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1.まずは生っ!
お酒は大人になってから・・・
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前世では、前の晩の深酒が残っていて胃が弱っており、朝食を食べることなどほとんど無かった。
こんなに美味しく朝食を取るなんていつぶりだろう。
バターの匂いで吐き気をもよおさない。トーストって美味しかったんだね。
フルーツを少々口に入れるだけのお母様を尻目に、たらふく朝食を食べた。そんなカシスの姿にお母様達は驚いていた。
そういえば昨日までのカシスはお母様同様、自分が好きな少量のフルーツだけを摂り、後はほとんど残していた様な・・・。
全く勿体ないことをしていたもんだ。
でもしっかりデザートだけは残さず、お母様の分まで食べていたな・・・。
朝から腹12分目まで食べ、食後の一服に紅茶を飲んでいたところに、お父様が帰宅されて来た。
「旦那様お帰りなさいませ」
セバスチャンを先頭に屋敷の使用人達が一斉に頭を下げ挨拶をした。
無表情のお父様は短く「うむ。」と応えると、まっすぐにお母様と私の元に来た。
そして憎々しげな眼差しを投げかけ言った。
「主人が帰って来たというのに挨拶も無しか。」
お母様はお父様の方には視線を向けず答えた。
「あら、朝帰りお疲れ様ですぅ? というかいつもいらっしゃらないので朝帰りというのもあれですわねぇ。」
「ふん、大臣という役職は色々と忙しいのだ。お前らが呑気にお茶を啜っていられるのも私のおかげだということを忘れるな。少しは主人を敬う気持ちを持ち合わせたらどうだ。」
その言葉にお母様はお父様を一瞥し言った。
「ありがとうございますぅ? はぃ、満足でしょうか?」
「っぐっ、お前という奴は・・・。」
お母様の挑発に、お父様が怒りに震え握り拳を振り上げる。
「あらっ? 殴るんですかぁ? 自分の思い通りにいかないからって暴力を振るおうと・・・。野蛮だわぁ。お父様に言い付けてよ。」
お母様のお父様。ベイリーズ公爵。ヴァレンタイン王国5大公爵家の当主でありカシスの祖父。
莫大な財力と絶大的な権力を持ち、お金と権力の為ならどんな冷酷非道なことも行う。
そんな世評の悪い祖父だが娘ブラッディを溺愛しており、その娘の子カシスのことももちろん目に入れても痛くない程溺愛していた。
そんなベイリーズ公爵を怒らせることはマズい。
お父様は振り上げた拳を渋々下げた。
「ふん、事あるごとにすぐ義父上に言いつけると。お前は常にそうだ。まぁいい。用件を手短に伝える。今度王宮でお茶会が催される。そのお茶会でついに第一王子の婚約者を選出するようだ。もちろん我がコアントロー家にも招待状が届いている。カシス、その顔しか取り柄のないお前の存在価値を示す時がようやく来た。コアントロー家の為、その唯一の武器を使って第一王子の婚約者の座を射止めでこい。」
その話にお母様の顔がパァッと輝いた。
「とうとうこのときが来たのねっ!早速ドレスを仕立てに行きましょう!どんなドレスがいいかしらぁ。」
突然の話に私は驚き声をあげた。
「ちょっと待ってください、お父様、お母様。私が家を出てしまうとこのコアントロー家を継ぐ者がおりません。よってこの私が第一王子の婚約者になるわけには・・・
「その心配はいらない。」」
私の言葉はお父様の言葉に打ち消された。
その言葉に被せるようにお母様も話だす。
「そぉよぉ。元からカシスちゃんは第一王子のお嫁さんにと育ててきたんだからぁ。まぁ、第二王子でもいいけどぉ。おうちのことは心配しないで。目指せっ!将来の皇太子妃っ!!」
?!?!?!
これまでのカシスのアイデンティティを揺るがしかねない爆弾発言が返ってきた。
カシスは侯爵家を継ぐ者としてこの不仲の両親のもと産まれ育てられてきたわけではないのか?
「それは一体どういうことでしょう・・・?」
震える声で、両親の爆弾発言を確認する。
「ふん、元からお前にこの家を継がせるつもりはなかったということだ。この家は親戚のロワイヤル伯爵家より養子を取ることになっている。」
コアントロー家の嫡子だと思っていたのは、自分の思い込みだったということだったというのか。。。
・・・・・ん?
ということは私はこの家に縛られることは無いということで・・・。
「まぁ、万が一、王子の婚約者になれなくても、それなりの有力者の元に嫁いで行ってもらう。」
んん??
・・・それは将来嫁ぐ先がまだ明確に決まっていないということで・・・、
・・・最悪嫁がなくてもコアントロー家が微々たる?力を手に入れられなくなるというだけのことで・・・・
っうしっ!!
自分の将来の方向性が決まったっ!!
私は心の中がガッツポーズを行った。
これから降りかかるであろう婚約話を全て飄々とかわし、成人(この世界では確か16歳)になったら、この堅苦しい公爵家を出て世界の様々な酒を求め呑んだくれ放浪の旅に出よう!!
