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視線

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 お辞儀をした後に、あちこちから嫌な視線を感じてた。アドガーの言葉でも少し減ったけど、わざとらしかったからか、それほど効果はなかった。

「あっ、そうでした。亡くなった祖父が貴族に仕えていたいたので、いい教育は受けれたんですが、厳しかったせいか、癖になってしまったようです。これからは気をつけますね。じゃあ、僕たちはこれで」

 だから僕なりに声を張って言ってみた。もちろん、嘘。でも言ったかいあって、嫌な視線がほとんどなくなった。まだ、ビルのいた方からじっとりとした嫌な視線を感じる。一番気持ち悪い視線がビルだったとは。

「はぁ。不快だ」

「ここまで露骨だと俺でもわかります。服のタグがチクチクするような感じですよね」

「うーん、僕的には、うまく剥がせなかったテープの粘着がベタベタする感じかなぁ」

「げ、俺それすごい嫌いなんです。ちょっと言ってきますね」

  流れるように、ビルがいるところへ方向転換した勇護の服を掴む。

「待て待て。絶対言うだけじゃ済まさないだろ。あわよくば、腕試ししようとしてるのはわかってるから」

 どうせ適当なこと言って挑発して、相手から手を出させる気だ。これは正当防衛ですって。はぁ、何も今じゃなくても、そのうち向こうからやってくるだろうに。

 ギルドの中には、ガタイの良い冒険者が多い。その中で唯一、ヒョロガリなビルの実力が気になるんだろう。もし弱くても普通の人よりは頑丈、あるいは良心が痛まない、良い腕試し相手ってところかな。この世界に来てから、前よりも頑丈に、速く、動けるようになっていたみたいだから。

「よく分かりましたね。まぁ、別に今じゃなくても、いずれ向こうから来るでしょうし」

 はぁ。わかってるならどうして行こうとしたんだよ。

「こんにちは!冒険者ギルドへようこそ。依頼ですか?それとも登録ですか?」

 は、はやい。僕らが口を開くよりも、先に受付の女性が話しかけてきた。さっきまで書類読んでたよね?どうして気づいたのかな。

「登録に来ました。二人分お願いします」

「かしこまりました。冒険者ギルドでは、危険な依頼が数多くありますので、命の保証は致しません。それでも同意していただけるのなら、こちらの紙に記入して下さい。同意していただけない場合は、登録することができないのでご了承を。名前以外は、空欄でも問題ありません。読み書きが難しければ、代筆もいたします」

 ちなみに、受付カウンターは僕の背より高い。

「分からなかったら代筆を頼みます。勇護、僕自分で書きたいから手伝って」

 したがって、勇護の手を借りざるを得ない。確認したいこともあるし。


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