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第六章 ワイバーンの寝床
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色々と惜しい気持ちは沢山あるが、そうそう長居もしてられない。
先ず第一に、ここを寝床としているワイバーンが一匹だけとは限らない。万が一にも番がいるとなれば、直ぐにでも次が現れるかもしれない。
そうで無くても、この血の匂いに釣られて、他の魔獣が姿を現すのも時間の問題である。
リーラは古来より希少な素材とされている、ワイバーンの「眼球」と「心臓」を素早く回収すると、持参していた瓶の中に収納する。
それから数本の「クコヨシノ」を土ごと掘り返し、同じく持参した麻袋の中に丁寧に詰め込む。
その後、佐敷瞳子の案内のもと、数種類の貴重な素材を回収すると、一目散にこの場を退避した。
我が身可愛さも勿論あるが、この即時撤退の一番の理由は、この場所を戦闘行為で荒らしたくない…と云う彼女の想いからであった。
そうして馬車がジェイエに着いた頃には、陽は既に沈んでしまっていた。
夜型の魔獣は獰猛な種類が多いとかで、今日はこの農村で一泊の予定である。
元々観光地でもないここの宿泊施設は、食堂の二階の大部屋に各自布団を敷くだけという、簡素な物であった。
他にも一組の利用客がいたが、そこそこ広い部屋なので、ある程度の距離も確保出来ている。
貴重品は有料のロッカーに預けることが出来るが、大きな荷物は基本的には自己責任という事になっていた。
ただまあ、宿泊には身分証の提示が必要であり、大きな問題が起きることは余りないらしい。
その後、王都アインベルへと戻ってきたのは、翌日の昼頃を過ぎてからであった。
~~~
「おいおいコイツは、ワイバーンの目ん玉じゃねーかよっ!」
差し出された瓶を確認して、メイが焦ったような声をあげた。
今回持ち帰った素材は、その殆どが薬の素材になるとかで、リーラは買取屋に何も売却しなかった。
そしてその中で、魔法道具の一件とは別に、報酬として二人に渡されたのがワイバーンの眼球である。
「何があった?」
「メイ、その事でこのあと、コーヘーを教会に連れて行きたいのだけど良いアルか?」
リーラの真剣な眼差しに、メイはハッとして神木公平へと目線を向けた。
「まさか…コーヘーがやったのかい?」
「はい、まあ、俺がやったっつーか、瞳子のおかげっつーか…」
すると神木公平は、頭の後ろに手を当てながら何とも曖昧な表情を作る。それを見てメイは、口の端っこに興味深そうな笑みを浮かべた。
「よし、私も人伝てに聞いただけで、気にはなってたんだ。今から店を畳むから手伝っておくれ」
「え…?」
神木公平が意味も分からず呆けた顔をする。
「察しが悪いね、私もついてくって言ってんだ。さあさあサッサと身体を動かすっ!」
「は、はい!」
メイがパンパンと両手を打ち鳴らすと、神木公平と佐敷瞳子は慌てて閉店作業に取り掛かった。
先ず第一に、ここを寝床としているワイバーンが一匹だけとは限らない。万が一にも番がいるとなれば、直ぐにでも次が現れるかもしれない。
そうで無くても、この血の匂いに釣られて、他の魔獣が姿を現すのも時間の問題である。
リーラは古来より希少な素材とされている、ワイバーンの「眼球」と「心臓」を素早く回収すると、持参していた瓶の中に収納する。
それから数本の「クコヨシノ」を土ごと掘り返し、同じく持参した麻袋の中に丁寧に詰め込む。
その後、佐敷瞳子の案内のもと、数種類の貴重な素材を回収すると、一目散にこの場を退避した。
我が身可愛さも勿論あるが、この即時撤退の一番の理由は、この場所を戦闘行為で荒らしたくない…と云う彼女の想いからであった。
そうして馬車がジェイエに着いた頃には、陽は既に沈んでしまっていた。
夜型の魔獣は獰猛な種類が多いとかで、今日はこの農村で一泊の予定である。
元々観光地でもないここの宿泊施設は、食堂の二階の大部屋に各自布団を敷くだけという、簡素な物であった。
他にも一組の利用客がいたが、そこそこ広い部屋なので、ある程度の距離も確保出来ている。
貴重品は有料のロッカーに預けることが出来るが、大きな荷物は基本的には自己責任という事になっていた。
ただまあ、宿泊には身分証の提示が必要であり、大きな問題が起きることは余りないらしい。
その後、王都アインベルへと戻ってきたのは、翌日の昼頃を過ぎてからであった。
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「おいおいコイツは、ワイバーンの目ん玉じゃねーかよっ!」
差し出された瓶を確認して、メイが焦ったような声をあげた。
今回持ち帰った素材は、その殆どが薬の素材になるとかで、リーラは買取屋に何も売却しなかった。
そしてその中で、魔法道具の一件とは別に、報酬として二人に渡されたのがワイバーンの眼球である。
「何があった?」
「メイ、その事でこのあと、コーヘーを教会に連れて行きたいのだけど良いアルか?」
リーラの真剣な眼差しに、メイはハッとして神木公平へと目線を向けた。
「まさか…コーヘーがやったのかい?」
「はい、まあ、俺がやったっつーか、瞳子のおかげっつーか…」
すると神木公平は、頭の後ろに手を当てながら何とも曖昧な表情を作る。それを見てメイは、口の端っこに興味深そうな笑みを浮かべた。
「よし、私も人伝てに聞いただけで、気にはなってたんだ。今から店を畳むから手伝っておくれ」
「え…?」
神木公平が意味も分からず呆けた顔をする。
「察しが悪いね、私もついてくって言ってんだ。さあさあサッサと身体を動かすっ!」
「は、はい!」
メイがパンパンと両手を打ち鳴らすと、神木公平と佐敷瞳子は慌てて閉店作業に取り掛かった。
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