17 / 114
第三章 南の森
17
しおりを挟む
裏門を抜けると、広大な草原が広がっていた。遠くには薄っすらと山脈が横たわっている。
馬車は、まるで「けもの道」のような踏み固められた街道を、森に向かって真っ直ぐに進む。
3キロメートル程はあっただろうか、20分程度で森の入り口に着いた。
「さすがの魔物もまだこの辺りまでは来ないけど、この森には昔から『魔獣』と呼ばれる凶暴な獣が住みついてるんだ」
メイは一旦馬車を停めると、荷台の二人に振り返った。
「魔獣…ですか」
緊張した面持ちで、神木公平がゴクリと息を飲む。
「永い縄張り争いの結果、この先の小さな泉の周辺まではあまり姿を見せなくなったけど、その先は何処で襲われるか分からない」
「そ、それで…今日は一体ドコまで?」
「それは勿論、その先さ」
神木公平のその質問に、メイはニヤリと愉しそうに微笑んだ。
~~~
その泉は直径5メートルほどの、円に近い形をしていた。ポッカリと開いた木々の切れ間から射し込む陽射しで、透き通るような水面が宝石のようにキラキラと輝いている。
メイはそこで馬車を停めると、荷台の二人に降りるように声をかけた。
先に降りた神木公平の手を借りながら、佐敷瞳子も馬車を降りる。そのとき視界の隅の端っこに、ポンとひとつのタグが跳ねた。
「メ、メイさん、あの…アオツメソウ…って、何ですか?」
「……は⁉︎」
その瞬間、メイが素っ頓狂な声をあげる。それから大きく両目を見開いて、喰い入るように詰め寄って来た。
「ど、何処にあるんだい?」
「あ、えと…こっち」
その勢いに気圧された佐敷瞳子が、少し歩いて地面を指差す。
そこには尖った葉先が青く染まった、足のくるぶし程の背丈の、緑の草が生えていた。
「確かに、アオツメソウだ」
メイは四つん這いで屈み込むと、根っこごと大事そうに摘み取る。
「コイツはとても珍しい草でね、根っこの部分が貴重な薬になるんだ。私には知識はないけど、売ればかなりの高値がつく」
アオツメソウを小さな巾着袋に仕舞いながら、メイは佐敷瞳子に目線を向けた。
「トーコ、シロツメソウは知ってるかい?」
「シロツメ…ソウ?」
佐敷瞳子が呟いた途端、視界一杯に無数のタグが出現する。葉先が白く染まった、アオツメソウとよく似た草が、足元一杯に広がっていた。
「周りに…一杯」
「そう、ここはシロツメソウの群生地だ。その草自体は何の変哲もない、ただの雑草さ」
泉の周囲を一度グルリと見回すと、メイは更に話を続ける。
「その中でほんの一握り、僅かな確率でアオツメソウという変異種が発生する。そしてそれを発見するには、例え鑑定持ちと言えども、運と根気が必要になるのさ」
「鑑定持ちでも…?」
メイのその発言に、神木公平が不思議そうな声をあげた。
「鑑定持ちのメリットなんざ、せいぜい見つけたお宝が『間違いなくお宝だよ』と太鼓判を押してくれるくらいさね」
そう言ってメイは「アハハ」と笑う。そのあと急に真剣な眼差しを佐敷瞳子に向けた。
「実を言うとね、トーコ。このアオツメソウがアンタたちに出すお題のつもりだったんだよ」
馬車は、まるで「けもの道」のような踏み固められた街道を、森に向かって真っ直ぐに進む。
3キロメートル程はあっただろうか、20分程度で森の入り口に着いた。
「さすがの魔物もまだこの辺りまでは来ないけど、この森には昔から『魔獣』と呼ばれる凶暴な獣が住みついてるんだ」
メイは一旦馬車を停めると、荷台の二人に振り返った。
「魔獣…ですか」
緊張した面持ちで、神木公平がゴクリと息を飲む。
「永い縄張り争いの結果、この先の小さな泉の周辺まではあまり姿を見せなくなったけど、その先は何処で襲われるか分からない」
「そ、それで…今日は一体ドコまで?」
「それは勿論、その先さ」
神木公平のその質問に、メイはニヤリと愉しそうに微笑んだ。
~~~
その泉は直径5メートルほどの、円に近い形をしていた。ポッカリと開いた木々の切れ間から射し込む陽射しで、透き通るような水面が宝石のようにキラキラと輝いている。
メイはそこで馬車を停めると、荷台の二人に降りるように声をかけた。
先に降りた神木公平の手を借りながら、佐敷瞳子も馬車を降りる。そのとき視界の隅の端っこに、ポンとひとつのタグが跳ねた。
「メ、メイさん、あの…アオツメソウ…って、何ですか?」
「……は⁉︎」
その瞬間、メイが素っ頓狂な声をあげる。それから大きく両目を見開いて、喰い入るように詰め寄って来た。
「ど、何処にあるんだい?」
「あ、えと…こっち」
その勢いに気圧された佐敷瞳子が、少し歩いて地面を指差す。
そこには尖った葉先が青く染まった、足のくるぶし程の背丈の、緑の草が生えていた。
「確かに、アオツメソウだ」
メイは四つん這いで屈み込むと、根っこごと大事そうに摘み取る。
「コイツはとても珍しい草でね、根っこの部分が貴重な薬になるんだ。私には知識はないけど、売ればかなりの高値がつく」
アオツメソウを小さな巾着袋に仕舞いながら、メイは佐敷瞳子に目線を向けた。
「トーコ、シロツメソウは知ってるかい?」
「シロツメ…ソウ?」
佐敷瞳子が呟いた途端、視界一杯に無数のタグが出現する。葉先が白く染まった、アオツメソウとよく似た草が、足元一杯に広がっていた。
「周りに…一杯」
「そう、ここはシロツメソウの群生地だ。その草自体は何の変哲もない、ただの雑草さ」
泉の周囲を一度グルリと見回すと、メイは更に話を続ける。
「その中でほんの一握り、僅かな確率でアオツメソウという変異種が発生する。そしてそれを発見するには、例え鑑定持ちと言えども、運と根気が必要になるのさ」
「鑑定持ちでも…?」
メイのその発言に、神木公平が不思議そうな声をあげた。
「鑑定持ちのメリットなんざ、せいぜい見つけたお宝が『間違いなくお宝だよ』と太鼓判を押してくれるくらいさね」
そう言ってメイは「アハハ」と笑う。そのあと急に真剣な眼差しを佐敷瞳子に向けた。
「実を言うとね、トーコ。このアオツメソウがアンタたちに出すお題のつもりだったんだよ」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる