悪役令嬢は呑んだくれ放浪の旅に出たい

はるみ

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3.ハイボール濃いめでっ

紅茶といえば「ティフィン」でしょ?

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王宮のお茶会当日。


普段なら8時起床のところを7時に叩き起こされ、お母様監修のもと、メアリーが気愛を入れてカシスを着飾った。

真っ赤なドレスにはスパンコールが「これでもか!」と言わんばかりに沢山施されており、ツインテールに結い上げられた髪はまるでアニメキャラのように縦巻きドリルに巻かれていた。

鏡に映る姿は、自己主張の激しい派手な少女であり、従来持ち合わせている妖精の様な可憐さは全く感じられなかった。
よくもまぁ、ここまで素材を潰しこむコーデができるもんだ・・・。ある意味、お母様のセンスは凄い。。。

その後馬車に乗り込む際、往生際悪く、キールが同乗しようとして来てすったもんだなどがあったが、ようやく馬車の中で落ち着いた時間をとることができた。


お母様は馬車に乗った時点から、お父様を見ないようにずっと外の風景を見ている。お父様はこの馬車の時間を耐えるように腕を組みずっと目を閉じている。

両親が自分に注目していないことを確認し、そっとキールから貰った『おつ糸黙示録』を広げ今日の予習を始めた。


第一王子はと・・・・

ー+ー+ー+ー+ー
=『おつ糸黙示録』=
P4
第一王子『ギムレット』。

第一王子ではあるが、まだ皇太子では無い。
頭脳明晰、容姿端麗。何事にも動じない落ち着きを持っており、とても真面目な性格。
どこを取っても欠点が見つからないギムレットが皇太子になっていないその理由は、ひとゆえに側室の子供であることと、第二王子の存在だった。
第二王子は正妃の子であり、どんなに第一王子のギムレットが優秀でも正妃を始めとする第二王子支持派により皇太子の座に就けないでいたのだ。

幼い頃より達観した考えを持つギムレットは何事にも無頓着だった。
『第一王子だが側室の子』という自分の立場も受け入れていて、皇太子という座に対しても興味を持っていなかった。

それは婚約者となるカシスに対しても同様であった。
誰に対しても傍若無人に振る舞うカシスの姿を知ってはいたが、全く興味が無い為、咎めることもなく放置していた。

しかし主人公と出会い、次第に主人公に興味を持っていくことにより、自分の周りのことにも関心を抱いていく。
その中で皇太子の座に対しても前向きに検討するようになり、GOOD EDを迎えた際は、主人公と結婚すると共についに皇太子の座に就く。

ー+ー+ー+ー+ー


ふむふむ、
要は『何事にも興味を持てない面倒くさがり屋』ってことね。
略して『面倒くさがり無関心BOY』。

でもそういう事は、こちらから関わろうとしなければ、婚約者に選ばれないんじゃない?
もしかして楽勝・・・?



やがて馬車が王宮に着いた。
馬車から降りる際、お父様が私の手を取ろうとしたが、それを振り払い馬車から飛び降りた。
キールの話を聞いて以降、お父様にたいして生理的嫌悪感を抱くようになってしまったのだ。
お父様は突然の私の態度に驚いていたが、お母様はそのやりとりを見てニヤニヤしていた。


王宮の使用人の案内で、我々は会場に足を踏み入れた。

そこには既に多くの招待客が集まっていた。

お母様は会場に入るなり、さっさと私達を残して仲が良い婦人達の談輪に入っていく。
お父様は私に「絶対に成功させるんだぞ!」とハッパをかけてから、他の招待客達へ挨拶回りに行った。

1人残された私は、子供達が集まっている中庭に足を向ける。

中庭に入ると、既に集まっていた子供達がカシスの姿を確認するなり、怯えたり、顔をしかめたりした。
明らかに悪意のある視線を向け、ひそひそ話を始める者達もいる。

集う子供達を見回すなり、モンスター・カシスの頃に見覚えのある子供達をちらほら確認できた。


例えば、中庭に入り口の壁に隠れた少年。
前回のお茶会でやたら馴れ馴れしく声をかけてきたのでで、ムカついて腹パンをかませた奴だ。
向こうの親がお母様に訴えてきたが、お母様は「子供達の戯れ合い。」と訴えを受け入れなかった。

そして向こうで敵意を剥き出しにして睨みつけてくる少女。
前々回のお茶会で、自慢話ばかりして話が長かったので、手元のケーキを彼女の顔に押し当て黙らせた記憶が。
こちらも向こうの親が訴えてきたが、お母様は「ケーキを食べさせてあげようとしただけ。」と訴えを受け入れなかった。

あそこに居る5,6人組の男女は、いつだったか覚えていないが、楽しそうに遊んでいたので一緒に遊ぼうとタックルをしたら、全員を押し倒し怪我をさせた。
この時も勿論向こうの親達が訴えてきたが、お母様は「元気な子殿達の遊び。」と訴えを受け入れなかった。

他も何人か見覚えがある。どの子との記憶もモンスター・カシスが危害を加えた記憶だが・・・。


これまでのモンスター・カシスの所業に自分の事ながら呆れつつ、近くのテーブル席に着席した。
するとそのテーブルを囲んで座っていた子供達がクモの子を散らしたように去っていく。

まぁ、ひとりの方が楽だけどね。
35歳の記憶がある今の私にとっては子供達とどのような話をすれば良いかもわからないし。
それは10歳までのモンスター・カシスも周りの子供達とまともに話をしたことが無いので同じ事なのだが・・・。


ここにはレモンハイもどきが無いので、仕方なく紅茶をそのまま何も入れずに啜る。


そんな中、中庭の脇で少女達の色めき立った歓声が上がった。



どうやら第一王子が登場したようだ。








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