桃色人形の館 〜凌辱されたラブドール〜

田中くりまんじゅう(しゃち)

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12「悪夢」

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 数日後、私が家からいなくなったことを心配した祖父が、人形館まで探しにきた。彼は館の中の様子に驚き、魅入られた様子で、女の人形たちをじっくり眺め回していた。そして部屋の隅にうずくまっている小柄な男の人形に気づくと、近寄って笑いかけてきた。

「お前はカオル、だろう? ああ、どこからどう見てもカオルだ。お前も人形になったのか。よかった、よかった。毎日遊んでいるだけの穀潰しが、ようやく役に立ちそうだ」

 今まで見たことがないニタニタ笑いを浮かべて、祖父は私の顔に唾を飛ばした。そして胸ぐらを掴まれ、何度も顔を殴打され、しまいには睾丸を蹴られた。

「いいことを教えてやる。エリカも人形になったよ。あのいかれた女のこと好きだったんだろ? よかったじゃないか、お揃いだ」

 私の心臓はその言葉を聞いても少しも動かない。心まで固まってしまって、何も感じない。何か言葉を発すべき口は、意志を失ってしまって開かない。そこには小柄で、醜い、中年の男の人形があった。
 私の子供の頃の夢、思い出した。私はおもちゃの人形になりたかった。あの頃は毎日両親に殴られていて、いつも泣いていた。それを慰めてくれたのがアニメのヒーローの人形だ。私はいつも笑っているその人形が羨ましくて、羨ましくて、いっそこんな風に何も見えず、何も聞こえず、ただ笑っているだけで何も感じない、人形のようになれたら、と願っていた。
 今、夢は叶ったが、しかし、これは悪夢ってやつじゃないか……?
 祖父は人形館から去って行き、戻ってくることはなかった。夕日が割れた窓から差し込み、私の顔を照らしている。眩しさを感じない、日の光の暖かさすらも。 
 私はこれからの、永遠とも呼べるだろう長い時間を想像して、声もなく絶叫した。

 おわり
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