上 下
199 / 215
蒼い約束

30

しおりを挟む
 そうして呪文のように、彬へとゆっくりと囁く。

えない? あんたを一番助けたかった奴の姿が。視えるよね? しっかりと『目』を開いて。――あんたになら、視えるから。必ず」

 傾いた眩しい陽射しに、目を細める。するとそこに、何か黒いモノが視えた気がした。

「え?」

 目を見開くと、何もない。彬はもう一度、今度はちゃんとそれを『視よう』と額に神経を集中させて、目を細めた。

「視えた?」

「……う……ん…」

 曖昧に頷いた彬が、ゆっくりとそれに近付く。

「まさか……」

 振り返り隆哉を見遣った彬は、相手の硝子の瞳に問いかけた。

「ウソ、だろ?」

「何か、勘違いしてるみたいだけど。彼の依憑の内容は『彬を助けてくれ』だよ」

 バッと後ろを振り返った彬が俊介を見つめながら後退あとずさる。

「なんでだよ! あいつ、あそこから動けない、筈…だ……」

 途中で思い当たった考えに、ゆっくりと隆哉に顔を廻らした。

「バカ野郎ッ」

 歯を食いしばった彬は隆哉に飛びかかり、両手で制服の胸倉を掴んだ。ググッとその手に力を込めながら、唸るように言葉を吐き出す。
しおりを挟む

処理中です...