老舗カフェ「R」〜モノクロの料理が色づくまで〜

yolu

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第39話 エルフ祭り最終日

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 本日、7月19日、日曜日。『エルフ祭り』のみの営業だ。
 カレンダーに×印をつけたイウォールが腕組みをしながら唸っている。

「このタイミングでこのイベントは大きな成果になるな……」
「イウォールさん、エリシャさんにお礼言わなきゃダメですね」
「え、いや、私だって、考えていたんだぞ?」

 軽食中心の今日は、各種サンドイッチ、マカロニサラダなど、ちょっぴりこってりしていながら食べやすいものをはじめ、いつも頼んでいる洋菓子店よりケーキも準備している。今日は5種類のケーキだが、スクエア型に作ってもらい、こちらで切り分けて出していく予定だ。

「……あの、イウォールさん、」
「なんだ、リコ」
「今日のケーキって、あたしたち作ってないから、モノクロになっちゃうってことですよね?」

チッ! チッ! チッ!

 指を立てて舌を鳴らしたイウォールは、背中から白い粉の袋を莉子へと掲げる。

「これを見て欲しい、リコ」
「……やばい、粉、ですか……」
「そう、やばい粉だ!」
「ちょ、製薬会社だからって、ダメですよ、そんな粉!!!!」

 焦りながら、その粉を奪おうとする莉子にイウォールは目を点にする。

「リコ、これは粉砂糖だ。粉糖。砂糖。わかる?」
「……え」
「私は今日のために、必死に魔力を与え続けた粉糖なんだ!!!! これを振りかければ、カラーに見えるんだよ!」
「……はぁ」
「感動が薄いな、リコ」
「いや、なんか拍子抜けっていうか……」

 2人は気を引き締め直し作業を開始していくが、唐突に莉子の独り言が止まらなくなる。

「皿よし、グラスよし、ワインは大丈夫、水も大丈夫。水出しコーヒーはボトルにできるだけ作ったし、アイスティーも作ったし……ノンアルのフルーツポンチも、あと炭酸注げばオーケーでしょ? あとは、サラダと揚げ物いるかな? いや、それよりもフルーツの切り出しと……」
「リコ、焦るな。準備は大丈夫だ。もうすぐケレヴたちも来る。店内は彼らに任せればいい」
「そそそそそそそうだけど、もしかすると家族連れとかあるかなって……! 立食スタイル、大丈夫かなぁ。あ! フライドポテトも作らなきゃ」
「なるほどな。では、店内の人数制限を昨日と同じくかけながら、テーブル席を増やそう。ドリンクは外で渡すやり方はそのままでいこう。テイクアウトのドリンクなら、別にエルフ以外に売っても問題ないしな。リコはさすがだな!」
「い、いえ、そんなことは……」

 イウォールが心配事をなくすように言葉にしてくれることで、莉子は安心したのか、息をゆっくりと整えていく。
 その肩をイウォールはなでながら、

「大丈夫だ、私がいる。いや、私だけじゃなく、このイベントを成功させたいと、みんな思っている。私はリコの将来の夫だからな、全て成功させるにきま」
「頑張ります、あたし!」

 莉子がイウォールの声を遮りながら、裏拳で顎を振り抜いたとき、ドアがいきなり、バーン! と開いた。

「私が来たわーーー!!! 今日こそは、勝つわよっ」
「……おはよう、リコ、イウォール。エリシャ、ずっとはしゃいでる。うるさい」
「うるさいって言わないでちょうだいよ、カーレン。私との仲でしょ?」
「……だから言うの。うるさい」

 2人のやりとりに温度差を感じるが、これが2人の距離感なのだろう。
 莉子が一息つこうと、コーヒーをいれにカウンターに入ったとき、ケレヴとトゥーマ、そして、アキラも現れた。

「おっす。コーヒーくれるの? じゃ、俺、ミルク多めで。……よし、先にテーブル移動すっか。トゥーマ、アキラ、ドリンク運べよ」
「やるけど、重いのはケレヴが持てよ。オレとトゥーマは外の席、作ってくるから」
「はぁ? 老体に重いもの持たせんなよ」
「ケレヴが老体なら、マスター・イウォールは仙人ですね」
「アキラ、聞こえたぞ。私はケレヴとは、200くらいしか離れていない」

 エルフジョークというやつだろうか。
 年齢の概念が壊れていく気がする。
 莉子は彼らの会話を切り離し、コーヒーをいれて一服すると、改めて今日の客層の予想をしながら作業を進めていく───
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