48 / 114
第七章 チェルシー危機一髪!
48
しおりを挟む
「街は救国の英雄の話題で一杯でしたよ」
おつかいで頼まれた物を整理しながら、神木公平が見てきた様子を話題にあげる。
今より2日前のこと、咲森勇人たち3人のお披露目が王宮の広場で催された。
出遅れた神木公平たちは何とか広場には入れたが、殆ど最後尾での参加となった。
3階ほどの高さのテラスに、王族とともに咲森勇人たちが姿を現す。すると広場の民衆の間から、割れんばかりの大歓声が起きた。
先の見えない不安から、自分たちを救い出してくれる英雄への、強い期待の表れである。
物理的にも実力的にもかけ離れている咲森勇人の姿を見上げながら、それでも必ず追いつくと神木公平は改めて決意を示す。
しかしそのとき神木公平は、確かに咲森勇人とお互いに瞳が合った。
距離が離れ過ぎて、目の位置さえも分からない。
それでも神木公平には、不思議な確信があった。
「もう帰りましょう」
神木公平は呟くように、一緒に来ていた佐敷瞳子とメイに声をかけた。すると佐敷瞳子が、神木公平の左袖をキュッと掴む。
「公平くん…いいの?」
「そうだよコーヘー、使徒さまにお願いすれば、ちゃんと挨拶出来る筈さね」
「大丈夫です、挨拶は済ませました」
そう言って微笑むと、神木公平は再びテラスへと顔を向けた。しかし視線が交錯するあの感覚は、もう感じることは出来なかった。
「早く来いと、発破をかけられましたよ」
「…アンタが良いなら良いんだけどね」
メイは納得したように大きく頷くと、回れ右して出口へと歩き始める。
「それにしても英雄さまは、エルフのご神刀に選ばれたと言うじゃないかい。一度で良いからそんな凄い剣を、この目で拝んでみたいもんだよ」
頭の後ろで両指を組みながら、メイは心底羨ましそうに呟いた。
~~~
佐敷瞳子が高額商品を売上げてから翌日、神木公平と佐敷瞳子は初めて二人で南の森に来ていた。
何度か来たことのある、研磨材の収集である。
馬車の乗り方は以前からの付き添いで、既にメイから手解きを受けている。
基本的にレンタル馬車の馬は素直な馬が多いので、神木公平にも何とか覚えることが出来た。
そうしていつもの泉に馬車を停めると、先に別の馬車が停まっていた。今日は先客がいるようだ。
それから二人はヘッドホンを装着すると、神木公平は感応金属の籠手も装備する。
イヤリングの羽飾りは、佐敷瞳子が魔獣の接近に気付いてから付けても、どうやら問題ないようだ。
しかし結局何事もなく、断層の崖までたどり着く。
泉からのルート上にある珍しい物は粗方取り尽くしてしまい、目新しい物は何も無かった。
神木公平と二人で研磨材を集めていると、佐敷瞳子の視界の右隅にピコンと小さなタグが立った。しきりに明滅を繰り返している。
初めての現象に不思議に思い、佐敷瞳子は立ち上がって右手側に振り向く。併せてタグの内容を確認すると、体力が半分以下に減っていた。
そしてその近くに、黄色いタグも新たに跳ねる。
「誰かが…襲われてる」
佐敷瞳子は震える声で呟いた。
おつかいで頼まれた物を整理しながら、神木公平が見てきた様子を話題にあげる。
今より2日前のこと、咲森勇人たち3人のお披露目が王宮の広場で催された。
出遅れた神木公平たちは何とか広場には入れたが、殆ど最後尾での参加となった。
3階ほどの高さのテラスに、王族とともに咲森勇人たちが姿を現す。すると広場の民衆の間から、割れんばかりの大歓声が起きた。
先の見えない不安から、自分たちを救い出してくれる英雄への、強い期待の表れである。
物理的にも実力的にもかけ離れている咲森勇人の姿を見上げながら、それでも必ず追いつくと神木公平は改めて決意を示す。
しかしそのとき神木公平は、確かに咲森勇人とお互いに瞳が合った。
距離が離れ過ぎて、目の位置さえも分からない。
それでも神木公平には、不思議な確信があった。
「もう帰りましょう」
神木公平は呟くように、一緒に来ていた佐敷瞳子とメイに声をかけた。すると佐敷瞳子が、神木公平の左袖をキュッと掴む。
「公平くん…いいの?」
「そうだよコーヘー、使徒さまにお願いすれば、ちゃんと挨拶出来る筈さね」
「大丈夫です、挨拶は済ませました」
そう言って微笑むと、神木公平は再びテラスへと顔を向けた。しかし視線が交錯するあの感覚は、もう感じることは出来なかった。
「早く来いと、発破をかけられましたよ」
「…アンタが良いなら良いんだけどね」
メイは納得したように大きく頷くと、回れ右して出口へと歩き始める。
「それにしても英雄さまは、エルフのご神刀に選ばれたと言うじゃないかい。一度で良いからそんな凄い剣を、この目で拝んでみたいもんだよ」
頭の後ろで両指を組みながら、メイは心底羨ましそうに呟いた。
~~~
佐敷瞳子が高額商品を売上げてから翌日、神木公平と佐敷瞳子は初めて二人で南の森に来ていた。
何度か来たことのある、研磨材の収集である。
馬車の乗り方は以前からの付き添いで、既にメイから手解きを受けている。
基本的にレンタル馬車の馬は素直な馬が多いので、神木公平にも何とか覚えることが出来た。
そうしていつもの泉に馬車を停めると、先に別の馬車が停まっていた。今日は先客がいるようだ。
それから二人はヘッドホンを装着すると、神木公平は感応金属の籠手も装備する。
イヤリングの羽飾りは、佐敷瞳子が魔獣の接近に気付いてから付けても、どうやら問題ないようだ。
しかし結局何事もなく、断層の崖までたどり着く。
泉からのルート上にある珍しい物は粗方取り尽くしてしまい、目新しい物は何も無かった。
神木公平と二人で研磨材を集めていると、佐敷瞳子の視界の右隅にピコンと小さなタグが立った。しきりに明滅を繰り返している。
初めての現象に不思議に思い、佐敷瞳子は立ち上がって右手側に振り向く。併せてタグの内容を確認すると、体力が半分以下に減っていた。
そしてその近くに、黄色いタグも新たに跳ねる。
「誰かが…襲われてる」
佐敷瞳子は震える声で呟いた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる