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チートで不倫する

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俺の【心を読む】能力。
散々語ったが、これが冗談抜きでチートである。
この能力を発動した瞬間、対象の【心の声】が聞こえ、同時にテキストでポップアップする。
大体初対面の2秒で、相手の性格・経歴・目的・こちらに対する姿勢を全て把握出来る。
自己主張の激しい相手なら、幼少時からの表彰歴・トラウマなども知る事が可能だ。
誘導尋問して【心の声】の方向性を操作する事も出来る。
応用すれば、背後や死角に誰が隠れているかも察知可能だ。

通信機越しの【読心】も出来なくは無いのが、難しい。
受信部付近にかすかに相手の【本音】がポップアップしている気配があるのだが、文字が小さすぎて読み取れない。
通信機は衆人監視の中でしか使わせて貰えないので、目を近づけて覗き込む事は許されない。
(みすみす能力をバラすようなものである。)
俺の通信相手はこの国の最高権力者達であり、コイツらの【心をこそ読みたい】のだが、無理は禁物である。
こんなチート能力を保有している事が知られたら、下手をすればその瞬間に俺は斬られてしまうだろう。

【心を読む能力】と言ったが。
これは文字にも効力があるらしく。
俺はこの世界の如何なる書籍も読める。
高度な論文であってもスラスラ読みこなせる。
能力が自動的に俺でも理解出来るように翻訳を発動してくれるからである。
結果、地球では一度も学校に行かなかったこの俺が…
随分と知見を身に着けられた気がする。
それどころか学術論文を通して、言葉遣いや知的階級の論法すら学ばせて貰った。
認めたくはないが、エリザベス・フォン・ヴィルヘルムこそが、我が師であり我が母である。

後、人間以外の【心も読める】
その証拠に、こちらの世界の人類が何千年もコミュニケーションを取れなかったリザード種やオーク種の意思を俺は普通に読み取れる。
仲介の甲斐あって、この近辺のリザード種・人間種の中には相手側の言語を片言で話せる者まで登場した。
(師匠のバランギルなどはリザードとかなり親密になっており、夕方にふらっと外出してはリザードから財貨・珍品を貰ってくる事が増えた。)

そして何より、俺はスライムの【心を読み】その副産物として彼らを自由自在に使役出来る様になった。
この【心を読む】能力を土台に獲得したスライム使役能力こそが、俺の最強チートである。

スライムを使って出来る事の範囲は途方もなく広い。
非常に応用が効くのだ。

まず廃棄物処理が出来る。
この前線都市は5万都市なのだが、俺に任せて貰えれば1人で全てのゴミを処理出来る。
(市民が俺の作業場にゴミを運んでくれればの話だが)

また、身体に纏わせて防刃・防矢効果を持たせることが出来る。
特に火や水をガード出来るので、短時間なら水中・炎中で活動も出来る。

次に採掘能力。
前線都市の地下でこっそり坑道を掘らせて貰ったのだが、スライム達は土中の物質を完全に分別する事が出来る。
その副産物として有用な物質だけを分別して持って来させることが出来る様になった。
俺は旧セントラルホテルのボイラー室から下水道、下水道の脇道からスライムに採掘をさせており。街から北に50キロ程掘り進めさせている。
銀・鉄・銅・錫・石炭を入手する事に成功したので、鉱山の近くに移動する事が出来れば誰よりも実績を挙げる事が出来るだろう。


その採掘能力を応用して、俺は工事まで出来る様になった。。
今こっそり城壁の隙間をスライムに埋めさせている。
漆喰の様な物質をスライムに吐き出させて、老朽化した城壁の割れ目を埋めさせてみると
想定通り、壁の復旧に成功。
これで冬場も隙間風に苦しめられずに済むだろう。


『これは反則だな。』


翌朝、一晩で修繕を終えた城壁を見て思わず呟いてしまう。
俺の頭がもう少し良ければ、更にエグイ使い道を思いつくだろう。


【まだまだ作業できるよ!】


俺が普段首に巻いている赤スライム(始祖)が自慢気に俺の身体を這い回る。
スライムは血を与えられると相手を主人だと認識するのだが、俺が最初に血を与えたのがこの赤スライム(始祖)である。
コイツには他のスライムへの指令を任せている。
有機物を分解する赤系統スライムに関してはその大半がコイツの分身なので多少遠隔地(有効距離2キロ)に居てもテレパシー的に意思疎通が出来る。
この作用を活用した俺は、地上に居ながらこの街の下水道を完全掌握した。
まさしくチートである。





「こんにちは、チートさん。今日はいい天気ですね。」

修繕した城壁を遠目にチェックしていると、突然背後から声を掛けられる。
俺は久々に驚いた。
【心を読む】ことの副産物で、普段は周囲の気配を完全察知出来ているのだ。
なので背後に気づかない事は本来無い。
にも関わらず、この女の【心中】だけは一切読めない。
故に簡単に背後を取られる。


「こんな所で会うなんて偶然ですねえ。
エリー程で無いとしても、私達も何かの縁で結ばれているのかも知れません。」


キティ。
ピンク髪の最凶殺人鬼。周囲の話を聞く限り、相当殺しているらしい。
スラムの最下層民の生まれで戸籍すら持っていないとのこと。
洒落にならない事に、攻撃と常識と話が通じない。


「デートしましょうよ。
いい店知ってるんです。
個室も使えるんです。
私が奢ってあげますから、一緒に行きましょう。」


俺の返答すら待たずに、キティに肩を掴まれる。

『ぐあっ!』

思わず悲鳴と冷や汗が出る。
怖い。

「この前、私…ジャンピングコングのボスを倒したんです。
今、エリーがコング系の魔石を集めているので。」

『そ、そうなんだ。
確かジャンピングコングって騎士団でも討伐が難しい強敵だって聞いたな。
それを倒すなんて凄いね。』

キティは俺の賞賛には答えず、何を考えているか分からない目でこちらを凝視し続けている。

「嫌ですねえ。凄いのはチートさんですよ。」

『お、俺が?』

「聞きましたよ。
先週、超万能薬を復活させた話。
これまでフェンリルの魔石を使わなければ作れなかったのに…
コングで代用出来る事を発見したそうじゃないですか。」


『あれは俺が発見したんじゃなくて
単に大魔術師ギルフォードという人の受け売りだよ。』


「それって錬金術を発明した古代文明時代の人。
…エリーが言ってました。
何千年も謎だったギルフォードの碑文を解読した天才が貴方だと。」


『たまたま読めたんだよ。
天才と言うなら、俺の拙い判読をヒントにレシピを完全再現したエリザベスだろうな。
まあいずれにせよ、超万能薬があれば難病の人が助かるんだろ?良かったじゃないか。』


キティ以外の人間であれば【心が読める】ので、賞賛された時に謙遜すれば良いのか、掘り下げて解説した方が良いのか、無邪気に喜べば良いのかが解る。
だが、この女だけは本当に理解不能である。
【心が読めない】に上に無表情で声にも抑揚が無い(暴力を振るう時だけ凄くドスの利いた声を出す)ので、機嫌の取り方すら想像出来ない。


「私が狩ったジャンピングコングの魔石。
かなり純度が高い上に大きかったらしく、相当量の超万能薬が作れたそうです。
少なくとも帝都でお屋敷が何軒も買えるくらいの量を確保できたとエリーが言ってました。」


『そ、そうか。おめでとう。き、君達のチームワークには敬意を表するよ。』


「エリーに《報酬は何が欲しい》と聞かれたので。」


『う、うん。』


「貴方を借りる事にしました。」


キティが表情を変えずに俺の腕を捩じり上げる。


『ぐ、ぐあ!』


痛い。痛いにも程がある。


「ということです。
一緒に来て貰えますね?」


キティに乱暴に転がされた俺は腕を抱えながら必死で頷く。
腕が痛すぎて軽口の一つも浮かばない程である。
キティは無言で歩き始める。
付いて来い、という意図であろうか?
勿論逃げ出したかったのだが、怒らせるのが怖かったので後に従う。


しばらく歩かされて工業区の奥のスラム地帯にある、明らかにやばそうな風俗店風の飲み屋に到着した。

「奢ってあげます。」

『あ、ありがとう。』

他に何とも答えようがなかった。

中にはチンピラ風の男達がたむろしていたが、キティの顔を見た瞬間に全員が直立不動の体勢を取り、口々に挨拶をした。
どうやらこの女はスラムでは《姐さん》と呼ばれているらしかった。


「個室。何か吞むもの。」


それだけキティが言い捨てると、チンピラ全員が甲斐甲斐しく動き始めた。
ヤクザでももう少しフレンドリーだぞ?


