最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

文字の大きさ
81 / 114
第十章 護衛任務

81

しおりを挟む
「まだ、空を旋回…してる」

佐敷瞳子は同一円状をグルグルと周回する黄色いタグを確認しながら、その状況を逐一チェルシーに報告していく。

チェルシーも、佐敷瞳子の指差す辺りを、見えないながらもしっかりと見据える。

「…あっ⁉︎」

そのとき黄色いタグが下方向へと動きを変え、佐敷瞳子は短い叫び声を漏らした。

獲物を狙い定めたのか、猛スピードでの降下に佐敷瞳子の実況が間に合わない。

「あ、赤い屋根の家に…向かってる!」

何とかその場所を指し示して、必死にそれだけ絞り出した。

チェルシーは、瞬時に佐敷瞳子の指差す方向に視線を巡らせる。すると赤い三角屋根の、大きな家の存在に気が付いた。

(あった、赤い屋根ですっ!)

透かさず意識を一点に集中させる事で、ライフルのスコープを覗き込んだように、視界の一部がズームアップする。…と同時に、乳白色の巨大な梟の姿を視界に捉えた。

「見つけたですっ!」

チェルシーは流れるように大弓の弦を引き絞ると、一切の迷いなく、その矢を射ち放つ。

「すっげ…」

そのとき背後で見ていた神木公平には、青いワンピースの小さな背中から、ブワッと一陣の風が吹き抜けたように感じられた。

   ~~~

「お見事です」

レトはひとり別の建物の屋根の上から、その矢の行方を見つめて微笑んだ。

「まさか爪を立てる前に仕留めてしまうとは、正直想定以上です」

喉を射抜かれ壁に縫い付けられた猿喰梟の周囲に、一体何事かと人々が集まり出す。

両手を両親と繋いだ小さな女の子も、背後で起きた突然の出来事に、訳も分からず両目をまん丸に見開いていた。

「おっといけない。そろそろ彼らが下りて来てしまいます。早く司祭に、塔の使用許可を貰っておかなければ…」

レトは慌てたように振り返ると、何やらボソッと口にする。すると同時に靴が淡い光を放ち、まるで羽のように軽やかに屋根の上を駆けて行った。

   ~~~

「皆さん、どうでしたか?」

神木公平たちが鐘つき塔の階段を下りて礼拝堂への扉を開けると、いの一番にレトが声をかけた。

ここの神父であろう白髭の老人の元から、慌てた様子で駆け寄ってくる。

「チェルシーがちゃんと決めてくれた! スッゲー格好良くて、レトにも見せたかったよ」

興奮気味の神木公平に早口で褒め称えられ、チェルシーは顔を赤らめて照れたように頭を掻いた。

「流石ですね、チェルシーさん。では後は、怪我人の対処を司祭さまにお願いしておきます」

「えっと、大丈夫…必要ない」

再び駆け戻ろうとするレトの背中を、佐敷瞳子が呼び止める。

「…えっ⁉︎」

「襲われる前に、仕留めた…から」

「まさか…空中で射抜いたのですか⁉︎」

レトから驚きの表情で見つめられ、チェルシーは真っ赤な顔で「ナハハ」と笑った。

「自分でも驚きですー。トーコさんに選んで貰ったこの弓、スゴ過ぎですー」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...