最弱ステータスのこの俺が、こんなに強いわけがない。

さこゼロ

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第十二章 指名依頼

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「何か、居るわね?」

突然聞こえた正体不明な男の声に、ルサルサは注意深く眼前の様子を観察する。

その姿を確認する事は出来ないが、確かに何者かが存在していた。

「姿を見せなさい」

重低音の響く険しい声で、ルサルサはその何者かに呼びかける。

「ちょっとだけゴメンな、エルアーレ」

しかし、こちらの声に反応も見せずに、その何者かはエルアーレの身体を横たえさせた。

そして次の瞬間、

ルサルサの顔面に凄まじい衝撃が走り、鎌首ごと宙に跳ね上がる。

そのまま蛇の胴体を支点に、七つの首諸共、背後の水面に倒れ込んだ。

激しい水音が鳴り響くなか、エルアーレは必死に上半身を起き上がらせる。

「お、お主、何者じゃ⁉︎」

「何者って……あ、そうか!」

そうして現れたその姿に、

「お主、コーヘー…コーヘーか⁉︎」

素っ頓狂な声を上げた。

~~~

「無事なようで良かったよ、エルアーレ」

神木公平は安堵の表情を浮かべると、膝をついて様子を伺う。

「それよりお主、今、何をした⁉︎」

しかしそんな事はお構い無しに、エルアーレが慌てた声でおつゆを撒き散らした。

「な、何…って?」

「じゃから、あのルサルサの奴に、一体何をしたんじゃ⁉︎」

エルアーレは震える腕を必死に動かし、湖面に向けて右手を指差す。

「あー…まあ、とりあえず、敵だと思ったから思いっきり殴ってやった」

「殴ったじゃと⁉︎」

再びエルアーレが、素っ頓狂な声を上げた。

(一発殴っただけで、ルサルサの奴が倒れ伏したと言うのか⁉︎)

今、目の前で起こった現実に、動揺の色が隠し切れない。しかし事態はそんな彼女を、悠長には待ってくれなかった。

上空に漂うドンヨリ雲が渦を巻き、岸から離れたその場所だけが豪雨になる。

雲の渦巻く中心地、激しい雨煙の更に奥で、巨大な影が起き上がる。七つの首がゆらりと揺れて、真紅の瞳が憎悪の閃光を撃ち放った。

同時にその巨体に匹敵する程の、真っ赤な六芒星の魔法陣が出現する。

「消え去り…なさいっ!」

まるで地獄の底から響くような二重に聞こえる重低音が、水面さえも激しく揺らした。

「マズイ! あの魔法は…っ」

「撃たせるかよっ!」

慌てたエルアーレが両目を身開く。瞬時に神木公平の双眸が金色の光を放ち、風の刃エアブレードを都合三回、縦横斜めに振り抜いた。

「がっ、ぐっ、げっ!」

鋭い呻き声が三発響き、六分割された魔法陣が霧の様に消え去っていく。

やがて、ぐらりと揺れた七つ首の巨体も、雨粒に削られるように崩れ去り始めた。

「まさか……倒しおった…のか?」

信じられないその光景に、エルアーレの声が掠れて震える。そうして目の前に立つ少年の背中を見上げていると、不意に笑顔でこちらを向いた。

「そういえばアイツ、結構強かったな」

「結構…強かったじゃと⁉︎」

そんな神木公平の発言に、エルアーレはもう何度目かの間抜けな声を出す。

「だって一発で終わらなかったのは、アイツが初めてだったからさ」

此奴こやつは一体、何を言っておるのじゃ? 事の重大さに、まるで気付いておらぬのか?

「コーヘー、お主…イカれておるわ」

「何だよ、それ。褒めてねーのかよ」

エルアーレは俯き加減で両目を閉じると、呆れた笑顔を抑え切れなかった。
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