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便利な魔法
しおりを挟むん?勇護と綺麗にハモったものだから、思わずお互い顔を見合わせた。
「俺がやります!丁度覚えた魔法を使うにはいい相手ですし、ギルドではお預けを食らったので!」
慌てたようにそう言ってきた勇護の視線は、僕の腰にあった。正確には、左腰に差してあるナイフの柄を握る僕の手だ。
そんな玩具を取られそうになって焦る子供みたいな反応しなくても。ギルドでロックオンしてたのを見てたから、手を出そうとも思ってない。
なんとなく、落ち着くから握っていただけなんだけど。大体ビルを取り合うという図に一瞬でもなってしまったのが、不快だ。
「はぁ、手は出さないから、好きなようにして」
勇護が嬉しそうな顔をして、見ててくださいね!と元気に言ってくる。そんなに良い魔法なの?少し気になってきた。
「いい加減にしろよ!オレのこと舐めやがって!そんなに死にテェなら、俺が殺してやるよ!!」
先程からビルが喚いていたものの、僕らが一向に相手にしないものだから、とうとう突っ込んできた。
「先ずは、暗くなってきたので明かりをつけます」
そう口にした勇護の手から光る球が現れ、森の中が明るく照らされた。少し前までビルの表情すらわからないほど暗かったのに、今では驚いた顔してるのがよく見える。
「ンだよ、ただのライトじゃねェか!ビビらせやがって!最後にイイこと教えてやるよ。魔法使いはなァ、近づかれたら終わりなんだよ!!」
一切の躊躇もなく勇護に向かって剣を振り下ろすビル。ニヤニヤと勝ちを確信してるんだろうけど、残念ながら勇護は魔法使いじゃない。いや、もしこの世界の魔法使いが、魔法使える=魔法使いという認識なら、勇護は魔法使いという事になる。だとしても、今日覚えたばかりの魔法よりも、体術が得意なことは変わらない。
「次に結界を張ります。これが結構便利で、今みたいに攻撃を防ぐこともできますし、こんな風に閉じ込めることもできるんです!」
「あ?なんだこれ?クソっ!全然壊れねぇじゃねぇか!おい!出せよ!」
自分の前に結界を張り、ビルの攻撃を防いだ勇護が、説明をしながら今度はビルを覆う様に結界を張った。剣で壊そうとしているけど、傷一つ入っていない。確かにこれは使い勝手が良さそうな魔法だ。
というか、体術関係なかった。そういえば魔法使うって言ってたっけ。
「見てください!こんな風に音を遮断することもできるんですよ!」
おぉー、凄い。さっきまでビルの喚く声と剣で結界を攻撃する音がしてたのに、今は何一つ音が聞こえない。
「あとはこんな感じで火や水を出す魔法を覚えました。もう一つ覚えた魔法があったんですけど、それ使うとビルが死にそうなので、また今度にします」
魔法が入る様に結界に穴を開けて、中にいるビルへ容赦なく交互に火と水の魔法を当てている。勇護の言う通り、ビルはもうぐったりしていて、これ以上やったら死んでしまいそうだ。いや、そう思うなら魔法撃つ手を止めなよ。
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