多分、ラブホテル的な使い方をされている店なのだろう。
内装はコテコテしている。
男の俺から見てもエロさより下品さを感じてしまったので、グランバルド的にも淫猥な空間なのだろう。

キティは無言で俺を抱き寄せると、何も言わずに目の前の酒器を見つめている。
俺にお酌したいのか、させたいのか分らなかったので。
とりあえず、2人分のグラスを並べてからキティに注いでやった。


「前も言いましたけど。
殺したい相手が居れば殺してあげますよ?
チートさんのお願いならタダで殺してあげます。」


突然、間近で目を覗き込まれる。
キティの動きが早すぎて、俺は反応すら出来ない。


『あ、いや…』


「この短期間で相当戦闘力が上がってますけど…誰を想定しているんですか?
軍? 貴族?
ああ、あのレザノフとかいう男ですか?」


『あ、ああ。
もしもレザノフ卿が敵に回ったら怖いよね。』


取り敢えず話を合わせて刺激しないようにする。


「ふうん、違んですか。
じゃあ誰だろう。
それともリザードと組んで謀反でも起こすつもりですか?」


『それをすると人間とリザードの戦争になっちゃうだろ?
俺はそういう戦争を煽ってる奴らを殺す為に頑張ってるんだよ。』


「ふーん。誰?」


『標準座標≪√47WS≫って奴らなんだけど。』


「ふーん。どこに居るんですか?」


『天蓋の外。』


「ふーん。」


『ごめん、突拍子もない話で。』


「セックスをします。」


「え!?」


「安心して下さい。エリーとは話が付いているので。」


「え? え?」


俺は事態が飲み込めず半ばパニックになっていたのだが、キティが超膂力でリードしてくれたのでセックスが成立した。
気持良かった。
ここまで腕力に差があれば、抵抗しようが協力しようが大した差は無かっただろう。


「そいつらを地面に下ろしてくれたら、幾らでも殺してあげますよ?」


『多分、俺から行くことになる。』


「ふーん。」


話は終わり。
それから1時間ほど、キティは無言で俺の身体をチェックし始めた。
体内に隠してあるにも関わらず「スライム?」と見破ってくる辺りは常軌を逸した勘の鋭さである。
理論上、人体と全く同じ構成に変異させたのだ。何故わかった?


「ああ、コレ内緒だったんですね。」


『誰にも言わないでくれると助かる。』


「それってエリーに隠せって言ってるようなものですよね?」


『…エリザベスも含めて皆には内緒にしていて欲しい。』


「それって不倫ですよね?」


『ふ、不倫?』


「男の人はそこら辺、自覚乏しいですけど。
女から見たらそれが一番の浮気ですよ? 
妻以外の女と秘密を共有するなんて、完全に不倫です。
私がエリーなら処断していますね。」


『い、いや。俺は別に不倫とか、そういう意図で言った訳じゃなく!』


「…不倫って事にしときましょうよ。
チートさん、今自分が酷い事を言った自覚あります?」


『…ああ、不倫だ。』


「…ふーん。まあそれで手を打ってあげます。
じゃあ、私は寝転んでますから。後はチートさんからして下さいね。」


本当に何を考えているか分からない女だ。
加えて悉くこちらの機先を制してくる。
コイツこそ俺の【心を読んでいる】のではないだろうか?
全く脅威だ。戦慄だ、恐懼だ。

しかし身体つきが好みなので、夢中で貪ってしまった。
キティは表情一つ変えず、声一つ出さなかったが何度か「今日は良い日になりました」と言っていたので、真に受けておくことにした。
結局、その日は店に泊まった。


認めよう。
確かにこれは不倫だな。
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