悪役令嬢は呑んだくれ放浪の旅に出たい

はるみ

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5.日本酒入ります

IPAパイントで!フィッシュ&チップスも付けて!! 

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メガネ君の屋敷でのお祭り後、翌日にギムレットとマティーニが1週間で貯め込みすぎた職務をこなしに、2日後にお腹が落ち着いたピニャ様がお気に入りの俳優の舞台を見に帰っていった。
私達も明後日には帰る。

今日のキールは、この地方の織物の柄が某ゲームのイラストに似ている?などと言って織物工房に朝から行ってしまった。
王子‘s がやっと居なくなり、安心して自分のやりたいと思っていたことができたようだ。
良かった、良かった。

私はというと、その織物には全く興味が無いので、屋敷でダラダラ~。
お庭のサンシェード下、サマーベッドの上でゴロゴロ~。
レモンハイもどきウマウマ~。

今日も素晴らしいサンサン照りである。
レモンハイもどきにミントを入れて、モスコミュール風に楽しんではいるが、やっぱり・・・、こんな日は・・・

「っ冷たぁ~い、キンキンに冷えたエールが呑みたいなぁ・・・。」

この間のお祭りでは、あとちょっとで飲酒ができそうなところを止められ、完全にアルコールへの渇望に火がついていた。

「あれ?カシス嬢はエールが飲みたいんですか?」

庭を通りかかったメガネ君が声をかけてきた。

「うんー。こんなにも天気がいいとねー。」

「ではこれから飲みに行きますか? いいお店をご紹介しますよ?」

予想外の返事が返ってきた。

「いやいや、私まだ15歳だし。」

「いえ、この地方では12歳以上で成人者同伴であれば、5%以下のエールを飲んでもいいことになっているんですよ。この地域はエール産業を盛り立てようと地方特例法で認められているんですよ。まぁ、つい最近からですけど。」


・・・え?

「カシス嬢知らなかったんですか? このあいだのお祭りでもエールをみんな飲んでいたじゃないですか。キール君も。」


・・・っえ??

「っえ? まだエール飲んでないんですか? もう1週間以上経ってるのに。」

・・・。

何で、私まだ飲んでないの?
何で、私知らなかったの?

私が聞きたいわっ!!

酒に関する知識は周りの誰よりも有ると思っていたのにっ!!

「もったいないことをしてましたね。今馬車を表に回しますね。」


釈然としない気持ちでいっぱいだが、今はとりあえずエール!!

メガネ君と屋敷の従者と共に馬車に乗り込み、メガネ君オススメのお店に行くことにした。


馬車が着いたのは、船着場脇のイングリッシュパプのような、こじんまりとしたお洒落な店だった。
店先に置かれている樽を利用したテーブルではまだ日が高いが酔い感じのおじ様達が盛り上がっている。

イイネ! イイネ!!

私の大好きな世界が今ここに有るっ!!

私達は店奥の落ち着いたブース席に案内された。
メニューが手渡される。

ペールエールに、IPA、スタウトと一通り揃っている。
色々と吞みたいところだが、5%以下という制限がつく。
とりあえずホワイトエールのパウントをまず注文した。
メガネ君も同じものを頼む。

ビールサーバーから黄金の液体がジョッキに注がれていく。その光景を見つめうっとりする。

そしてついに・・・、ついにっ!
私の前に散々夢で見てきたエールが来たっ!!

本当に・・・これまで長かった。
エールを目の前にし熱い目汁がこみ上げてくる。
感無量である。

「さぁ、さぁ、カシス嬢!」

メガネ君に促される。


「「乾杯っ!!」」


ぐいっーーーっと、喉の奥にエールを流し込む。
エールならではのほろ苦さと、ホワイトエール特有の甘みが口の中に広がる。
喉を過ぎたシュワシュワなエールが胃へと、そして全身へと広がっていくことを感じる。
本当に久しぶりのアルコール。いや、この体では初めてのアルコール。
たった5%だが物凄く染みるっ!!

神様、ありがとう! 人類に酒という至宝を与えてくれて。

「メガネ君、私、今日という日を一生忘れないよ。私の宝物になったこの思い出を作ってくれてありがとう!」

私は心の底からメガネ君に感謝の言葉を述べた。
述べつつ、ジョッキのエールを呑み干し、次にIPAを注文する。

「えぇ!? そんな美味しかったの? とても光栄だけど。」

私のあまりの感激ぶりにメガネ君は驚く。

「うん、今、本当の私の人生の第一歩を踏み出した感じだよ。」

「大袈裟だなぁ。でもそんな素敵な時が僕との時間となったことが、僕もとても嬉しいよ。これからの素敵な時も立ち会えていけたらと思うな。」

「えへへ。こちらこそ宜しくね。(呑みを)」

IPAも呑み干した。
そこに、フイッシュ&チップスとサワークラフトが出てきた。

これよっ、これっ!
エールにはこれらは欠かせないよね!!

ペールエールを注文する。
ちなみにメガネ君はまだ最初のホワイトエールを呑んでいる。
私はエールが止まらない。
メガネ君はそんな私をニコニコと見つめ、私の話に相槌をうつ。

美味しいっ! 楽しいっ! 最高だっ!!
やっとこの世界でもこの呑んだくれの時間を過ごすことが出来た!!

酒が回って絶好調の私が、次に意識を取り戻したのは・・・



メガネ君の屋敷のベッドの上だった。

・・・・。

今何時だろう・・。
・・・頭・・・痛い。
気持悪い。
喉渇いた・・・。

久しぶりのこの感じ。
楽しい時間の後に必ずやってくるこの体調。
いつも忘れてしまうこの存在。

二日酔い。

無理やり体を起こして枕元の水差しから水を飲む。


そこにキールがやって来た。

「やっちゃったね。」

呆れてため息混じりに言われた。

「うん。。。」

「こうなる事がわかっていたから、エールが呑める事を内緒にしていたのに。。。もう夜の9時だよ。晩御飯は・・・、無理そうだね。」

キールは水差しに水を注ぎ足しつつ私の体調を確認した。

「・・・楽しかった?」

ぽそりとキールが尋ねてきた。

「・・・うん。」

横になっている私の頭を撫で髪を梳き、悲しそうにキールが呟いた。

「姉さんのこの世界の初めての飲酒。僕が付き合いたかったな。」

そういえば、キールとは前世からの呑みの付き合いもあったもんなぁ。その事を考えていたとは。悪い事をした。

「ごめんね。でもこれから沢山呑む機会があるんだから。一緒に沢山呑もう。」

「そうだね。まずはその二日酔いを治さないとね。」


その晩、酒による腹下しと吐き気で一晩中トイレで過ごした。。。
いつもこの時だけ思うんだ。

「もう、酒は呑みたくない!」と。







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