最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

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第十二章 指名依頼

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「このままじゃ…間に合わない」

風のように疾走する馬車の中、不意に前方を見つめた佐敷瞳子がポツリと呟いた。

現在地はまだ、ハンタリオンを越えた辺り。替えの馬車に乗り換えてから一時間が経った頃である。

「こんな遠くから、何か見えたのか⁉︎」

隣に座っていた神木公平が、その声を聞きつけて驚いた表情を浮かべた。

そのとき、前を向いた姿勢のまま、佐敷瞳子がコクリと頷く。そんな二人の耳元にはヘッドホンが装着されていた。

激しくきしむ馬車の悲鳴。馬のいななきに蹄の音。周囲は轟音に支配されている。

そんな中で二人の会話が成立するのは、ミサに貰ったヘッドホンの為せる業であった。

「炎みたいな、赤い…タグ」

「炎…?」

「急に、出てきた」

突然、ピンと跳ねた炎のタグ。それに付随するように現れた、直ぐ横にある赤いタグ。

確認すると、赤いタグの名はエルアーレ。彼女の数値も二万を超えるが、炎のタグは十万を優に超えている。勝ち目など到底無かった。

「つまり、どう言う状況なんだ?」

どうにも要領の得ない佐敷瞳子の説明に、神木公平はもう一度確認する。

「エルアーレが…危ない」

「なら俺は、どうしたらいい?」

彼の真剣なその声に、佐敷瞳子はゆっくりと振り返った。

「…エルアーレを、助けて」

真っ直ぐに見つめる彼女の瞳に、神木公平はフッと表情を緩めて微笑んだ。

「分かった。行ってくる」

~~~

「レト、直ぐに馬車を停めてくれ!」

神木公平は席を立って前に移動すると、御者台に座るレティスの背中をポンと叩いた。

レティスは訳も分からず困惑するが、神木公平の真剣な眼差しを受け、手綱を握るカチュアへと急停車の指示を出す。

「何かあったのですか?」

「エルアーレが危ないらしい」

「…例の、少女ですね?」

「ああ」

「それで、どうするおつもりですか?」

言いながらレティスは、探るような視線を神木公平へと向けた。その振る舞いに、別段気負った様子は見受けられない。

「先に行って、助けてくる」

「お一人で? トーコさんは何と?」

「瞳子が俺に、行ってくれって」

「…そうですか」

レティスがチラリと目線をやると、佐敷瞳子は焦ったように俯いて、それからコクリと頷いた。

「分かりました。トーコさんが言うなら大丈夫なんでしょう。コーヘーさんに託します」

「ああ、やれるだけやってみる」

「公平くん」

そのとき佐敷瞳子が、神木公平の上着の裾をチョイチョイと引っ張る。

「ん?」

「これ」

差し出されたのは、虹色に光沢のある、銀色の羽のイヤリング。幻影鳥の羽飾りだ。

「使って」

真っ赤な顔して俯く佐敷瞳子に、神木公平の表情が自然な笑みで一杯になる。

「分かった。サンキューな、瞳子」

そうして差し出されたイヤリングを受け取ると、

「じゃ、ちょっと行ってくる」

軽い感じで言い残して、馬車から勢いよく飛び出して行った。
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