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054.伝言
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「覚えておけよ!」
敵対する勢力の人間からボスへと伝言を預かった。その言葉を伝えようと走った矢先、運悪く怪異に囚われてしまった。
これでは伝言を伝えられない……。死んでからも使命感に燃えていた俺は落胆した。しかし、この状況はどう言った事だろう。俺は死んだはずなのに、こうして街に立って意識がある。
恐れを感じつつ怪異が潜んでいた路地に戻る。不幸なことに、俺と同様身体を貪り食われている哀れな人間が底にいた。悲鳴。そして肉を咀嚼される音。怪異は満足したのかその場を離れてしまった。
路地には食われた人間が残っていた。元の通りではない。脚を失い半透明になったその姿は幽鬼そのものだった。手や身体を眺めて落胆する人間。そのまま、怪異と同様にその場を後にして行った。
――そうか、身体無き魂となったのか!
怪異は肉体だけを食べ、魂を食らわなかった。だから、肉体を失っても、ここで意識は存在しているのだ。
この姿ならば、ボスの元までたどり着けるはずだ。事務所はそう遠くない。魂が消えないうちに伝言を届ける。そうすれば俺の任務は終了で、運よく意識を保ったままでいられれば組織に残って忠義を果たすことも可能だ……。
俺は再び、走った。
***
一時間前から護摩を焚き、祈祷師が呪文を唱えている。二重に結界を張っているからいいものの、窓の外では黒く粘った影が入りこむ隙を探して身体を這わせていた。
「敵対組織に殺されたくらいでオヤジを恨んで帰ってくる奴なんぞ初めてだぞ」
「よっぽど裏切られたと思ったんでしょうね」
「この先、怨霊になるやつがどんどん出たら、とんでもないことになりますな」
***
事務所には入れなかった。ボスは窓の向こうで祈祷師を侍らせている。
俺は窓を開き、ボスへと預かった伝言を伝えるべく、黒く変色した魂を揺らめかせている。
敵対する勢力の人間からボスへと伝言を預かった。その言葉を伝えようと走った矢先、運悪く怪異に囚われてしまった。
これでは伝言を伝えられない……。死んでからも使命感に燃えていた俺は落胆した。しかし、この状況はどう言った事だろう。俺は死んだはずなのに、こうして街に立って意識がある。
恐れを感じつつ怪異が潜んでいた路地に戻る。不幸なことに、俺と同様身体を貪り食われている哀れな人間が底にいた。悲鳴。そして肉を咀嚼される音。怪異は満足したのかその場を離れてしまった。
路地には食われた人間が残っていた。元の通りではない。脚を失い半透明になったその姿は幽鬼そのものだった。手や身体を眺めて落胆する人間。そのまま、怪異と同様にその場を後にして行った。
――そうか、身体無き魂となったのか!
怪異は肉体だけを食べ、魂を食らわなかった。だから、肉体を失っても、ここで意識は存在しているのだ。
この姿ならば、ボスの元までたどり着けるはずだ。事務所はそう遠くない。魂が消えないうちに伝言を届ける。そうすれば俺の任務は終了で、運よく意識を保ったままでいられれば組織に残って忠義を果たすことも可能だ……。
俺は再び、走った。
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一時間前から護摩を焚き、祈祷師が呪文を唱えている。二重に結界を張っているからいいものの、窓の外では黒く粘った影が入りこむ隙を探して身体を這わせていた。
「敵対組織に殺されたくらいでオヤジを恨んで帰ってくる奴なんぞ初めてだぞ」
「よっぽど裏切られたと思ったんでしょうね」
「この先、怨霊になるやつがどんどん出たら、とんでもないことになりますな」
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