99 / 114
第十二章 指名依頼
99
しおりを挟む
翌朝、
神木公平と佐敷瞳子が、チェルシーと待ち合わせて傭兵組合本部へ入ると、レディーススーツ姿のグレイスが入り口付近で待っていた。
「あ、おはようございます。グレイスさん」
それに気付いた神木公平が、会釈をしながらタッと駆け寄る。
「早くからごめんなさいね。ですが先方さんの遣いの方が、既にお部屋でお待ちよ」
「えっ、もうですか?」
「そうなのよ、早いわよねー。一体、何事なのかしら?」
グレイスは右手を頬に添えて、「ほっ」と小さな溜め息を吐いた。
「お母さ…」
「本部長」
そのとき声を発したチェルシーに、グレイスがとてもにこやかな笑顔を向ける。瞬時に危機を察したチェルシーは、背筋を伸ばして姿勢を改めた。
「…ほ、本部長はもう、レティス様にお会いしたのですか?」
「どうなのかしら? 男性と女性の二人でいらっしゃったのは確かなのだけれど…」
それに答えたグレイスは、三人に着いてくるように手招きして、一番前を歩き始める。
「少なくとも女性の方は、給仕服を着た、キツネ獣人のお方でしたわね」
「……キツネ」
黙って歩いていた佐敷瞳子が、グレイスの言葉にボソッと小さな反応をみせた。モフモフの尻尾を連想する。とても柔らかそうだ。
そうして通されたのは、組合本部の二階にある、要人専用の応接室。グレイスは扉の前に立つと、コンコンと扉をノックした。
「はい」
返事と共に扉が開く。
するとそこには、黄土色で毛先が白い、キツネの耳と尻尾が生えている女性が立っていた。清楚な雰囲気漂う長袖のメイド服はスカート丈が脛のあたりまであり、栗色のストレート髪には背中の中程で白いリボンが結ばれている。
「三人が到着しましたので、お連れしました」
先頭にいたグレイスが、そのままゆっくりと頭を下げた。
「ああ、皆さん、お久しぶりです!」
そのとき部屋の奥から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。それからまるで跳ねるように、ひとりの男性が飛び出してきた。
サラリと揺れる黒髪ストレートのおかっぱ頭、今日は赤いマントを羽織っているが、腰周りと裾に青のラインの入った白い長衣を着たその姿は……
「え…あ、レト⁉︎ どうしてここに⁉︎」
神木公平が、思わず素っ頓狂な声を上げる。
「この方は、レティス=ギルフォード様。王宮の、筆頭魔法士でございます」
まるでそれに応えるように、給仕服を着たキツネ獣人の女性が、両手をお腹に添えて、ゆっくりと頭を下げた。
暫くの沈黙……
やがて神木公平、チェルシーの二人揃えた大きな声が、組合本部中に響き渡った。(佐敷瞳子は、大口を開けたまま無音)
神木公平と佐敷瞳子が、チェルシーと待ち合わせて傭兵組合本部へ入ると、レディーススーツ姿のグレイスが入り口付近で待っていた。
「あ、おはようございます。グレイスさん」
それに気付いた神木公平が、会釈をしながらタッと駆け寄る。
「早くからごめんなさいね。ですが先方さんの遣いの方が、既にお部屋でお待ちよ」
「えっ、もうですか?」
「そうなのよ、早いわよねー。一体、何事なのかしら?」
グレイスは右手を頬に添えて、「ほっ」と小さな溜め息を吐いた。
「お母さ…」
「本部長」
そのとき声を発したチェルシーに、グレイスがとてもにこやかな笑顔を向ける。瞬時に危機を察したチェルシーは、背筋を伸ばして姿勢を改めた。
「…ほ、本部長はもう、レティス様にお会いしたのですか?」
「どうなのかしら? 男性と女性の二人でいらっしゃったのは確かなのだけれど…」
それに答えたグレイスは、三人に着いてくるように手招きして、一番前を歩き始める。
「少なくとも女性の方は、給仕服を着た、キツネ獣人のお方でしたわね」
「……キツネ」
黙って歩いていた佐敷瞳子が、グレイスの言葉にボソッと小さな反応をみせた。モフモフの尻尾を連想する。とても柔らかそうだ。
そうして通されたのは、組合本部の二階にある、要人専用の応接室。グレイスは扉の前に立つと、コンコンと扉をノックした。
「はい」
返事と共に扉が開く。
するとそこには、黄土色で毛先が白い、キツネの耳と尻尾が生えている女性が立っていた。清楚な雰囲気漂う長袖のメイド服はスカート丈が脛のあたりまであり、栗色のストレート髪には背中の中程で白いリボンが結ばれている。
「三人が到着しましたので、お連れしました」
先頭にいたグレイスが、そのままゆっくりと頭を下げた。
「ああ、皆さん、お久しぶりです!」
そのとき部屋の奥から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。それからまるで跳ねるように、ひとりの男性が飛び出してきた。
サラリと揺れる黒髪ストレートのおかっぱ頭、今日は赤いマントを羽織っているが、腰周りと裾に青のラインの入った白い長衣を着たその姿は……
「え…あ、レト⁉︎ どうしてここに⁉︎」
神木公平が、思わず素っ頓狂な声を上げる。
「この方は、レティス=ギルフォード様。王宮の、筆頭魔法士でございます」
まるでそれに応えるように、給仕服を着たキツネ獣人の女性が、両手をお腹に添えて、ゆっくりと頭を下げた。
暫くの沈黙……
やがて神木公平、チェルシーの二人揃えた大きな声が、組合本部中に響き渡った。(佐敷瞳子は、大口を開けたまま無音)
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる