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第十章 護衛任務
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水晶湖で更にもう一泊してからの翌朝、神木公平たちは王都アインベルへ向けての帰路についた。
買い込んだ食材を全て携帯食に調理し、馬の休憩を挟みつつ、一気に王都を目指す。
そうして神木公平たちが王都に着いたのは、夜の10時を回ってからであった。
馬車はこのまま騎士団の本部を目指すというので、方角の違う神木公平たちとチェルシーは、傭兵組合本部の前で降ろしてもらう。
「短い間でしたが、皆さんとお会い出来て本当に良かったです」
レトが別れ際、少し寂しそうな笑顔を見せた。
「出来ればで良いのですが、いつかまた…」
「レトは勉強が忙しいだろうからさ、時間が空いたらいつでもメイさんの再生屋に来なよ。俺たちは大抵そこに居るから」
「良いのですか?」
「何言ってんだよ、友達だろ?」
そう言って神木公平が、幸運のパスケースをヒラヒラと軽やかに振る。
「ちょっと予定とは違ったけど、コーヘーさんとお揃いですし、貰った物は大事にするですー」
「…うん」
チェルシーは不本意そうに顔を背け、佐敷瞳子はハニカミながらパスケースを胸に抱き寄せた。
「ありがとうございます。必ず会いに行きます」
レトは一度大きく頭を下げると、とても嬉しそうに微笑んだ。
~~~
6人の騎兵と2台の馬車が、山の手エリアの麓にある騎士団本部の正門前に到着すると、そこには豪華なリムジンが待っていた。
モチロン魔核で動く「魔動車」だ。
アイゼンは部下と1台の馬車に、先に正門に入るよう指示を伝える。
少しの後、そのリムジンからひとりの女性がスッと降りてきた。
頭とお尻に、黄土色で毛先が白い、キツネのような耳と尻尾が生えている。
清楚な雰囲気漂う長袖のメイド服は、スカートの裾が脛のあたりまである。背中まで伸びる栗色の美しいストレート髪は、毛先を白いリボンで結われていた。
メイドは優雅に歩みを進めると、馬車の扉を開けて頭を下げる。
「おかえりなさいませ、レティス様」
「ああ、カチュア。ただいま」
ひとり馬車に乗っていた少年が、メイドに挨拶を返しながら降りてきた。それからチラリと馬上のアイゼンに視線を送る。
するとアイゼンは言葉もなく一礼し、馬車を連れて正門の中へと去っていった。
その姿を見送る少年の背中に、メイドは頭を下げたまま言葉をかける。
「長旅お疲れさまでございました。道中は如何でしたでしょうか?」
「…何とか、友達にはなれたよ」
「さようでございますか、それは……えっ⁉︎」
想定外の返答に、カチュアは思わず顔を上げた。
「ああ勿論、市民証も確認してきた」
カチュアの反応に愉しそうに笑うと、レティスは街の南区画へと視線を向ける。
「何故だか市民証の発行時期が、英雄殿たちと一緒だった。面白いね」
「本格的に調査員を派遣しますか? そうすれば役所の申請書も、閲覧する事が出来る筈です」
「いや、それだと王宮の老獪たちに気付かれる恐れがある」
ハルベルト=スピアーの件から始まり、クラーケン騒動と…カチュアが秘密裏に情報収集を行なってきた。しかし非公式ではどうしても、目撃情報程度の収集に留まってしまう。
「第二の救世主たり得る彼らを、身勝手な保身の駒などに使わせる訳にはいかない。サッサと存在を公にさせる」
「それでは…?」
「ああ、計画を進めようか。再会は存外早いかもしれないね、コーヘーさん」
レティスは夜空を見上げると、悪戯っ子のような笑顔を見せた。
買い込んだ食材を全て携帯食に調理し、馬の休憩を挟みつつ、一気に王都を目指す。
そうして神木公平たちが王都に着いたのは、夜の10時を回ってからであった。
馬車はこのまま騎士団の本部を目指すというので、方角の違う神木公平たちとチェルシーは、傭兵組合本部の前で降ろしてもらう。
「短い間でしたが、皆さんとお会い出来て本当に良かったです」
レトが別れ際、少し寂しそうな笑顔を見せた。
「出来ればで良いのですが、いつかまた…」
「レトは勉強が忙しいだろうからさ、時間が空いたらいつでもメイさんの再生屋に来なよ。俺たちは大抵そこに居るから」
「良いのですか?」
「何言ってんだよ、友達だろ?」
そう言って神木公平が、幸運のパスケースをヒラヒラと軽やかに振る。
「ちょっと予定とは違ったけど、コーヘーさんとお揃いですし、貰った物は大事にするですー」
「…うん」
チェルシーは不本意そうに顔を背け、佐敷瞳子はハニカミながらパスケースを胸に抱き寄せた。
「ありがとうございます。必ず会いに行きます」
レトは一度大きく頭を下げると、とても嬉しそうに微笑んだ。
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6人の騎兵と2台の馬車が、山の手エリアの麓にある騎士団本部の正門前に到着すると、そこには豪華なリムジンが待っていた。
モチロン魔核で動く「魔動車」だ。
アイゼンは部下と1台の馬車に、先に正門に入るよう指示を伝える。
少しの後、そのリムジンからひとりの女性がスッと降りてきた。
頭とお尻に、黄土色で毛先が白い、キツネのような耳と尻尾が生えている。
清楚な雰囲気漂う長袖のメイド服は、スカートの裾が脛のあたりまである。背中まで伸びる栗色の美しいストレート髪は、毛先を白いリボンで結われていた。
メイドは優雅に歩みを進めると、馬車の扉を開けて頭を下げる。
「おかえりなさいませ、レティス様」
「ああ、カチュア。ただいま」
ひとり馬車に乗っていた少年が、メイドに挨拶を返しながら降りてきた。それからチラリと馬上のアイゼンに視線を送る。
するとアイゼンは言葉もなく一礼し、馬車を連れて正門の中へと去っていった。
その姿を見送る少年の背中に、メイドは頭を下げたまま言葉をかける。
「長旅お疲れさまでございました。道中は如何でしたでしょうか?」
「…何とか、友達にはなれたよ」
「さようでございますか、それは……えっ⁉︎」
想定外の返答に、カチュアは思わず顔を上げた。
「ああ勿論、市民証も確認してきた」
カチュアの反応に愉しそうに笑うと、レティスは街の南区画へと視線を向ける。
「何故だか市民証の発行時期が、英雄殿たちと一緒だった。面白いね」
「本格的に調査員を派遣しますか? そうすれば役所の申請書も、閲覧する事が出来る筈です」
「いや、それだと王宮の老獪たちに気付かれる恐れがある」
ハルベルト=スピアーの件から始まり、クラーケン騒動と…カチュアが秘密裏に情報収集を行なってきた。しかし非公式ではどうしても、目撃情報程度の収集に留まってしまう。
「第二の救世主たり得る彼らを、身勝手な保身の駒などに使わせる訳にはいかない。サッサと存在を公にさせる」
「それでは…?」
「ああ、計画を進めようか。再会は存外早いかもしれないね、コーヘーさん」
レティスは夜空を見上げると、悪戯っ子のような笑顔を見せた。
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