6年後に迎えるであろう素晴らしい呑んだくれ生活に夢を馳せ、完全に頭があっちの世界にいっている私には、その後お父様が告げた話が頭に入ってきてはいなかった。
「ちなみに養子となるロワイヤル家3男の子供は後日この屋敷に迎え入れるので心しておくように。」
こんなに美味しく朝食を取るなんていつぶりだろう。
バターの匂いで吐き気をもよおさない。トーストって美味しかったんだね。
フルーツを少々口に入れるだけのお母様を尻目に、たらふく朝食を食べた。そんなカシスの姿にお母様達は驚いていた。
そういえば昨日までのカシスはお母様同様、自分が好きな少量のフルーツだけを摂り、後はほとんど残していた様な・・・。
全く勿体ないことをしていたもんだ。
でもしっかりデザートだけは残さず、お母様の分まで食べていたな・・・。
朝から腹12分目まで食べ、食後の一服に紅茶を飲んでいたところに、お父様が帰宅されて来た。
「旦那様お帰りなさいませ」
セバスチャンを先頭に屋敷の使用人達が一斉に頭を下げ挨拶をした。
無表情のお父様は短く「うむ。」と応えると、まっすぐにお母様と私の元に来た。
そして憎々しげな眼差しを投げかけ言った。
「主人が帰って来たというのに挨拶も無しか。」
お母様はお父様の方には視線を向けず答えた。
「あら、朝帰りお疲れ様ですぅ? というかいつもいらっしゃらないので朝帰りというのもあれですわねぇ。」
「ふん、大臣という役職は色々と忙しいのだ。お前らが呑気にお茶を啜っていられるのも私のおかげだということを忘れるな。少しは主人を敬う気持ちを持ち合わせたらどうだ。」
その言葉にお母様はお父様を一瞥し言った。
「ありがとうございますぅ? はぃ、満足でしょうか?」
「っぐっ、お前という奴は・・・。」
お母様の挑発に、お父様が怒りに震え握り拳を振り上げる。
「あらっ? 殴るんですかぁ? 自分の思い通りにいかないからって暴力を振るおうと・・・。野蛮だわぁ。お父様に言い付けてよ。」
お母様のお父様。ベイリーズ公爵。ヴァレンタイン王国5大公爵家の当主でありカシスの祖父。
莫大な財力と絶大的な権力を持ち、お金と権力の為ならどんな冷酷非道なことも行う。
そんな世評の悪い祖父だが娘ブラッディを溺愛しており、その娘の子カシスのことももちろん目に入れても痛くない程溺愛していた。
そんなベイリーズ公爵を怒らせることはマズい。
お父様は振り上げた拳を渋々下げた。
「ふん、事あるごとにすぐ義父上に言いつけると。お前は常にそうだ。まぁいい。用件を手短に伝える。今度王宮でお茶会が催される。そのお茶会でついに第一王子の婚約者を選出するようだ。もちろん我がコアントロー家にも招待状が届いている。カシス、その顔しか取り柄のないお前の存在価値を示す時がようやく来た。コアントロー家の為、その唯一の武器を使って第一王子の婚約者の座を射止めでこい。」
その話にお母様の顔がパァッと輝いた。
「とうとうこのときが来たのねっ!早速ドレスを仕立てに行きましょう!どんなドレスがいいかしらぁ。」
突然の話に私は驚き声をあげた。
「ちょっと待ってください、お父様、お母様。私が家を出てしまうとこのコアントロー家を継ぐ者がおりません。よってこの私が第一王子の婚約者になるわけには・・・
「その心配はいらない。」」
私の言葉はお父様の言葉に打ち消された。
その言葉に被せるようにお母様も話だす。
「そぉよぉ。元からカシスちゃんは第一王子のお嫁さんにと育ててきたんだからぁ。まぁ、第二王子でもいいけどぉ。おうちのことは心配しないで。目指せっ!将来の皇太子妃っ!!」
?!?!?!
これまでのカシスのアイデンティティを揺るがしかねない爆弾発言が返ってきた。
カシスは侯爵家を継ぐ者としてこの不仲の両親のもと産まれ育てられてきたわけではないのか?
「それは一体どういうことでしょう・・・?」
震える声で、両親の爆弾発言を確認する。
「ふん、元からお前にこの家を継がせるつもりはなかったということだ。この家は親戚のロワイヤル伯爵家より養子を取ることになっている。」
コアントロー家の嫡子だと思っていたのは、自分の思い込みだったということだったというのか。。。
・・・・・ん?
ということは私はこの家に縛られることは無いということで・・・。
「まぁ、万が一、王子の婚約者になれなくても、それなりの有力者の元に嫁いで行ってもらう。」
んん??
・・・それは将来嫁ぐ先がまだ明確に決まっていないということで・・・、
・・・最悪嫁がなくてもコアントロー家が微々たる?力を手に入れられなくなるというだけのことで・・・・
っうしっ!!
自分の将来の方向性が決まったっ!!
私は心の中がガッツポーズを行った。
これから降りかかるであろう婚約話を全て飄々とかわし、成人(この世界では確か16歳)になったら、この堅苦しい公爵家を出て世界の様々な酒を求め呑んだくれ放浪の旅に出よう!!
6年後に迎えるであろう素晴らしい呑んだくれ生活に夢を馳せ、完全に頭があっちの世界にいっている私には、その後お父様が告げた話が頭に入ってきてはいなかった。
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