54 / 165
第4章 シシーオ領にて
54
しおりを挟む
私たちが鍛冶屋から外に出た途端、遠くの方から悲鳴らしきものが聞こえてきた。
「おい、今の…」
ケータが周りの様子を伺う。近くにいる人たちも騒ついているだけで、何があったのかは分からないみたい。
「アッチから聞こえてきました」
ルーが街並みの向こうを指差す。
「分かるの?」
私はビックリしてルーを見た。
「すみません、私、行ってみます。最後まで付き添えなくてごめんなさい」
ユイナが私たちの方に向かって頭を下げた。それからすぐに、ルーの指差した方向へ走りだす。やっぱりユイナは衛兵さんだってことか。
「ケータ…」
私が顔を向けると、ケータはゆっくり頷いた。
「やっぱり、放っておけないよな」
「そうですね」
ルーが頷く。
「少し怖いけど、ユイナには色々とお世話になったもんね」
サトコも少し緊張気味に頷いた。
「何が出来るか分からないけど、ボクらも行こう」
~~~
「誰か、治癒魔法を使える人はいませんか?」
私たちが駆けつけたとき、ユイナが声を張り上げていた。その足元には3人の男性衛兵が倒れていて、地面に血溜まりが出来ている。
どこかで見たことあると思ったら、さっきのいけ好かない人たちだ。とはいえこの出血量、放っといたら本当に危ない気がする。
「ど、どうしよ…」
私は狼狽えた。人生でこんな場面に出くわしたことない。どうしたらいいか分からない。
「私がっ!」
ルーが3人のもとに駆けつけた。
「アナタたち…」
ルーに気付いたユイナが驚いた顔を向けてきた。ルーは衛兵たちのそばで膝をつくと、右手の人差し指をたて、その指先にそっと息を吹いた。
すると、ルーの指先から金色の風が生まれ衛兵たちを包み込む。傷からの出血が止まり、衛兵たちの顔色が少しマシになった。
「こ、これは『癒しの息吹』」
ユイナが驚いた声を出した。
「あくまで応急処置です。早く治癒術士に見せてください」
そのとき、衛兵のひとりが意識を取り戻した。
「気を、つけろ…。『隠密』の、スキル持ち…だ」
「そんな、まさか?」
ユイナは片手剣を抜いて辺りをキョロキョロした。
「皆さん、気をつけてください。認識を阻害され、見えてても認識出来なくなります」
「ハルカ、頼む!」
ケータがコッチを向いて目配せした。
「うん、任せて」
衣装着たまんまでちょうど良かった。私はすぐに全員の位置を確認して結界の準備に入った。
「ケータくん、後ろ!」
その瞬間、サトコがケータに向けて必死に叫んだ。
私も釣られて顔を向ける。
「え?」
飛び込んできた光景に呆然となった。
身長80センチメートルほどの緑色の肌の小さな男が、ケータの背後から右の脇腹に刃物を突き刺していた。
「ケータ!」
私が悲鳴のような声をあげると、その男はケータから離れ途端に見失ってしまう。
ケータは膝から崩れ落ちると、脇腹を押さえながらうずくまった。もの凄い勢いで地面に血溜まりを作っていく。私は完全に思考が停止していた。指一本動かせない。
「ケータお兄ちゃん!」
ルーがケータに駆け寄ると、上半身を抱き抱え突然口づけをした。
は…?何が起きているの?脳が全く仕事をしない。
「アワワワ…」
どうやらサトコも、この状況に処理能力が追いついていないようだ。
私は半ば無意識に、全員に結界を張った。
「おい、今の…」
ケータが周りの様子を伺う。近くにいる人たちも騒ついているだけで、何があったのかは分からないみたい。
「アッチから聞こえてきました」
ルーが街並みの向こうを指差す。
「分かるの?」
私はビックリしてルーを見た。
「すみません、私、行ってみます。最後まで付き添えなくてごめんなさい」
ユイナが私たちの方に向かって頭を下げた。それからすぐに、ルーの指差した方向へ走りだす。やっぱりユイナは衛兵さんだってことか。
「ケータ…」
私が顔を向けると、ケータはゆっくり頷いた。
「やっぱり、放っておけないよな」
「そうですね」
ルーが頷く。
「少し怖いけど、ユイナには色々とお世話になったもんね」
サトコも少し緊張気味に頷いた。
「何が出来るか分からないけど、ボクらも行こう」
~~~
「誰か、治癒魔法を使える人はいませんか?」
私たちが駆けつけたとき、ユイナが声を張り上げていた。その足元には3人の男性衛兵が倒れていて、地面に血溜まりが出来ている。
どこかで見たことあると思ったら、さっきのいけ好かない人たちだ。とはいえこの出血量、放っといたら本当に危ない気がする。
「ど、どうしよ…」
私は狼狽えた。人生でこんな場面に出くわしたことない。どうしたらいいか分からない。
「私がっ!」
ルーが3人のもとに駆けつけた。
「アナタたち…」
ルーに気付いたユイナが驚いた顔を向けてきた。ルーは衛兵たちのそばで膝をつくと、右手の人差し指をたて、その指先にそっと息を吹いた。
すると、ルーの指先から金色の風が生まれ衛兵たちを包み込む。傷からの出血が止まり、衛兵たちの顔色が少しマシになった。
「こ、これは『癒しの息吹』」
ユイナが驚いた声を出した。
「あくまで応急処置です。早く治癒術士に見せてください」
そのとき、衛兵のひとりが意識を取り戻した。
「気を、つけろ…。『隠密』の、スキル持ち…だ」
「そんな、まさか?」
ユイナは片手剣を抜いて辺りをキョロキョロした。
「皆さん、気をつけてください。認識を阻害され、見えてても認識出来なくなります」
「ハルカ、頼む!」
ケータがコッチを向いて目配せした。
「うん、任せて」
衣装着たまんまでちょうど良かった。私はすぐに全員の位置を確認して結界の準備に入った。
「ケータくん、後ろ!」
その瞬間、サトコがケータに向けて必死に叫んだ。
私も釣られて顔を向ける。
「え?」
飛び込んできた光景に呆然となった。
身長80センチメートルほどの緑色の肌の小さな男が、ケータの背後から右の脇腹に刃物を突き刺していた。
「ケータ!」
私が悲鳴のような声をあげると、その男はケータから離れ途端に見失ってしまう。
ケータは膝から崩れ落ちると、脇腹を押さえながらうずくまった。もの凄い勢いで地面に血溜まりを作っていく。私は完全に思考が停止していた。指一本動かせない。
「ケータお兄ちゃん!」
ルーがケータに駆け寄ると、上半身を抱き抱え突然口づけをした。
は…?何が起きているの?脳が全く仕事をしない。
「アワワワ…」
どうやらサトコも、この状況に処理能力が追いついていないようだ。
私は半ば無意識に、全員に結界を張った。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ?
――――それ、オレなんだわ……。
昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。
そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。
妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる