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その理由が分かったのは高校に入ってからだ。
勉学に励むこともなく、しかし適度にさぼった結果、学はさして高くもない偏差値の高校に入学することになった。中学の同級生に距離をとられていたことが気まずく、知り合いのいない学校を選択した。環境が変わればどうにかなるだろう。それが失敗だったと気付いたのは入学してすぐの事だ。
中学生活で一線を画されて生活していたものの、同級生のほとんどは学の人となりを知っている人間だったのである。しかし、高校は違った。新天地では学を知る人間はいない。学を知らない学生たちは、初めて学を見たのだった。
顔へと向けられるのは羨望の視線だ。恋愛には疎い学であるが、向けられる目の異様さにはすぐに気が付いた。学生は皆、学の顔を見て恍惚の表情を浮かべていた。
ある者は学の顔を見て驚嘆し、ある者はのぼせ上り、ある者はその顔を崇拝した。自分の顔がはっきりと人と違うことに気が付いたのはその時だった。そこに、学という存在はなかった。そこには学の美しい顔だけが存在していたのだ。
学校中のその視線に気が付いてから、学は意図的に姿を隠すようになった。直接的な危害を加えられてはいないが、学の体質上、注目を集めるのも、劣情を押し付けられるのも厄介だった。昼はクラスを抜け出して一人で場所を変えて昼食を食べ、放課後はそそくさと帰宅する。友達と交流するどころではない。
学校に居場所がないことがすぐにわかった。それは、学から学校という物への関心を奪ったのだった。学校、それから勉強自体への意欲を失った結果、学は勉学以外の方向に興味を伸ばして現実逃避をすることになった。
好きな音楽、そして好きなバンドに憧れてベースを弾き始める。音楽活動は気晴らしになり、学がベースにのめりこむのは必然だったと言える。自宅での練習では飽き足らず、学校にベースを持ち込み昼休みに練習をするほどになっていた。
音楽を一人で楽しむのはやや寂しい。軽音部があるのは知っていたが、自分が参加しても居場所がないと思って、学は参加しなかった。
転機があったのは高校二年生の夏だった。どこから聞きつけたのか、ある日、階段で過ごしているとサングラスをかけた三人組に取り囲まれたのだ。
「えっ、何……」
サングラスの一人が学に近寄った。サングラスが上がると三白眼がこちらを覗き込んでいる。学の顔を見て、きれーな顔と表現した学生は、あぶねーあぶねーと言いながらサングラスをかけ直した。
そして、学にもサングラスをかけた。
「今日からお前もサングラッシーズの一員な」
同じ学年だという男は二佳と名乗り、軽音部でベースを探していると話す。学の演奏をそこそこうまい! と評した二佳は学をバンドに引き入れた。全員サングラスをかけたバンド──サングラッシーズは大いに盛り上がり、学は学校に入ってから初めて楽しいと思える時間を過ごすことができた。それ以外の生活では相変わらず距離は置かれていたものの、学には確かに居場所があった。
高校時代に勉学に励まなかったこともあり、大学入試は非常に苦戦することとなった。学は小学校の頃を思い出し、あれだけ意欲的に手を上げていたのだから、どうにか乗り切れるはずだと試験勉強に明け暮れることとなった。紙試験は乗り切り、面接にも臨んだ。
面接ではやはり試験官が呆然として話は進まなかった。学はここにきて初めて、自分の顔を利用して面接を突破しようと考えていた。
呆然とされるのは慣れっこだ。だったら、それを逆手にとればいい。学は積極性を見せ、顔が難点なのでサングラスを掛けさせてほしいと進み出た。顔を隠した学を前に、ぼんやりとしていた面接教官は正気をとりもどし、学はまともに面接を受けることができたのだった。
結果は合格。ちなみに、この措置は大学に入学してからも続き、現在、学が受講している授業を受け持つ教授や講師のほとんどはサングラスをかけて授業をしている。
そんな紆余曲折ある経歴を学は持っている。いるだけで人を狂わせるような美貌の顔。使いようで上手く人生が周りそうな特徴を備えている学だったが、さらに一つ難点があった。
