールってなんですか?」
「魔術禁止、のルールです」
イウォールは莉子の手をとり、掌にくるりと文字をなぞった。
そこに浮かんだのはよくファンタジーである魔術展開とよばれる魔法陣だ。
「……わぁ」
莉子の掌に魔法陣から半透明の赤い小人が浮かび上がった。
それは赤い髪を流しながら優美に踊っている。
あまりの美しい姿に見惚れてしまう。
「はい、おしまい」
イウォールがふっと息を吹きかけると、それはふわりと消えてしまった。
「あー……もう少し見たかったのに」
「今度、私の部屋で手取り足取り、見させてあげますよ」
「それは結構」
莉子がイウォールから一歩距離をとる。
一歩迫ろうとするイウォールを阻むように、すかさずアキラが体をすべりこませた。
「マスター・イウォール、セクハラになりますよ……!」
アキラは本当に優しく気遣いができるいい子だと、莉子は強く思う。
「ん? さっき魔術禁止って言ってましたよね?」
そうです。アキラは首を縦に振る。
「先程のはまだ見せる魔法ですから問題ありません。ただ、攻撃魔法も、もちろんあります。マスター・イウォールは国家魔導師であるため、魔術のプロです。プロボクサーが喧嘩できないのと一緒で、蚊を殺すような弱くて小さな攻撃魔法でも、扱えばすぐ僕たちの国が感知、通報されるシステムになっています」
「……感知されると?」
「投獄ののち、裁判はありますが、基本的に死罪となります」
「……死罪……」
エルフの国のルールの厳しさに、莉子は言葉をなくしてしまう。
「で、でも、攻撃魔法さえ使わなければ、大丈夫なんで!」
重くとらえた莉子にアキラは、慌ててつけたした。
それでも莉子のなかで納得ができないのか、小さくうなっている。
「ひどくないです? 正当防衛のときもあると思うんですけど」
「攻撃魔法っていうのは、何かを傷つける魔法だからな……正当防衛でも、永久投獄は間違いないな」
ケレヴの声に莉子はご立腹だ。
「それ、酷くないです?」
よしよしとイウォールが莉子の頭をなでる。
「ここの世界ではそれだけ脅威なんですよ。銃を持てない日本で、バズーカを持ち歩いてるようなものですから」
イウォールは子供に言い聞かせるように莉子に言うが、逆にそれほどまでの力が異世界にはあると思うと、少し背筋が寒くなる。
「だからなー、ここなりの方法でアイツらを潰すしかないんだが、イウォール、お前の策はどんなものなんだ?」
ケルヴの声に、イウォールは眼鏡を上げてこたえた。
「ここをエルフにも使えるカフェにする」
莉子にとってそれはとても魅力的な提案だった。
だけれど、それをすることで、どう、この店を守れるのだろう……?
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