最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

文字の大きさ
106 / 114
第十二章 指名依頼

106

しおりを挟む
「あ、あのさ…」

チェルシーの処遇についての会話にひと段落がついたところで、神木公平がおずおずと声をあげた。

「言ってる事は確かに分かるけど、ちょっと厳しすぎやしないか?」

「私も…そう思う」

それに続くように、佐敷瞳子も口を開く。

「まだまだなのは…確かだけど、猿喰梟の…時に、凄く…実力が上がった」

「これは、少し語弊がありましたね」

そんな二人の行動に、レティスは思わず柔和な表情を浮かべた。

「僕は何も、チェルシーさんの評価を低く見積もっている訳ではありません。彼女は一流の射手になれる可能性を秘めている。だから、チェルシーさん」

そう言ってレティスは、再び真剣な眼差しでチェルシーを見つめる。

「騎士団に、入りませんか?」

「……え⁉︎」

「騎士団に入って、しっかりとした実戦演習で、その才能を伸ばして欲しいのです」

「え? え、だけど…騎士団に入るって、そんな簡単には…っ」

あまりに突然の提案に、チェルシーは混乱して、両手がわちゃわちゃと動き回った。

「仰るように騎士団への編入は、騎士学院で資格を得るか、若しくは、厳しい入団審査を通過しなくてはなりません。しかし方法は、それだけではないのです」

「…え?」

「あまり良い制度ではないのですが……相当の地位の者からの推薦があれば、入団する事が出来るのです。今回は、その制度を逆手に使いましょう」

「それはもしかして、レティス様が後ろ盾になる…と言う事かしら?」

レティスのこの発言に、母親であるグレイスの翡翠色の瞳がギラリと光る。

「そう受け取って貰って構いません」

これは…スピアー家のお坊っちゃんなんかより、遥かに良い物件が転がり込んできた。

グレイスはピンと背筋を伸ばすと、姿勢正しく頭を下げる。

「娘をよろしくお願いします」

「ちょ、ちょっと、お母さん!」

それから焦って駆け寄ってきたチェルシーに右手を伸ばし、

「聞きなさい、チェルシー」

若草色の娘の髪を、優しい仕草でそっと撫でた。

「傭兵はあくまで個人主義。後進の育成なんて概念は殆ど無いの。いつかは改善したいとは思うのだけど、直ぐにと言う訳にもいかないわ。だからね、チェルシー。これはアナタにとって、とても良い話なのよ」

「それは、そうかもですけど…っ」

「それに騎士ともなれば、老後は安泰。一介の傭兵で終わるより、チャンスがあるなら目指すべきよ」

「僕も、そう思います」

まるでグレイスに合わせるように、レティスも優しい声で言葉を続ける。

「チェルシーさんの才能は、騎士団のような統率のとれた戦闘でこそ活きるもの。単独が主体の傭兵よりも、より良い結果が出せると思います」

「そ…そこまで言うなら仕方ないです。にゃはー」

あ、落ちた。

苦笑いした神木公平の視線の先で、その気になった少女がとろけた表情を浮かべていた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...