34 / 114
第五章 薬師リーラ
34
しおりを挟む
「ヨシノソウ」と云う草がある。
薄桃色の小さくて可愛い花が咲き、ずっと昔から多くの人々に愛されてきた。
以前は小川の堤防や水辺周りにたくさん咲いていたのだが、可憐な花を目的とした乱獲に遭い、多くの自生地が消滅してしまっている。
今や園芸用の人工栽培によってその可憐な姿を見る事が殆どで、野生のヨシノソウは絶滅危惧種となっていた。
しかし残念ながら、中には人工栽培に成功していない品種もある。
「クコヨシノ」と云う品種が、それに当たる。
多くの薬用成分を含み、薬の材料として長い間親しまれてきた。更には、その実は酒や料理に、葉はお茶にと活躍の場は広い。
リーラはクコヨシノの人工栽培の成功を、自身の目標のひとつとしていた。
~~~
明けて翌日…
神木公平と佐敷瞳子は裏門を抜け、リーラの操る馬車に揺られている。
メイは外壁まで見送りに来てくれたが、そのまま直ぐに帰ってしまった。
朝、集合場所に集まったとき、神木公平はリーラに怪訝な視線を向けられた。まるで、何しに来たのかと言わんばかりの表情である。
どうしたものかと反応に困っていると、横からメイが助け船を出してくれた。
「まーまー、男手として、荷物持ちにでも連れて行ってやってくれよ」
「…役に立つアルか?」
「コーヘーもステータスが低い割にはそこそこ戦えるんだが…リーラの前だと、どうだろうな」
ステータスが低いと言う発言に、リーラのこめかみからピシッと青筋が浮き上がる。
「本当に…役に立つアルか?」
「まーまー、コイツら夫婦だからさ、そこは勘弁してやってくれ」
「ちょ…メイさんっっ!」
またしてもな扱いに、神木公平が焦って反論の声を漏らす。しかしそれを遮るように、リーラの口から諦めたような溜め息が零れ出た。
「だったら仕方ないネ。足だけは引っ張らないで欲しいアル」
それでどうやら納得してくれたらしい。サッサと御者台に乗り込んでいく。
「あーもう! 勝手にしてくれっ」
神木公平はわしゃわしゃと頭を掻きむしると、自分も馬車の荷台へと乗り込んだ。それからいつものように、佐敷瞳子に右手を差し出す。
しかし耳まで真っ赤に上気した佐敷瞳子は、暫くその手を取ることが出来なかった。
~~~
馬車は王都の外周を、外壁に沿って進んでいく。
そのまま西側にある主要門までたどり着くと、そこから西に向かって延びる街道に合流した。
まずは馬車で3時間ほどの場所にある、小さな農村を目指すことになる。
そこから更に3時間ほど行った先に、「ワイバーンの寝床」と云う人の寄り付かない沼地がある。
そこに「クコヨシノ」があるかは定かではないが、リーラはその場所に僅かな可能性を抱いていた。
薄桃色の小さくて可愛い花が咲き、ずっと昔から多くの人々に愛されてきた。
以前は小川の堤防や水辺周りにたくさん咲いていたのだが、可憐な花を目的とした乱獲に遭い、多くの自生地が消滅してしまっている。
今や園芸用の人工栽培によってその可憐な姿を見る事が殆どで、野生のヨシノソウは絶滅危惧種となっていた。
しかし残念ながら、中には人工栽培に成功していない品種もある。
「クコヨシノ」と云う品種が、それに当たる。
多くの薬用成分を含み、薬の材料として長い間親しまれてきた。更には、その実は酒や料理に、葉はお茶にと活躍の場は広い。
リーラはクコヨシノの人工栽培の成功を、自身の目標のひとつとしていた。
~~~
明けて翌日…
神木公平と佐敷瞳子は裏門を抜け、リーラの操る馬車に揺られている。
メイは外壁まで見送りに来てくれたが、そのまま直ぐに帰ってしまった。
朝、集合場所に集まったとき、神木公平はリーラに怪訝な視線を向けられた。まるで、何しに来たのかと言わんばかりの表情である。
どうしたものかと反応に困っていると、横からメイが助け船を出してくれた。
「まーまー、男手として、荷物持ちにでも連れて行ってやってくれよ」
「…役に立つアルか?」
「コーヘーもステータスが低い割にはそこそこ戦えるんだが…リーラの前だと、どうだろうな」
ステータスが低いと言う発言に、リーラのこめかみからピシッと青筋が浮き上がる。
「本当に…役に立つアルか?」
「まーまー、コイツら夫婦だからさ、そこは勘弁してやってくれ」
「ちょ…メイさんっっ!」
またしてもな扱いに、神木公平が焦って反論の声を漏らす。しかしそれを遮るように、リーラの口から諦めたような溜め息が零れ出た。
「だったら仕方ないネ。足だけは引っ張らないで欲しいアル」
それでどうやら納得してくれたらしい。サッサと御者台に乗り込んでいく。
「あーもう! 勝手にしてくれっ」
神木公平はわしゃわしゃと頭を掻きむしると、自分も馬車の荷台へと乗り込んだ。それからいつものように、佐敷瞳子に右手を差し出す。
しかし耳まで真っ赤に上気した佐敷瞳子は、暫くその手を取ることが出来なかった。
~~~
馬車は王都の外周を、外壁に沿って進んでいく。
そのまま西側にある主要門までたどり着くと、そこから西に向かって延びる街道に合流した。
まずは馬車で3時間ほどの場所にある、小さな農村を目指すことになる。
そこから更に3時間ほど行った先に、「ワイバーンの寝床」と云う人の寄り付かない沼地がある。
そこに「クコヨシノ」があるかは定かではないが、リーラはその場所に僅かな可能性を抱いていた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる