112 / 114
第十二章 指名依頼
112
しおりを挟む
「何か、居るわね?」
突然聞こえた正体不明な男の声に、ルサルサは注意深く眼前の様子を観察する。
その姿を確認する事は出来ないが、確かに何者かが存在していた。
「姿を見せなさい」
重低音の響く険しい声で、ルサルサはその何者かに呼びかける。
「ちょっとだけゴメンな、エルアーレ」
しかし、こちらの声に反応も見せずに、その何者かはエルアーレの身体を横たえさせた。
そして次の瞬間、
ルサルサの顔面に凄まじい衝撃が走り、鎌首ごと宙に跳ね上がる。
そのまま蛇の胴体を支点に、七つの首諸共、背後の水面に倒れ込んだ。
激しい水音が鳴り響くなか、エルアーレは必死に上半身を起き上がらせる。
「お、お主、何者じゃ⁉︎」
「何者って……あ、そうか!」
そうして現れたその姿に、
「お主、コーヘー…コーヘーか⁉︎」
素っ頓狂な声を上げた。
~~~
「無事なようで良かったよ、エルアーレ」
神木公平は安堵の表情を浮かべると、膝をついて様子を伺う。
「それよりお主、今、何をした⁉︎」
しかしそんな事はお構い無しに、エルアーレが慌てた声でお汁を撒き散らした。
「な、何…って?」
「じゃから、あのルサルサの奴に、一体何をしたんじゃ⁉︎」
エルアーレは震える腕を必死に動かし、湖面に向けて右手を指差す。
「あー…まあ、とりあえず、敵だと思ったから思いっきり殴ってやった」
「殴ったじゃと⁉︎」
再びエルアーレが、素っ頓狂な声を上げた。
(一発殴っただけで、ルサルサの奴が倒れ伏したと言うのか⁉︎)
今、目の前で起こった現実に、動揺の色が隠し切れない。しかし事態はそんな彼女を、悠長には待ってくれなかった。
上空に漂うドンヨリ雲が渦を巻き、岸から離れたその場所だけが豪雨になる。
雲の渦巻く中心地、激しい雨煙の更に奥で、巨大な影が起き上がる。七つの首がゆらりと揺れて、真紅の瞳が憎悪の閃光を撃ち放った。
同時にその巨体に匹敵する程の、真っ赤な六芒星の魔法陣が出現する。
「消え去り…なさいっ!」
まるで地獄の底から響くような二重に聞こえる重低音が、水面さえも激しく揺らした。
「マズイ! あの魔法は…っ」
「撃たせるかよっ!」
慌てたエルアーレが両目を身開く。瞬時に神木公平の双眸が金色の光を放ち、風の刃を都合三回、縦横斜めに振り抜いた。
「がっ、ぐっ、げっ!」
鋭い呻き声が三発響き、六分割された魔法陣が霧の様に消え去っていく。
やがて、ぐらりと揺れた七つ首の巨体も、雨粒に削られるように崩れ去り始めた。
「まさか……倒しおった…のか?」
信じられないその光景に、エルアーレの声が掠れて震える。そうして目の前に立つ少年の背中を見上げていると、不意に笑顔でこちらを向いた。
「そういえばアイツ、結構強かったな」
「結構…強かったじゃと⁉︎」
そんな神木公平の発言に、エルアーレはもう何度目かの間抜けな声を出す。
「だって一発で終わらなかったのは、アイツが初めてだったからさ」
此奴は一体、何を言っておるのじゃ? 事の重大さに、まるで気付いておらぬのか?
「コーヘー、お主…イカれておるわ」
「何だよ、それ。褒めてねーのかよ」
エルアーレは俯き加減で両目を閉じると、呆れた笑顔を抑え切れなかった。
突然聞こえた正体不明な男の声に、ルサルサは注意深く眼前の様子を観察する。
その姿を確認する事は出来ないが、確かに何者かが存在していた。
「姿を見せなさい」
重低音の響く険しい声で、ルサルサはその何者かに呼びかける。
「ちょっとだけゴメンな、エルアーレ」
しかし、こちらの声に反応も見せずに、その何者かはエルアーレの身体を横たえさせた。
そして次の瞬間、
ルサルサの顔面に凄まじい衝撃が走り、鎌首ごと宙に跳ね上がる。
そのまま蛇の胴体を支点に、七つの首諸共、背後の水面に倒れ込んだ。
激しい水音が鳴り響くなか、エルアーレは必死に上半身を起き上がらせる。
「お、お主、何者じゃ⁉︎」
「何者って……あ、そうか!」
そうして現れたその姿に、
「お主、コーヘー…コーヘーか⁉︎」
素っ頓狂な声を上げた。
~~~
「無事なようで良かったよ、エルアーレ」
神木公平は安堵の表情を浮かべると、膝をついて様子を伺う。
「それよりお主、今、何をした⁉︎」
しかしそんな事はお構い無しに、エルアーレが慌てた声でお汁を撒き散らした。
「な、何…って?」
「じゃから、あのルサルサの奴に、一体何をしたんじゃ⁉︎」
エルアーレは震える腕を必死に動かし、湖面に向けて右手を指差す。
「あー…まあ、とりあえず、敵だと思ったから思いっきり殴ってやった」
「殴ったじゃと⁉︎」
再びエルアーレが、素っ頓狂な声を上げた。
(一発殴っただけで、ルサルサの奴が倒れ伏したと言うのか⁉︎)
今、目の前で起こった現実に、動揺の色が隠し切れない。しかし事態はそんな彼女を、悠長には待ってくれなかった。
上空に漂うドンヨリ雲が渦を巻き、岸から離れたその場所だけが豪雨になる。
雲の渦巻く中心地、激しい雨煙の更に奥で、巨大な影が起き上がる。七つの首がゆらりと揺れて、真紅の瞳が憎悪の閃光を撃ち放った。
同時にその巨体に匹敵する程の、真っ赤な六芒星の魔法陣が出現する。
「消え去り…なさいっ!」
まるで地獄の底から響くような二重に聞こえる重低音が、水面さえも激しく揺らした。
「マズイ! あの魔法は…っ」
「撃たせるかよっ!」
慌てたエルアーレが両目を身開く。瞬時に神木公平の双眸が金色の光を放ち、風の刃を都合三回、縦横斜めに振り抜いた。
「がっ、ぐっ、げっ!」
鋭い呻き声が三発響き、六分割された魔法陣が霧の様に消え去っていく。
やがて、ぐらりと揺れた七つ首の巨体も、雨粒に削られるように崩れ去り始めた。
「まさか……倒しおった…のか?」
信じられないその光景に、エルアーレの声が掠れて震える。そうして目の前に立つ少年の背中を見上げていると、不意に笑顔でこちらを向いた。
「そういえばアイツ、結構強かったな」
「結構…強かったじゃと⁉︎」
そんな神木公平の発言に、エルアーレはもう何度目かの間抜けな声を出す。
「だって一発で終わらなかったのは、アイツが初めてだったからさ」
此奴は一体、何を言っておるのじゃ? 事の重大さに、まるで気付いておらぬのか?
「コーヘー、お主…イカれておるわ」
「何だよ、それ。褒めてねーのかよ」
エルアーレは俯き加減で両目を閉じると、呆れた笑顔を抑え切れなかった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる