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3.ハイボール濃いめでっ
呑んべえは甘いものが苦手
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キールが屋敷に来て早1ヶ月経った。
キールが来るまではいつも図書室に籠もっていたが、9歳児のキールがずっと室内にいるなど不健全極まりないので、キールの手を引いて屋敷の外(外といっても庭だが)でも遊ぶようになった。
キールには健やかに育ってもらって、私が成人し家を出ていく6年後にはこの侯爵家を任せなければならない。
ちなみにキールに私の将来の目標は伝えていない。
この家のことをキールに押し付け、自分だけ自由になろうとしていることに罪悪感を感じ、打ち明けることが出来ないのだ。
でも、私の野望『呑んだくれ放浪の旅』を捨てる気は全く無い!
ごめんキール、私の野望の犠牲となり、この家に骨を埋めてくれ。。。。
ぁあ、私はまさに悪役令嬢だわ・・・・。
キールがこの先、末ながぁーーーく、この屋敷で幸せに生活していけるよう、私はこの屋敷にいる人達とキールが仲良くなれるように努めた。
そのおかげで今やキールはみんなに受け入れられ、立派なコアントロー家の一員となっていた。
なんと初めはほとんどキールに無関心だったお母様までが、キールと打ち解けて何気ない話までするような関係になった。
『おつ糸』の通りだとキールは家族愛に恵まれていない設定だったはず。
しかし私の目の前にいるキールは、家族愛(お母様と私)に包まれ使用人達からも慕われている。
ゲームのキールとは全く違うキール。
ゲームの設定なんてその世界でリアルに生きている私達にとっては糞食らえのようなものよ!
この先に待ち受けているという私の破滅フラグもこの調子で打ち破ってやるわっ!!
この先の自分の人生が楽勝に思えてきて、つい笑みが溢れてきた。
「・・・ふふっ、ふふふふ。」
「あらぁ~カシスちゃん、随分ご機嫌ねぇ。何かいいことあったのぉ?」
「お姉様、口の周りがトマトケチャップだらけですよ。」
お母様が私の顔を覗き込み、キールが私の口元をナプキンで拭う。
そう、今日は天気がいいので庭でお母様とキールとお茶をしていたのだった。
「カシスちゃんはまだまだ立派なレディには程遠いわねぇ。でもキール君がしっかり面倒をみてくれて安心ねぇ。本当ぅ、キール君がうちに来てくれて良かったわぁ。」
お母様が微笑ましく私とキールを見つめる。
「全くです。キール様が来てくれたことにより、お嬢様がもっとしっかりしてくれれば良いのですが。」
セバスチャンがお母様の意見に同意する。
おいおい、この頃セバスチャンもなんだか私に手厳しいぞ。
私がキールの面倒をみているのであって反対であろう。
色々と思うところはあるが抗議するのが面倒くさいので、私はおし黙って先から食べているフライドポテトに再び手を伸ばした。
ポテトの塩味にトマトケチャップが絶妙にマッチして、
ん~~
美味しいっ!!
口の中がポテトになったところに、レモンハイもどきを流し込む。
さ・い・こ・う!!!
お母様は恍惚としている私を見つめ、悲しそうに手元の生クリームやらチョコレートやらでゴテゴテのケーキをホークで突ついた。
「カシスちゃんがこの頃、一緒にお菓子を食べてくれなくなってちょっと寂しいわぁ。このお菓子なんか今話題のパティシエが作ったものをわざわざ取り寄せたというのに・・・。お茶の時でも、しょっぱいものばかり食べて。」
そう、NEO カシスとなって、内面は勿論大きく変わったけれど、その他大きく変わった事として食べ物の趣向があった。
モンスター・カシスの頃は女の子らしく甘いお菓子や、フルーツなどが好きだった。むしろそれ以外の食べ物はほぼ口にしなかった。
よくこれまで太ったり、虫歯にならずにすんできたものだ。
それがNEO カシスとなった今は、肉、野菜をバランス良くとり、以前は絶対に手を付けなかったサラダを喜んで頬張るようになった。
特に塩気が強い食べ物は大好物だ。
一方、甘みを感じるものが苦手となりほとんど食べなくなった。
完全に前世に引きづられ呑んべえの舌になってしまったのだ。
ごめん、お母様。今の私はその喉が痛くなりそうな甘い食べ物は食べられない。
そんなお母様と私の姿をキールは気の毒そうに見て、フォローを入れた。
「お母様、僕はこのケーキ、とても美味しいと思いますよ。このチョコの苦味が生クリームと相まって幸せな気持ちになりますね。」
キースのその言葉にお母様は元気になった。
「でしょぅ!キース君わかってるぅ!ちょっとこの紅茶も飲んでぇ。木苺フレーバーなのよぅ。」
ふむふむ。お母様がキースのおかげでご満悦だ。
良きかな、良きかな。
ほのぼのと家族団欒のお茶をしているところに、メアリーが大きな箱を持って来た。
「奥様、明日の王宮で開かれるお茶会に着て行くドレスが届きました。」
その言葉に私は手にしていたポテトフライをボトリと落とした。ケチャップ塗れのポテトがべちゃりとドレスに付く。
王宮のお茶会のことを忘れていた。。。
どうしよう・・・・
縋るようにキール方へ視線を向ける。
どうしよう、助けてキール様・・・・
「・・・ふーん、明日王宮のお茶会があるんですね。知らなかった。」
キール様、目が怖いです。そう睨まないでください。
本当に王宮のお茶会のことを忘れていたのです。
キールが来るまではいつも図書室に籠もっていたが、9歳児のキールがずっと室内にいるなど不健全極まりないので、キールの手を引いて屋敷の外(外といっても庭だが)でも遊ぶようになった。
キールには健やかに育ってもらって、私が成人し家を出ていく6年後にはこの侯爵家を任せなければならない。
ちなみにキールに私の将来の目標は伝えていない。
この家のことをキールに押し付け、自分だけ自由になろうとしていることに罪悪感を感じ、打ち明けることが出来ないのだ。
でも、私の野望『呑んだくれ放浪の旅』を捨てる気は全く無い!
