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1「祖父の頼みごと」
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子供の頃の夢って覚えているだろうか。俺は忘れてしまった。そもそも夢なんてなかったのかもしれない。
夢。
夢なんてものは夜に見るだけでいい。現実に夢なんて言葉を持ち込むべきじゃない。それは危険なことだ。
だって夢なんて叶わないじゃないか。夢を持たない私がいうのもおかしなことだが、夢は叶わない。そんなものを持つことは危険だ。
そうは思わないか?
♦︎♦︎♦︎
「ねえ、人形って好き?」
エリカは不躾に私を無表情に見据えて、そんな質問をする。私はやれやれ、といった感じで肩をすくめて見せてから、質問に答える。
「好きだよ。首を反対側に曲げたり、腕をもぎ取ったりできるからね」
端正な顔を一瞬しかめたあと、彼女はまた尋ねる。
「それって楽しい?」
「オフコース」
それを聞いた彼女は満足そうに微笑んだ後、手に持ったキャンディーを舐めた。
「おい、お前ら。昼間っから遊んでるんじゃない!」
ああ、祖父だ。たっぷりと蓄えた口ひげが威厳を醸し出している。彼はいつも私たちを咎める。正直うんざりしているが、悪い人じゃない。
いつも通り口先だけの謝罪をした。なんだか口惜しく、落ち着かない。いつもの癖でまた爪を噛んだ。
祖父はまだ立ち去ってくれない。まだ何か用があるのだろうか。
「なあ、お前ら。ちょっと頼まれごとをしてくれないか?」
「なんだよ」
「この村の外れに大きな館があるだろう? あそこはもう人が住まなくなって久しい。放っておいても朽ちるだけだから、手入れをして欲しいんだ」
「いいけど。報酬は?」
「ボランティアって、いいものだぞ」
「嫌。そういうの偽善者みたい」
「そうだな。俺も嫌いだ」
「わかったよ! 少ないけどお金を用意しておこう」
私たちは祖父からよく頼まれごとをされる。それを毎回快く引き受けてやるのだが、何も喜んでやっているわけではない。彼の頼みを断ることが苦手なのだ。私は。
「面倒なこと頼まれたな。さっさと終わらそうぜ」
「ねえ、その館に面白そうなものあったらもらっておこうよ」
私たちはすぐに館へ向かう。
夢。
夢なんてものは夜に見るだけでいい。現実に夢なんて言葉を持ち込むべきじゃない。それは危険なことだ。
だって夢なんて叶わないじゃないか。夢を持たない私がいうのもおかしなことだが、夢は叶わない。そんなものを持つことは危険だ。
そうは思わないか?
♦︎♦︎♦︎
「ねえ、人形って好き?」
エリカは不躾に私を無表情に見据えて、そんな質問をする。私はやれやれ、といった感じで肩をすくめて見せてから、質問に答える。
「好きだよ。首を反対側に曲げたり、腕をもぎ取ったりできるからね」
端正な顔を一瞬しかめたあと、彼女はまた尋ねる。
「それって楽しい?」
「オフコース」
それを聞いた彼女は満足そうに微笑んだ後、手に持ったキャンディーを舐めた。
「おい、お前ら。昼間っから遊んでるんじゃない!」
ああ、祖父だ。たっぷりと蓄えた口ひげが威厳を醸し出している。彼はいつも私たちを咎める。正直うんざりしているが、悪い人じゃない。
いつも通り口先だけの謝罪をした。なんだか口惜しく、落ち着かない。いつもの癖でまた爪を噛んだ。
祖父はまだ立ち去ってくれない。まだ何か用があるのだろうか。
「なあ、お前ら。ちょっと頼まれごとをしてくれないか?」
「なんだよ」
「この村の外れに大きな館があるだろう? あそこはもう人が住まなくなって久しい。放っておいても朽ちるだけだから、手入れをして欲しいんだ」
「いいけど。報酬は?」
「ボランティアって、いいものだぞ」
「嫌。そういうの偽善者みたい」
「そうだな。俺も嫌いだ」
「わかったよ! 少ないけどお金を用意しておこう」
私たちは祖父からよく頼まれごとをされる。それを毎回快く引き受けてやるのだが、何も喜んでやっているわけではない。彼の頼みを断ることが苦手なのだ。私は。
「面倒なこと頼まれたな。さっさと終わらそうぜ」
「ねえ、その館に面白そうなものあったらもらっておこうよ」
私たちはすぐに館へ向かう。
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