勉学に励むこともなく、しかし適度にさぼった結果、学はさして高くもない偏差値の高校に入学することになった。中学の同級生に距離をとられていたことが気まずく、知り合いのいない学校を選択した。環境が変わればどうにかなるだろう。それが失敗だったと気付いたのは入学してすぐの事だ。
中学生活で一線を画されて生活していたものの、同級生のほとんどは学の人となりを知っている人間だったのである。しかし、高校は違った。新天地では学を知る人間はいない。学を知らない学生たちは、初めて学を見たのだった。
顔へと向けられるのは羨望の視線だ。恋愛には疎い学であるが、向けられる目の異様さにはすぐに気が付いた。学生は皆、学の顔を見て恍惚の表情を浮かべていた。
ある者は学の顔を見て驚嘆し、ある者はのぼせ上り、ある者はその顔を崇拝した。自分の顔がはっきりと人と違うことに気が付いたのはその時だった。そこに、学という存在はなかった。そこには学の美しい顔だけが存在していたのだ。
学校中のその視線に気が付いてから、学は意図的に姿を隠すようになった。直接的な危害を加えられてはいないが、学の体質上、注目を集めるのも、劣情を押し付けられるのも厄介だった。昼はクラスを抜け出して一人で場所を変えて昼食を食べ、放課後はそそくさと帰宅する。友達と交流するどころではない。
学校に居場所がないことがすぐにわかった。それは、学から学校という物への関心を奪ったのだった。学校、それから勉強自体への意欲を失った結果、学は勉学以外の方向に興味を伸ばして現実逃避をすることになった。
好きな音楽、そして好きなバンドに憧れてベースを弾き始める。音楽活動は気晴らしになり、学がベースにのめりこむのは必然だったと言える。自宅での練習では飽き足らず、学校にベースを持ち込み昼休みに練習をするほどになっていた。
音楽を一人で楽しむのはやや寂しい。軽音部があるのは知っていたが、自分が参加しても居場所がないと思って、学は参加しなかった。
転機があったのは高校二年生の夏だった。どこから聞きつけたのか、ある日、階段で過ごしているとサングラスをかけた三人組に取り囲まれたのだ。
「えっ、何……」
サングラスの一人が学に近寄った。サングラスが上がると三白眼がこちらを覗き込んでいる。学の顔を見て、きれーな顔と表現した学生は、あぶねーあぶねーと言いながらサングラスをかけ直した。
そして、学にもサングラスをかけた。
「今日からお前もサングラッシーズの一員な」
同じ学年だという男は二佳と名乗り、軽音部でベースを探していると話す。学の演奏をそこそこうまい! と評した二佳は学をバンドに引き入れた。全員サングラスをかけたバンド──サングラッシーズは大いに盛り上がり、学は学校に入ってから初めて楽しいと思える時間を過ごすことができた。それ以外の生活では相変わらず距離は置かれていたものの、学には確かに居場所があった。
高校時代に勉学に励まなかったこともあり、大学入試は非常に苦戦することとなった。学は小学校の頃を思い出し、あれだけ意欲的に手を上げていたのだから、どうにか乗り切れるはずだと試験勉強に明け暮れることとなった。紙試験は乗り切り、面接にも臨んだ。
面接ではやはり試験官が呆然として話は進まなかった。学はここにきて初めて、自分の顔を利用して面接を突破しようと考えていた。
呆然とされるのは慣れっこだ。だったら、それを逆手にとればいい。学は積極性を見せ、顔が難点なのでサングラスを掛けさせてほしいと進み出た。顔を隠した学を前に、ぼんやりとしていた面接教官は正気をとりもどし、学はまともに面接を受けることができたのだった。
結果は合格。ちなみに、この措置は大学に入学してからも続き、現在、学が受講している授業を受け持つ教授や講師のほとんどはサングラスをかけて授業をしている。
そんな紆余曲折ある経歴を学は持っている。いるだけで人を狂わせるような美貌の顔。使いようで上手く人生が周りそうな特徴を備えている学だったが、さらに一つ難点があった。
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