最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

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第十二章 指名依頼

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「蟻の如き存在には、属性なんて次元の話ではない事が、理解出来ないのでしょうね」

口元に右手の甲を添えながら、ルサルサがあざけるような微笑を浮かべる。

その時ルサルサの意図を察したエルアーレが、後方に振り返って声を張り上げた。

「逃げろ! 今すぐここから離れるんじゃ!」

しかし同時に迸った一本の圧縮された水流が、レーザーと化して彼女の頭上を通り過ぎる。守備隊が防御に展開した土塁の壁も難なく貫き、そのまま一直線に大地を抉り取った。

「くそっ」

更に追撃の様子を見せるルサルサに、エルアーレは無意識に悪態を吐く。透かさず両手で創り出した二発の業火球を、ルサルサの左右の水面目掛けて投げ入れた。

直後に水中で、二発の業火球が大爆発を起こす。そうして水中で気化した水蒸気が、二本の水柱となって一気に外へと噴き出した。

すると濃密な蒸気がルサルサ包み込み、狙いどおりに視界を奪う。

エルアーレは今しかないと振り向いて、再び声を一杯に張り上げた。

「お主らが居ても、ただの足手まといじゃ! 良いから今のうちに…っ」

「なんて、お優しいこと」

その瞬間、お腹の底にまで響くような重低音の囁き声が、エルアーレの直ぐ真後ろで発せられる。

生命の危機にゾッとしたエルアーレは、反射的に背後を振り返った。しかし即座に喉輪を掴まれ、強引に身体ごと持ち上げられる。

ルサルサは左手一本で少女の身体を支え上げ、自分の目線と高さを合わせた。

「本当、付き合い切れないお馬鹿さんだわ」

「じゃったらもう、放っといて…貰えんかの」

息苦しさに表情を歪めながら、それでもエルアーレは不敵に笑う。

「そうもいかないわ。貴女をここで見逃せば、次も必ず妨害するでしょう?」

「かも、しれんの」

「だからね、仕方がないの」

言葉とは裏腹に、ルサルサは恍惚の表情を満面に浮かべた。

「永い付き合いでしたけれど、エルアーレ、貴女とはここでお別れよ」

その時ルサルサの右の手のひらに、辺りの水蒸気が吸い寄せられ、四発の小さな水弾が精製される。そしてそれぞれが高速軌道で曲線を描き、エルアーレの四肢の全てに命中した。

「がっ⁉︎ こ、の…っ」

苦痛の声は堪えるが、エルアーレの両手足はダランと力無く垂れ下がる。

「どうしましたか、エルアーレ。こんなにされても魔神化を起こさないだなんて」

ルサルサは高らかに笑いながら、エルアーレの喉元に更に右手を差し込んだ。それからその小さな身体を、両手で頭上にまで持ち上げる。

「わ、儂の…炎は、鉄を…鍛える、ために在る…」

「何かしら、聞こえないわね」

掠れるようなエルアーレの声に、ルサルサは力を抜いて、再び自分の目線へと高さを合わせた。

「師匠の墓前で…誓ったんじゃ! 二度と魔神になぞ、変化へんげしたりはせん!」

同時にエルアーレの口から吹いた火炎放射が、ルサルサの顔面に命中する。不意を突いたその炎は、彼女の前髪をチリチリと微かに焼いた。

「…でしたらもう、死になさい」

その事実に気付いてか、ルサルサは無表情で言葉を紡ぐ。そうして興味を失くした人形と同じく、エルアーレの身体を放り捨てた。

彼女の身体が映像のようにゆっくりと、弧を描いて落ちていく。

そのまま地面へと、落下する寸前…

「良い啖呵たんかだったぞ、エルアーレ」

エルアーレの小さな身体が、突然何かに抱き止められた。
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