最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

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第六章 ワイバーンの寝床

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その姿は、鳥…と言うには大き過ぎた。

両翼を広げた姿は5メートルを優に超えている。

巨大な体躯は深緑色の鱗に覆われ、ドラゴンに似た大きく裂けた口元には鋭い牙が立ち並ぶ。両腕の替わりにコウモリのような皮膜の翼、両脚には鋭い鍵爪、そして尾の先端には矢尻のようなトゲが生えていた。

佐敷瞳子は呆然と空を見上げながら、囁くようにタグの名称を読み上げる。

「ワイ…バーン」

その声に釣られてか、リーラと神木公平も誘われるように空を見上げた。

そして、そのまま絶句する。

やがてワイバーンの開いた口内に、真紅の閃光が収縮し始めた。

「まさか…ブレスか?」

神木公平が震える声で、ボソッと呟く。

「そんな…駄目アル。クコヨシノが…貴重な生態系が…」

リーラが絶望感に打ち拉がれるように、フルフルと首を横に振り続ける。

その瞬間、佐敷瞳子が鋭い声で叫んだ。

「公平くん、使!」

彼女の肉声とヘッドホン越しとのハモリ声が、神木公平の耳奥に響き渡る。

同時に、一瞬閉じたワイバーンの口が再び開き、真っ赤な閃光が迸る。

しかしそのとき、全ての光景が、神木公平の金の双眸の前では永遠の一秒と化した。

佐敷瞳子の「使って」と云う単語に、考えるより先に身体が動く。

腰背面に差している風の刃エアブレードを瞬時に引き抜くと、神木公平は右上から左下に向けて袈裟斬りに振り抜いた。

一体何が起こったのか、リーラには全く理解が出来ない。ただその瞳には、左肩から右脇腹にかけて両断されたワイバーンの姿が映っていた。

   ~~~

本来「風の刃」とは、圧縮した刃状の風を撃ち出す魔法道具である。

その威力と速度は、消費された魔力量に依存する。

しかし今回リーラの瞳には、その魔法現象は確認出来ず、ただの結果として、両断されたワイバーンの姿が映るのみであった。

いや、そもそもソレがおかしい。

こんな欠陥品に…いや、どんな高等な魔法道具と云えども、ワイバーンを一撃で撃破出来る物などある筈がない。

ガサガサと音を立てて、ワイバーンの身体が林の中に落ちていく。

リーラは思考の整理もつかないまま、神木公平へと視線を移した。

すると当の本人も、右手に持つ魔法道具をただジッと凝視している。

それからゆっくりと口元に笑みを浮かべると、勢いよく佐敷瞳子の方に振り返った。

「やっぱスゲーよ、瞳子は! コレにも何か、威力アップの付加とかが付いてたんだよな?」

「えっ⁉︎」
「はあ?」

佐敷瞳子とリーラが、揃えたように素っ頓狂な声をあげる。しかし直ぐに我に返ると、リーラは何度も首を横に振った。

「まさか、そんな筈ないアルっ」

「だけど、見ましたよね、今の?」

「見た…確かに、見たアル」

「だったら、それ以外に無いですよね?」

「それ以外に、無い…アルか?」

それでもリーラは両腕を組んで、納得出来ないような顔をする。

「あ、あの…えっと」

唯一、真実を知る佐敷瞳子は、罪悪感を感じながらも結局口をつぐんでしまった。
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