ごめんキール、私の野望の犠牲となり、この家に骨を埋めてくれ。。。。
ぁあ、私はまさに悪役令嬢だわ・・・・。
キールがこの先、末ながぁーーーく、この屋敷で幸せに生活していけるよう、私はこの屋敷にいる人達とキールが仲良くなれるように努めた。
そのおかげで今やキールはみんなに受け入れられ、立派なコアントロー家の一員となっていた。
なんと初めはほとんどキールに無関心だったお母様までが、キールと打ち解けて何気ない話までするような関係になった。
『おつ糸』の通りだとキールは家族愛に恵まれていない設定だったはず。
しかし私の目の前にいるキールは、家族愛(お母様と私)に包まれ使用人達からも慕われている。
ゲームのキールとは全く違うキール。
ゲームの設定なんてその世界でリアルに生きている私達にとっては糞食らえのようなものよ!
この先に待ち受けているという私の破滅フラグもこの調子で打ち破ってやるわっ!!
この先の自分の人生が楽勝に思えてきて、つい笑みが溢れてきた。
「・・・ふふっ、ふふふふ。」
「あらぁ~カシスちゃん、随分ご機嫌ねぇ。何かいいことあったのぉ?」
「お姉様、口の周りがトマトケチャップだらけですよ。」
お母様が私の顔を覗き込み、キールが私の口元をナプキンで拭う。
そう、今日は天気がいいので庭でお母様とキールとお茶をしていたのだった。
「カシスちゃんはまだまだ立派なレディには程遠いわねぇ。でもキール君がしっかり面倒をみてくれて安心ねぇ。本当ぅ、キール君がうちに来てくれて良かったわぁ。」
お母様が微笑ましく私とキールを見つめる。
「全くです。キール様が来てくれたことにより、お嬢様がもっとしっかりしてくれれば良いのですが。」
セバスチャンがお母様の意見に同意する。
おいおい、この頃セバスチャンもなんだか私に手厳しいぞ。
私がキールの面倒をみているのであって反対であろう。
色々と思うところはあるが抗議するのが面倒くさいので、私はおし黙って先から食べているフライドポテトに再び手を伸ばした。
ポテトの塩味にトマトケチャップが絶妙にマッチして、
ん~~
美味しいっ!!
口の中がポテトになったところに、レモンハイもどきを流し込む。
さ・い・こ・う!!!
お母様は恍惚としている私を見つめ、悲しそうに手元の生クリームやらチョコレートやらでゴテゴテのケーキをホークで突ついた。
「カシスちゃんがこの頃、一緒にお菓子を食べてくれなくなってちょっと寂しいわぁ。このお菓子なんか今話題のパティシエが作ったものをわざわざ取り寄せたというのに・・・。お茶の時でも、しょっぱいものばかり食べて。」
そう、NEO カシスとなって、内面は勿論大きく変わったけれど、その他大きく変わった事として食べ物の趣向があった。
モンスター・カシスの頃は女の子らしく甘いお菓子や、フルーツなどが好きだった。むしろそれ以外の食べ物はほぼ口にしなかった。
よくこれまで太ったり、虫歯にならずにすんできたものだ。
それがNEO カシスとなった今は、肉、野菜をバランス良くとり、以前は絶対に手を付けなかったサラダを喜んで頬張るようになった。
特に塩気が強い食べ物は大好物だ。
一方、甘みを感じるものが苦手となりほとんど食べなくなった。
完全に前世に引きづられ呑んべえの舌になってしまったのだ。
ごめん、お母様。今の私はその喉が痛くなりそうな甘い食べ物は食べられない。
そんなお母様と私の姿をキールは気の毒そうに見て、フォローを入れた。
「お母様、僕はこのケーキ、とても美味しいと思いますよ。このチョコの苦味が生クリームと相まって幸せな気持ちになりますね。」
キースのその言葉にお母様は元気になった。
「でしょぅ!キース君わかってるぅ!ちょっとこの紅茶も飲んでぇ。木苺フレーバーなのよぅ。」
ふむふむ。お母様がキースのおかげでご満悦だ。
良きかな、良きかな。
ほのぼのと家族団欒のお茶をしているところに、メアリーが大きな箱を持って来た。
「奥様、明日の王宮で開かれるお茶会に着て行くドレスが届きました。」
その言葉に私は手にしていたポテトフライをボトリと落とした。ケチャップ塗れのポテトがべちゃりとドレスに付く。
王宮のお茶会のことを忘れていた。。。
どうしよう・・・・
縋るようにキール方へ視線を向ける。
どうしよう、助けてキール様・・・・
「・・・ふーん、明日王宮のお茶会があるんですね。知らなかった。」
キール様、目が怖いです。そう睨まないでください。
本当に王宮のお茶会のことを忘れていたのです。
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